123.回り回って落ち着く場所
精霊たちの住み込みを確認した後、俺はヘスティを小屋まで送り届けた。
割と限界だったようで、部屋に入るなり、ヘスティは床にごろんと横になった。
「ありがと。……アナタのお陰で、辿り着けた……」
「いや、ベッドまで辿り着けてないからな。ほら、もうちょっとだ」
小屋の中には、木で組んだ小さなベッドがある。
俺が小道具を作成する練習代わりに作ったもので、中にはクッションが敷かれている。
俺はヘスティを抱いて、そこまで運んでおく。
「ありがとう……やっぱりアナタの体力、凄いね。あれだけの魔力を使ったのに……もう回復、しているように思える、よ」
「なんだか前にも同じことを言われた気がするよ。それに腹は減っているから、疲れているには疲れているんだろうよ」
久々に家の庭のリンゴをかじるくらいには、腹ペコだったしな。
「ヘスティは眠い以外に、体に異常はないか?」
「ん、だいじょぶ。ここに来ると、我も、回復力が高まる気がするから、……明日には元気になっている、筈……」
それは良かった。祭り初日から今日まで、なんだかんだヘスティは動きっぱなしだったわけだし。
しっかり休めるんなら、それが一番いい、と思っているとヘスティが俺の顔を見上げてきた。
「それと、……今回はお祭りに連れて行ってくれて、ありがとう、ね。最後は疲れたけど……すごく、楽しかった」
「ああ、俺も楽しかったよ」
「ん、……良かった。それじゃ、おやすみ、なさい……」
その言葉を最後に、ヘスティは寝息を立て始めた。
一瞬で寝入ったってことは、本当に疲れていたんだろうな。
「お休み、っと……」
体を小さく丸めて、表情を緩めている彼女に、タオルをかけてから、俺は小屋を出た。
●
月が明るく照らす庭を歩いて、俺は自宅に戻る。
塔のようになった我が家だ。数日前まで住んでいた時はあまり気にしていなかったが、
……改めてみると、でかくなってるなあ。
こう思うのも今更な話だが、住み続けていると、感覚が麻痺してくるのかもしれないな。
まあ、住み心地は良いままなので、何の問題もないんだが、と俺は塔一階のドアを開ける。
そして、魔力式のエレベーターを使って塔を登っていくと、
――ドドン
と、外から響く音が聞こえた。
エレベーターの外壁は透明な素材で出来ている部分もあり、そこから外を覗くと、街の方で花火が上がるのが見えた。
距離はあるものの、大玉だからかしっかり炎が作る形がわかる。
「……祭りは終わりだなあ」
大きく広がる綺麗な花火を見ると、なおさら実感するな。
そんな事を思いながら、俺は最上階に辿り着き、そこのドアを開けると、
「お帰りなさい、主様」
ある意味、久しぶりに、サクラが出迎えてくれた。
「おう。ただいま、サクラ」
「はい! ご飯、出来てますからね。花火を見ながら食べましょう」
そう言ってパタパタとエプロンをつけたサクラが台所に戻る。
そして鍋に火を掛ける音が聞こえる。
……出かけてから大体、三日か。
久しぶりというには短いかもしれない。たった三日と言えるかもしれない。
……ただ、あの街の、にぎやかな光景も良いんだけれどさ。
それでも、俺は思うんだ。
「やっぱり、我が家が一番だな」
というわけで、街への長期(?)旅行は終わりという感じで。
次回からは再び、自宅周りでの話に戻ります。