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ろーぷれ
作:めろん



第5話 ぬるぬる洞窟


「わあ……結構暗いね」

「はい、それに、ぬるぬるしてる、です」

「うん。気持悪いね」

 薄暗く、じめじめしている上に、何故か地面や岩がぬるぬるとしている洞窟の中を進む葵と鈴。

「……そして、生臭い、です」

 そう言って手で鼻を覆う鈴。

「……まあ、」

『あ゛あ゛あ゛あ゛―…』

そんな鈴に、葵は自分の正面に出現したゾンビを剣で倒した後、

「これだけゾンビだらけなんだからしょうがないよ」

と、言った。
 葵の言う通り、此処、ぬるぬる洞窟には、異常なまでに多くのゾンビがうろついているのだった。

「……わざわざ殺されに来るなんて、馬鹿、です」

 後ろから奇襲を仕掛けようとしたゾンビを杖で貫きながらぽつり呟く鈴。

「うーん……って言うか、ゾンビってもともと死んでるよね?中途半端に」

 弱く笑いながらそう言った後、今度は足元から現れたゾンビの脳天に剣を突き刺す葵。

「……成程……彼らは悪臭を放つ腐敗した自分の体に嫌気が差し、自分を殺してもらう為に旅人が現れては殺しにかかり、まあ、ただ殺されに行くのもなんだから、あわよくばその水々しく健康な体を乗っ取ろうという魂胆を持っている、ですね?」

すると、鈴が光の粒になって消えていったゾンビを見ながら言った。

「の、乗っ取……?」

 葵が鈴の言葉を聞き返すと、

「彼ら、ゾンビの最強奥技は、“略奪の口付け”、です」

と、鈴が言った。

「……え?」

「……彼らに唇を奪われると、ついでに魂も奪われてしまう、です」

 小首を傾げた葵に淡々と説明する鈴。

「……ええと、詰まり、このゾンビたちは唇を狙ってるってこと?」

 顔を青くしながら、葵は鈴に最終確認をした。

「はい、です」

『う゛う゛―…』

「あ、そう言えば、なんでそんなこと知ってるの?」

鈴が頷いた瞬間、現れたゾンビに今まで以上の気持悪さを感じた葵は、それを瞬殺した後、ふと気が付いたことをそのまま質問した。

「教会で貰った、です」

すると、鈴は鞄を開け、葵に分厚い本を手渡した。

「……“魔本”?」

「魔物の図鑑、です」

「へぇ〜」

魔本を受け取った葵は、薄暗い為にほとんど書いてある内容などは見えないのだが、取り敢えずそれをパラパラと捲ってみた。
 すると、

「やりましたね、葵、」

「え?」

と、鈴が言ったので、葵は本から目を離して顔を上げた。

「モテモテ、です」

『『あ゛あ゛あ゛あ゛』』

「……うわあ……全然嬉しくない」

 葵は、いつの間にかゾンビの大群に行く手を阻まれているのであった。
ゾンビにモテても、もちろん全然嬉しくない葵は、ジリッと後退りをした。

『『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛ら゛ひ゛ゅー』』

すると、ゾンビたちが葵に絶叫告白しながら襲いかかってきた。

「うわああああ―…あ?」

 素早く方向転換して逃げ出した葵の足は、突然空を踏んだ。
薄暗いせいでその池のような巨大な水溜まりの存在に気が付かなかったのか、葵は見事に水の中にドポンと落下した。

