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9.vs.飛竜部隊

 本当に一時間寝たら元気になった。


 眠気も空腹も全くないので、健康状態はバッチリである。


 完全に回復したと同時、姫魔女が俺の家に訪ねてきた。


 やっぱりさっきのは幻聴じゃなかったんだな。

 着ているローブはところどころボロボロだし、息も荒い。

 ワナを食らったからだろう。全く間の悪い女である。


「おう、姫魔女。巻き込んですまなかったな」

「い、いや、アポなしで貴方に会いに来た私が悪かったのだ。次からは気をつける」

「そうか。ならいいんだ。……つーか、今度は俺の家の周りにマーキングしてないよな」


 股間が既にビショビショなんだが。


「こ、これは落下した先に湖があったからだ! 誤解されては困る!」

「ああ、そうかよ」


 俺としてはこの姫魔女は、おもらしのイメージしかないからな。

 またやったかと思ったぜ。


「うぐ……地脈の男よ。私はディアネイアという。その、姫魔女と呼ぶのは、恥ずかしいので止めてくれないか」


 人を地脈の男とか呼ぶくせに、名前呼びじゃなきゃ嫌だとか、贅沢な女だな。

 まあ、俺が名乗ってないのもあるけどさ。


「それで、何しに来たんだ。なんだか革袋を二つも背負ってるみたいだが」

「金だ。これがこの前の飛竜の売上半分――銀貨三千枚だ」


 と、彼女は革袋をドンと置いた。

 中には銀色のコインがぎっしりと入っている。


「これがこの国の金か」

「ああ、これだけで一年は遊んで暮らせる」


 へえ、そうなのか。この国の金とか使ったことないから分からないや。

 というか、こっちに来てからずっと、街に降りた事もないしな!

 どこにあるのかも知らないし。

 

「しかし、アンタがこれを持ってきたのか? わざわざ、俺の為に」

「ああ、貴方には命を助けられた。そして、礼を返すと言った。だからこうして伺わせて頂いて、還元しに来たんだ」


 いらねえ、って言った筈なんだけどな。


「律儀だなあ、アンタ」

「それしか取り柄がないのだ。あとは魔法も得意だったが……この地で洩らしてしまう始末だからな」


 罰が悪そうに姫魔女は苦笑する。


「もうマーキングすんなよ? リンゴ畑あるんだから、変なエキスがしみこんだら溜まらねえからな」

「き、気合を入れて会いに来たのだ。だから、そう簡単には漏らさないぞ!」


 そうか。それならいいんだ。

 姫のエキスが入ったリンゴとか、食ったら変なスキル付きそうだし。ホントやめてくれよ。


「んで、用件はこれだけなのか?」

「ああ、そうだ」


 金を持ってくるためだけにきたのか。そうか。なら、

 

「なんで空に飛竜が留まってるんだ?」

「へ?」


 上を見ろ。ずっと三匹の竜が滞空しているぞ。

 しかも明らかにこっちを見ている。


『どうする? 手出しして大丈夫と思うか? 竜王様が戦いたいって、言ってたやつだろ?』

「でもでもあの男、魔力が大きいだけだよ。竜を食ったなんて噂だし、一緒にやっちゃえやっちゃえ! 魔力が大きい女は美味しいし、男も美味しいよ!』

『それじゃ一番槍はオイラが行く。オイラに続け!」


 などと、軽い口調で人食い計画立ててる。物騒だなオイ。

 というか、既に勢いよく向かってきているんだけど。


「アンタ、疫病神なのか? なんであんなの連れてきてるんだ」

「す、すまん。しかし、悪いが、戦闘に入るぞ、地脈の男よ」


●●


 ディアネイアはその場で、迎撃用の杖を取りだした。


「炎の弾丸(フレイムブレッド)!!」


 天に向けて火球を放つ。

 だが、降りてくる竜の鱗には弾かれた。


「ふ、防ぐでもなく弾くだと……!? あれは、上位竜なのか……!!」


 以前とは違い、魔力は十分に残っている。

 そんな力が存分に乗った魔法をはじき返すなんて! 本当に竜の耐久力はおかしい。


 それが三体もいる。


「連携を取られたら、一個中隊の魔女隊でも勝てないな……」


 ……だが、弱音は吐けん!


