12.庭の強化と造るモノの強化
俺の家の庭の外れに大きな岩場がある。
普段は散歩コースにしているのだが、大きな岩がゴロゴロしている。
魔女と竜が戦っていた時に、竜が掘り返しまくったのが原因だが、それはともかく、
「これ、どかした方がいいよなあ。歩きづらいし」
「そうですね。庭造りをするにしても、障害物になりそうです」
物凄く邪魔なので、今日のうちにどかしてしまいたい。
「撤去用にウッドゴーレムをつくるか」
だから、そんな力仕事はウッドゴーレムに指示してやらせてしまおう、とリンゴの木を幾つか選んでゴーレム化する。
足と腕が出てきて、それぞれ直立するが、
「一体ずつじゃ、ちと小さいな。でかくするか」
ゴーレムを大きくするには、同じ素材か、同じゴーレムを合成すれば良い。
だから、俺はその場で手を掲げ、二体を合成して大きくしようとした。のだが、
「おうっ?」
「――主様!?」
あらら、ちょっとしくじった。
右腕を合成中のウッドゴーレム二体に挟まれてしまった。
「だ、大丈夫ですか!? お、お怪我は!?」
「ああ、平気平気」
サクラは慌てているが、幸い無傷だ。
ねじれた木の中に手を突っ込んでいるから、見た目は潰されているみたいだけどさ。
ゴーレムに力はこもってないから痛くは無い。
ともあれ、不便だからさっさと抜かなきゃな、と、
「――ん? あれ?」
引き抜こうとしたら、合成しかけのゴーレムが動いた。
右腕を上げたのだ。
「まだ命令出してないのに、動いてるな」
「本当ですね……? どうしてでしょう……?」
サクラも分からないようだ。
確認の為にも、もう一度、右腕を動かしてみる。
今度は手の指を含めて。
そうしたらまた、その通りに動いた。
「ああ、俺の腕の動きをそのままやっているのか」
「同期、と似たようなものですかね。体から伝わる魔力をそのまま信号として受け取っているようです」
「え? そんなことできるのか?」
「いえ、やったことがないので分かりません。が、主様が出来ているのであれば、出来るのかと」
へえ、面白いもんだな。
この木の塊が自分と同じ動きをしてくれるのか。だとしたら、
「……ひとつ、思いついたことがある」
「はい?」
●●●
「やっぱり、だ。体全部埋めたら、動かせるな」
「おー、お見事です、主様」
姿見の前で、俺はウッドゴーレムになっていた。
いや、俺自身がゴーレムになったというか、俺の外殻が出来たというか。
ゴーレムの中に自分を埋めてみたのだ。
全身動かせるんじゃないかと。
「意外と試してみるもんだな。ここまで上手くいくとは」
三メートルほどの、ウッドゴーレムを細かく動かせる。
普段は近づいてきたものを殴る、とか歩く、とか簡単な指令しか出せないのだが、これは自分の意思で動かせる。なかなか便利だ。
「ウッドアーマーって言うと弱そうだが、結構いいもんだな。楽に力仕事できるし、面白いし」
これなら、岩も自分で好きな位置に運べる。
そう思ってやってみたが、何十キロの石でも普通に運べた。
仕組みが分からないけれど、イメージ的には、樹木が筋肉の代わりをしてくれている感覚だ。つまり、すごく楽だ。
小型化すれば家の中でも使える。だからこれからも使っていきたいのだが……。
「ただ……微妙にもっさりしてるよな、造詣が」
改めて、自分の姿を鏡で見ると、全身が妙にでっぷりしている。
着膨れしているみたいだ。いや、この場合は木膨れか。
「主様は、初めて装着するものを作ったのですから。これだけでも十分な出来かと」
サクラはそう言ってくれるが、もうちょっとスマートにしたいな。
いや、俺に彫刻とかの知識は無いけれどね。なんかかっこ悪いんだよな。
「そうですねえ……私としては、主様の顔が見れなくなるのが少し辛かったりします」
「じゃあ、顔の部分もちょっとこだわるか」
阿修羅像とか仁王像とか、あのあたりを参考にすればいいかな。
ともあれ、改善点は色々あるけれど、俺は装着型の重機を手に入れたんだ。
これで庭作りはもっと楽になるぞ!
ただまあ、アーマー作りで疲れたので、今日はもう寝るけどね。
岩運びはそのあとだ。
重機(色々な意味で)
ご声援、ご感想、ありがとうございます! まだまだ更新していきますので、よろしくお願いします!