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ろーぷれ
作:めろん



第6話 黒魔道士


 巨大なゾンビを目の前にして、

「ボスキャラ?」

「ああ。多分な」

葵がそれを指さしながら尋ねると、悠がこくりと頷いた。

「……ってことは、あれを倒せば元の世界に帰れるんだね?」

「……はい、その可能性もある、です」

「わあ!じゃあ、頑張って倒さなくちゃね!」

 鈴の返答を聞き、剣を抜きながら葵がそう言うと、

「はい、です」

鈴は彼に合わせるように杖を構え、

「おお、頼もしいな。応援してるぞ」

悠は岩に腰掛けてコートのポケットからきゅうりを取り出した。

「え?」

 聞き間違いか?と思ったのか、ぱっと彼の方を振り向く葵。

「がんば」

すると、カリッといい音を立ててきゅうりをかじりながら悠がそう言った。

「……悠も、です」

 そんな彼に鈴が言うと、

「いや俺村人だし」

ポリポリときゅうりを噛み砕きながら悠が言った。

「そう、でしたね」

「うん。それじゃあ、仕方ないね」

「いい奴らだなーお前ら」

 それに納得し、彼をその場に残して巨大ゾンビに立ち向かっていった二人を見て、のほほんとそんなことを呟く悠。

「喰らえ!フォアハンドーっ!」

「首尾一貫!」

「ついでにバックハンドーっ!」

「一意専心!」

 葵は巨大ゾンビの足元をテニス風味に切りつけ、鈴はそれを杖で貫いた。

『フハハ!その程度か!』

「うわっ!?」

「っ!」

しかし、巨大ゾンビはそれを嘲るように笑うと、いとも簡単に二人を吹っ飛ばした。

『……見習い剣士に物理攻撃しかしない白魔道士……あの国ももう手がないようだな?』

そして、巨大ゾンビは、反対側の岩壁にまで吹っ飛んだ葵と鈴を見、にやりと顔を歪めてそう言った。

「うーん……どうしよう、鈴?僕たちの攻撃、全然効いてないみたいだよ?」

 むせながらもゆっくりと起き上がった葵がそう言うと、

「葵、巨大化、です」

と、彼の隣で起き上がった鈴が返してきた。

「……うん。出来ることならそうさせてもらうよ?」

葵は取り敢えずそれに頷いた。

『フハハ!これでこの金山は完全に余のものだ!!』

 すると、自分の勝利を確信したのか、巨大ゾンビが狂ったように笑いながら言った。

「……え?金山?」

 それを聞き、小首を傾げる葵。

「この戦い、必勝、です」

「わあ、鈴がやる気に満ち溢れてる〜」

同時にやる気に満ち溢れたお金が大好きな鈴に、葵は少し遠い目を向けた。

「……アンデッド系の魔物には、光魔法、です」

「うん。でも、使い方分からないんでしょう?」

「はい、です」

 葵と鈴がそんな会話をしていると、

「何?魔道士のクセに魔法の使い方も分からないのか?」

悠が会話に割って入ってきた。
どことなくムッとした目で彼に顔を向ける鈴。
 すると、

「ぷ。ダッサ」

と、悠が言った。

「……葵、アイツを倒す前にコイツを殺りましょう、です」

「おっ、落ち着いて、鈴っ?!」

 杖を強く握った鈴をなだめようと試みる葵。

『フハハ!ついに仲間割れか?』

その様子を見て、巨大ゾンビが笑った。

『使いものにならない仲間を持つと苦労するな、見習い剣士?』

「え?」

 ゾンビが言った言葉に、内心頷きたいと思いながら小首を傾げる葵。

『……回復魔法も、余の弱点である光魔法も使えない白魔術士と、』

すると、ゾンビは鈴を指さしながら言い、

『戦う力がない屑以下の存在クセに、変なものを食いながら大口を叩く村人が仲間とはなあ!フハハ!』

と、悠を指さしながらそう言った。

「「……」」

「……悪口は、よくないよ?」

 特に反応を示さなかった二人の代わりに、葵は剣を握っている手にぐっと力を込めた。

「剣をしまえ、葵」

 するとその時、悠が静かにそう言った。

「え?でも―…」

「聞こえなかったか?剣をしまえ」

「う、うん……分かった」

彼の静かに憤っている声に負け、剣をしまう葵。

『フハハ!諦めた―…』

「……きゅうりを侮辱するとは、」

 悠は巨大ゾンビの言葉を遮り、ポケットから一対の(さい)を取り出した。
ちなみに、釵とは、三ツ又のフォークの真ん中だけが伸びているような形をした武器のことである。

「貴様、死にたいらしいな?」

 それを左右の手に持ち、構えた悠に、

「悠、自分のことはいい、ですか?」

鈴が一応尋ねてみた。

「……そんなもの、勝手に言わせておけ」

 自分が馬鹿にされたことより、自分の大好物であるきゅうりが侮辱されたことの方にご立腹の悠は、

「それより、よく見ておくんだな、鈴」

鈴にそう言いながら、両手に持っていた釵を同時に投げた。
釵は、寸分違わず巨大ゾンビの眉間に突き刺さった。

『フハハ!馬鹿か、お前は?こんなものが余に効くとでも―…』

 その攻撃が痛くも痒くもなかったのか、ゾンビは笑いながらそう言った。
が、その途中で、

「……暗雲の閃光は破滅をもたらす」

と、悠は呪文を唱えた。

『なっ―…』

 直後、凄まじい雷鳴が轟いた。
辺りを白く染め尽すほどの雷は、金属で出来た釵に吸い寄せられ、ゾンビは驚く間もなく消し炭ヘと化していった。

「……馬鹿は貴様だ。自分から弱点バラすな。そして俺は村人じゃない」

 どうっと豪快に倒れたゾンビに、

「黒魔道士だ」

と、悠が言った。
その次の瞬間、ゾンビは光の粒となって消え失せた。

「「……黒……魔道……士?」」

 突然の出来事にただただ驚く葵と鈴。

「ああ。分かったか、鈴?魔法を発動する為には、まず魔力を高め、その魔法のイメージを具現化し易い言葉を選び、それを詠唱する必要があるんだ」

そんな鈴に、悠は消えたゾンビが残していった釵を拾いながらさらりと言った。

「わ、分かりました……です」

「……って言うか、村人じゃなかったんだ……?」

 驚きながらも、この中で悠が一番強いということを認識する鈴と葵であった。












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