 襲われているのは事実なのだから。

 緊急退避用の魔法は用意してきていない。ならば戦うしかないのだ。

 ディアネイアは杖を更に振り回す。


「ここで使うしかない。私が誇る最大の一撃――焼け焦がす炎帝の(ブレイドフレイムランス)!!」


 出るのは極太の赤い槍。

 ジリジリと音を立てて熱を出すそれを、


「はあああ!!」


 思い切り投げた。

 そのまま、飛竜の肩に命中する。


「グウ……!!」


 ジュウウ、と肉を焼け焦がす音を立てながら、槍は飛竜を焼くが、


「グラアアアアアア!!」


 それだけだった。肩の一部を吹っ飛ばしただけで、そのまま降りてくる。


「あ……」


 それを見て、ディアネイアは膝をついた。

 これは、勝てない、と悟ってしまった。


●●


「ああ……これが、上位竜の力か……」


 へたりこんだ姫魔女は、そうつぶやくと


「ぅ……」


 気が抜けたのか、ジョバっといった。


「あ――!!」


 まただよ。またやりやがったよ、こいつ。


「アンタさあ、マーキングするなって言ったよな?」

「あっ……も、申し訳ない……」


 これでリンゴに変なスキルが付いたらどうしてくれる。

 食べる度に外れガチャを引くような状態とか、嫌だぞ!


「グラアアアアアア!!」


 しかも、竜は元気よくお空から降ってくるし。


「ほら! もう一発撃て! 追い払え!」


 元凶なんだから、俺の手を煩わせるな!

 そう言って、ディアネイアの体を肩に担ぐ。


「うう……もう無理だというのに……」

「無理でも打て。やるだけやってから諦めろ。さもないと尻叩くぞ」


 というかもう叩いた。

 ペチンッと良い音が鳴った。


「ひゃんっ! わ、分かった、う、撃つから! ふぁ、フレイムブレッド……!」


 涙目と、弱弱しい発音で魔法が使用された。瞬間、


 ゴオッ!!!


 っと、ディアネイアの杖からレーザーよろしく熱線が出た。

 しかも、極太の。


「グエ……?」 


 突っ込んできた竜を、一瞬で焼き尽くすほどの。


「ぎ、ギアアアアアアア!!!」


 瞬時に黒焦げになった仲間を見て、他の龍はにげていく。


「ちっ、なんだよディアネイア。そんな強いの持ってるんだったら最初からやれよ」


 文句を言いながら、担いでいた魔女姫を下ろしたのだが、彼女は困惑で体を震わしていた。


「え……な、なんだ、あれは。……なんだ、このおかしな力」


 何を言ってるんだこの魔女は。混乱しているのか。


「こ、混乱もするさ。あれは、文献で見たことがあるが、伝説級魔法だ! 私の魔力では打てないし、そもそもあんな魔法は覚えていない!」

「じゃあ、なんで使えたんだよ」

「い、今のは、恐らく、――貴方の魔力が『上乗せ』されたのだ」


 ディアネイアは愕然とした表情で、自分の手と俺の顔を見ていた。

 足腰は震えていて、立とうとしているのに立てていない。


「なんなのだ、この力は。余力ごと、全部出し切ってしまった。……なんでこんな力を使って、平然としていられるんだ、貴方は」

「さあ、そんなの知らん」


 しかし上乗せ、か。

 そんな現象があるのか。

 いや、俺や俺の家の魔力を狙ってくる輩は、こういうので強化をするのが目的なのかもしれないな。


「そもそも、敵対理由なんてどうでもいいんだけどさ」


 俺は自分の家を守るために力を振るうだけだ。

 

「……あ、貴方は、本当に、何者なんだ?」

「ただの自宅警備員だよ。今の所はな」


 それ以外の何物でもない。


「んで、ディアネイア。あの飛竜はいつも通り持って帰れよ」

「え?」

「俺は黒焦げになった竜の処分とか、しないからな。残していったら……怒るぞ?」

「わ、分かった、分かりました! こちらで処分します!」


 理解してくれたのならいい。


「さて、それじゃあ俺はおやつタイムだから。ディアネイア、アンタは勝手に帰ってくれよ」

「う、うむ、分かった! この礼は必ず、また、持ってくるぞ!」

「それはいいけど、竜は持ってくるんじゃないぞ」


 そんな感じで、俺と姫魔女との関係は少しだけ、強くなったようだ。

たくさんの応援、ありがとうございます! ご期待にこたえられるように、バンバン更新していきますので、よろしくお願いします!

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