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書評「親指の恋人」(石田衣良著)
作:ごはんライス


 衣良さんの新作。書評ちゅうわけだが、ちょい禁じ手をやらかす。
 実はまだ全部読んでないのだ。
 金持ちのボンボンと貧乏な女の子の恋物語。読んでないながらも、しかし、オチははっきりしてる。心中してしまうのだ。
 オレはここをつつく。
 まず白状しておくと、オレは自殺は苦手だ。信長や竜馬や野口英世や手塚治虫やジョン・レノンが好き。つまり、殺されちゃうようなキャラが好きなんやね。
 まぁ手塚先生はね、ガンだけども、若くして死んでるからね、あれは完全に仕事に殺されとる。
 まぁ過労死ちゅうのはね、いかんよ。トヨタの過労死に関する裁判ね、あれ勝訴したけど、あれはいいよね。いいちゅうか当然だよね。国が認めた。でも、会社が認めとらん。さっさと認めろ。会社の利潤より従業員の命の方が大事だぞ。
 ただ、手塚先生は、なんというんだろうなぁ。ベッドの上に画板を広げてね、「もっと描きたい! もっと描きたい!」てね。連載三本抱えて。ガンで頬がガリガリに痩せこけながらね。闘病日記に漫画のアイデアを書き込んでしまう作家はなかなかいない。しかも、十五万枚描いて「まだ描きたい」て。そういうとこが好きだ。
 まぁ信長は一応切腹しとるけど、彼も若くして死んでる。志半ばや。「光秀ごときに髪一本やらん」とか格好いい。
 竜馬もかっこいい。薩長同盟とか大政奉還とかどえらいことやらかしてるけどそれは竜馬の目的ではない。竜馬の目的は貿易事業。
 大政奉還後の中央政府の役職名を書いた紙を西郷せごどんに渡した時、西郷はフシギがった。
「さ、坂本さぁの名が書いてないでごわすが?????」
 その場に居合わせた西郷の相方大久保はしかめツラした。「こいつ何企んでやがる」
 そしたら竜馬が一言。
「そうさなぁ。世界の海援隊でもやりますかいのォ」
 か、かっちょえええええええ。
 海援隊というのは、竜馬がボスの貿易商社だ。
 まぁ貿易事業に本格的に乗り出そうという時に暗殺されてしもうたけど。しかし、かわいそうとは思わない。時代を駆け抜けた。
 しかし、ジョンはちょいかわいそうだな。
 五年間のお休みの後、まんをじじて新作をリリースしたというのに、すかさず、熱狂的なファンに射殺されてしまった。
 しかしね、かわいそうというのだとちょっと説明がつかないかもな。というのも、この最後のアルバム、すげえいいんだ。普通、隠居した後に作品を出しゃ腕が鈍ってしょぼいのができたりするんだ。しかし、そうじゃなくてね、ジョンの並々ならぬ意気込みが感じられる仕上がりになってる。詞のフレーズ、恋の始まりがまた始まりそうだ、なんてね。かわいそうで片づけるにはあまりに作品が巨大すぎる。
 それからね、野口はね、なんというんだろう。伝染病に殺された。
 野口がアメリカで地位と名声と十分な収入を得ていたその時、彼は当時アフリカで猛威をふるっていた黄熱病という伝染病を倒しに現地に乗り出した。そしたら現地で黄熱病にかかって死んでしまった。
 今の若い子はきっとこう思うだろう。いや、オレは思う。月収13万(ドルじゃないですよ。円です)、一日の労働時間13時間のオレは思う。
 アメリカにいればそんだけのカネがもらえるのになぜカネにならんアフリカに行く? しかも、当時黄熱病といえば不治の病。死にに行くようなもんではないか!
