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99.街の光景


 ディアネイアに案内されて、俺はサクラたちと共に、商店街の大通りを訪れていた。

 サクラとヘスティは大通りに沿って出ている店を覗いて楽しそうにしている。


 俺もそんな彼女たちを見れるのは非常に楽しいのだが、


「人が多いな……」

 

 夜遅いというのに、祭りだからか人は多い。

 歩くだけでぶつかったりはしないし、何故か俺たちの四方にはエアポケットができるので窮屈さはないのだけれども。

 人が多いのは、やはり変わらない。


「これでも少なくなったほうなのだぞ。昼間はもっと密集しているからな」

「そうか。――よし、昼間は引きこもることにしよう」

「は、判断が早いな、ダイチ殿は。まあ、そうだな。こういう大通りはともかく、城の周辺は人で溢れることはないので、そのあたりをうろつくのがいいと思うぞ」」


 人ごみの中をうろつくのは好きじゃないので、そういう情報はありがたい。彼女のそんな気遣いに感謝していたら、 


「ヒャッハー、もしかして旦那じゃないっすか?」


 背後から声をかけられた。

 振り向くとそこには、街灯の光を反射する頭があった。


「アッシュか。久しぶりだな」

「うっす! お久しぶりっす、旦那!」


 アッシュの背後にはシャイニングヘッドの面々が揃っていた。

 俺の家を襲撃してきたときと同じくらいの人数だ。

 次々に挨拶として頭を下げてくる。


「こんな所で、なにしてんだ?」

「祭りの警備っすね。そこの姫さんに雇われまして」

「うむ、こういう祭りのときは揉め事も多くなって、騎士だけでは人手が足りなくなるからな。実績ある冒険者たちを雇って増やしているのだ」


 シャイニングヘッドも、その一員ということか。

 まあ、これだけの人が集まれば揉め事の一つや二つ起きるのも当然だし、それを予想しているのなら人を増やすのは当たり前か。

 なんて思っていると、


「おい! 今俺に足を踏みつけただろ?!」

「ああん!? 言いがかりつけてくるんじゃねえよ?」


 通りの外れで、なにやら言い争いになっている二人の男がいた。

 二人ともガタイがよく、剣や棒で武装しているところを見るに冒険者だろうか。

 噂をすればというかなんというか、本当に揉め事はあるんだなあ、とその二人を見ていたら、


「ヒャッハー、そこ、揉め事起こしてるんじゃないだろうな?」


 アッシュが声を上げて、ゆっくりと近づいていった。

 声は穏やかだが、その目はとても鋭かった。


「ああん!? なんだおま……って、シャイニングヘッドのリーダー!?」

「ヒャッハー、シャイニングヘッドのリーダーのアッシュだ。今はここの警備をしているんだが、あんた等、もめてはいないよな?」


 アッシュが静かな声色のまま聞くと、男二人は大きく頷いて肩を組んだ。


「「はい! もめてません」」

「ヒャッハー。そうか。それならいいんだ。祭り、楽しんで行けよ?」


 そうして、喧嘩が収まった二人は、肩を組んだまま仲良く街の中心へと消えていった。

 その光景を見た人々は口々に、ひそひそと声を出す。


「すげえなあ。流石は任務成功率九割越えの化けパーティーだぜ。目と言葉だけで威圧しちまった」

「ああ、プロシアにホームを移したって噂はあったけれど、本当だったのか……」


 なんというか、シャイニングヘッドの連中は結構有名な部類らしいな。

 街にきたことがないから、街の評判とかを聞くのが初めてというのもあるが、


「アッシュ。お前等、知名度すごいんだな」

「ヒャッハー、俺らなんてまだまだ。……旦那には遠く及ばないっす」

「え? 俺は知名度なんてないぞ?」


 森の奥でひっそり、静かに暮らしているだけなんだから


「ヒャッハー。……旦那はこの街を竜から守った英雄なんで。顔バレ身バレしたら取り囲まれると思いますわ。だから、それとなく離れるのがいいと思うっすよ? 今も、俺や姫さんと一緒にいることで目立ってますし」

「ああ、そうか。ディアネイアって姫だもんな」


 それが街中を歩いているんだから、それは目立つわ。


「はい、旦那の顔を知っているものがいたら、一発で広まっちまいます」


 ヘスティやラミュロスの件でこの街に来たとき、そこそこの人数に顔を見られていたな。

 となると、いつまでもこの場にいるのはよくないか。


「じゃあ、次の場所行くか。ディアネイア、頼む」

「う、うむ了解だ」

「じゃ、俺たちはいくから、がんばれよー」

「ヒャッハー。また近いうちに、酒でも飲みましょう」


 そして、俺たちは他の場所に向けて歩き始めた。



 ダイチと別れて数秒後。

 アッシュの体からは汗がどっと出てきていた。


 顔からも脂汗が流れ落ち、息も荒くなっている。


「はあ……ふう……」

「り、リーダー、大丈夫ですか」

「いやあ、あの人の近くにいると、やっぱり力の差を実感するぜ」


 アッシュはダイチが去っていった方向を見る。

 そこには、人ごみが割れて出来た道がある。


「全く、すげえや。俺の魔力当ての余波を受けているはずなのにびくともしないし、むしろ、その余波ごと塗りつぶされるかと思った」


 先ほど揉め事を止める時に、自分の魔力を放った。

 相手は素人冒険者とはいえ、喧嘩をしようとする二人の気持ちを折るほどの、それなりに強い魔力だったのに。あっという間に飲み込まれた。

 笑えるくらいに力の差がありすぎる。

 

「でも、だからこそ、憧れ甲斐があるってもんだ」


 アッシュは楽しそうに笑う。そしてシャイニングヘッドのメンバーに声を飛ばす。


「ヒャッハー。お前等、今夜も気合入れて、警備に行くぞ――!」

「応!!」

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