「! 葵!」

 その水の音を聞いて、思わず声を大きくする鈴。
 ――何故なら、彼女は葵が泳げないことを知っていたから。

「ど、どうしよう!?僕全然泳げなっ……たっ助けてっ!!」

 カナヅチの葵がバシャバシャと水しぶきをあげながら必死に助けを求めると、

『『あ゛あ゛あ゛あ゛』』

ゾンビたちが次々と水の中に足をつけ始めた。

「えええっ?!いやいや、君たちじゃなくて―…」

その光景を見て、葵が溺れながら突っ込みを入れていると、

「大丈夫か、葵?」

「!」

すぐ後ろから聞き覚えがある声がした。
それに次いでその声の主の腕に抱かれた葵は、バシャバシャと暴れるのを止め、後ろを振り向いた。

「……おい、ゾンビ。それ以上入るな」

 そこには、葵が思い描いた通り、黒髪の少年、悠がいた。

『『あ゛あ゛あ゛?』』

 悠の言葉が理解出来ないのか、それを無視してずぶずぶと水の中に入るゾンビたちに、

「煮崩れ起こすぞ?」

と、悠が言った。

『『あ゛あ゛……!!』』

 その言葉通り、ゾンビたちは水中で崩れた。
それを煮崩れとは言わないのであろうが、彼らの形をなんとか保っていたボロボロの皮膚は水に入るなり破け、支えを失った彼らの腐敗したはらわたは、水中に拡散したのだ。

「「……」」

 あまりのグロテスクな光景に顔を青くする葵と鈴。

「あーあ、ぐちゃみそ」

「……助けてくれてありがとう、悠」

にも関わらず、それを楽しそうに眺める友人に、葵は取り敢えずお礼を言うのであった。









「……何故、そんな格好で水の中にいた、ですか?」

「ん?」

 葵とともに水から上がった悠の姿を見て、鈴はそう尋ねた。
それは、今小首を傾げた彼が、フードと袖口と裾に白いもこもこがついた黒いロングコートを着、頭に黒いロングマフラーを帽子のように巻き付けているから。

「悠は寒がりだもんね?」

「あ、ああ。それだ」

 悠は答えるのが面倒だったのか、葵が言った言葉に適当に頷いた。

「……なら、何故水に入った、ですか?」

 水を存分に含んでいる為にかなり重くなっているであろうコートを見ながら鈴が言うと、

「あんまり細かいことは気にするな」

と、悠が言った。

「分かりました、です」

「よろしい」

こくりと頷いた鈴に、自分も頷き返す悠。

「でも、マフラーは頭じゃなくて首に巻くものだよ、悠?」

すると、今度は葵が小首を傾げながら悠に尋ねた。

「お洒落だ」

「あ、お洒落かぁ」

が、それはすぐに解決した。

「……ところで、なんでこんな所にいるんだ?」

二人の問いに答えた悠は、やっと自分が思ったことを二人に質問した。

「あ、ええと、僕たちは此処に魔物退治をしに来たんだよ」

「魔物退治?」

葵の答えに首を傾げる悠。

「はい、です」

 それにこくりと頷いた鈴は、

「悠こそ、どうしてこんな所にいる、ですか?」

と、再び悠に尋ねた。

「さあ?気が付いたら此処にいた」

「そう、ですか」

彼の答えにそう返す鈴。

「気が付いたら別世界だったのは流石に驚いたな」

「はい、です」

悠と鈴の会話を聞き、

「うーん……どうすれば元の世界に帰れるんだろうね?」

と、葵が尋ねると、

「クリアすればいいんじゃないか?ゲームだし」

「そう、ですね。ゲームだし、です」

二人はさらりと答えた。

「そっか。ゲームだしね。……あ、そう言えば、悠の職業は?」

「ん?ああ、村人U」

「悠なだけに?」

「流石葵だな」

「……この中にツッコミはいない、ですか?」

 葵と悠の会話を聞き、そんなことをぽつりと呟く鈴であった。

『魔物退治だと?』

 すると、何処からか突然声が聞こえてきた。

『ほう……あのガキ、まだ余に逆らう気か』

という独り言を聞き、

「……ええと、どなたですか?」

「独り言、怪しい、です」

「つうか話に入るタイミング遅すぎ」

三人はそれぞれ思ったことを口にした。

『なっ―…!?い……いいだろう。お前たちも今までの討伐隊と同様に滅ぼしてくれようぞ!!』

すると、岩壁に巨大な穴が空き、三人の目の前に巨大なゾンビが現れた。

「……わあ、何これ?」

「ボスキャラだろうな」

「と、言うか、何故説明口調、なのですか?」












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