 今、生きるか死ぬかの収入で闘ってるオレたち。大金を捨て死地へ向かった野口の気持ちはわからんが、しかし、共感できるとすれば野口の「病人を目の前にして眠ってられるか」という医学者魂にある。食っていけないのに何のためにオレたちは職場に行く。死ぬために職場に行くようなもんではないか。しかし、オレたちが今している仕事は社会の役に立っている。大げさに言えば、オレたちが仕事をやめたら社会が機能しなくなる。
 いいです。野口。すごくいい。宮沢賢治もいいな。ムリして若死にしてるが、「世界の幸福なしに個人の幸福なし」といったノリはすごくわかる。賢治が当時満州国を支持してたこと、オレは理解できる。満州国はまさに民衆を豊かにしようという意気込みに燃えた国家であった。倒産したけど。
 だから、三島とか太宰とか、どうもダメなんだよなぁ。いや、読んだことないからわからんのやけど作品はいいんでないかなとは思うけど。知り合いでごっつい三島ファンがいるんで。
 しかし、自殺はあかんなぁ。
 といいつつ、わかる面もある。世間の人は三島の自衛隊基地での自決を「不可解」と捉えているが、まぁ行動はトリッキーだね。しかし、三島の論理は矛盾しとらんねん。アメリカの植民地なのに独立したような顔してる国民の方が矛盾しとんねん。独立してへん日本に絶望して自決したんやね。
 あとね、そうはいっても、自殺した人で好きな人もそりゃおるよ。
 ゴッホだ。賢治と同世代だな。死んだ年齢も近い。
 精神が爆発して最期、ピストル自殺してしもうたが、なんといっても彼の絵にはパワーがある。エネルギーがある。そこだ。もうそこだ。作品だ。
 そりゃ自殺は悪いことさ。でもな、あんなすげえ作品を生み出した男が悪いヤツのわけねえ。
 生きとっても悪いヤツなど山ほどおる。
 ていうか!
 衣良さんはどこに行ったんだ? 衣良さんもイライラしとるよ。オレの出番はまだなのかよって。
 じゃあ、ここで戻る。衣良さんの新作は最後、主人公たちが心中してしまうんだよな。
 それはオレが苦手なのは例をたくさん出したからわかってもらえたと思う。
 しかしね、それでも、オレは文学でそれをやるのはけっこういいことだと思ってる。ひそかに自殺防止効果になってるんでないかと。
 恋だ何だで自殺すんのは甘ったれてる、なんちゅうのはおっさんの発想だ。若者は本当に死ぬかどうかのところで恋愛をしている。オレだって経験がある。学生の頃、好きな子が結婚した時マジで自殺するところだった。笑わないでほしい。マジだったんだから。
 そんな若者がこの「親指の恋人」を読んでね、「ああ。わたしも自殺しようかなぁ」なんて思わないッスよ。「スミオとジュリアは真剣に愛し合った。二人の分も私しっかり生きなくっちゃ!」とかなるよ。 
 全部読んでないので説得力がないが・・・・
 読んでからまた感想書きます。また違った見方が出てくるかもしれない。ただ、今読んでるページの時点では単純におもしろいです。衣良さんていい文いい書くよね。プロだから当たり前だろ、とかそういうことじゃなくてさ、ほんとにいい文書くよ。沁みる。
 最後に、オレは自殺というのは苦手だけど、「自殺するヤツは心の弱いヤツだ」なんて世間の紋切り型の意見も苦手だということを白状しておこう。そりゃね、「自殺ってかっこいいね!」なんて発言したらちびっこが真似してしまうからいかんのやけどね。それに「自殺するヤツはへぼい」と言うときゃ、自殺してヒーローになろうと企んどる子が「じゃーやめた」とかなるからそれはいいんだけど、しかし、単純にそれだけだと、特別攻撃隊の説明ができん。
 特攻隊のじっちゃんたちはなぜ敵艦に体当たりしたのか? マインドコントロールされてたのか? 単なる犬死になのか?
 オレは違うと思うなぁ。美化するつもりはないけど、今の自殺とちょっと違う。国を守るため。簡単に言えばそういうことだけど、君たち、国のために自分の命を投げ出すことができるかい?
 できんだろう。オレはできん。できんヤツがね、「アホじゃないの」とか「犬死にだ」とか言うのはほんとバカくさいわ。
 いやま、ほんと美化するつもりはないんですよ。そりゃね、特攻がね政策としていいとは全然思わんですよ。でもね、実際に特攻をして散っていった人たちを「かわいそう」の一言で片づけるのはちと冒涜のような気がする。実際、いろいろ葛藤がありながらも彼らは国を守るために出陣したんだしね。生き残ったじっちゃんたちが言うならわかるよ。でも、特攻隊のじっちゃんたちががんばったおかげで今を生きることができてる我々が「かわいそう」と言うのはおこがましいというか偉そうというか・・・・て偉そうに現代人批判しとるな。お前も現代人だろ!
 まぁしかし、今は自分のために自殺する人が多いやな。いじめとかストレスとか社会不安とか。こういうのも何とかせんといかん。(了)
 














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