消去天使クリア!PDFで表示縦書き表示RDF


消去天使クリア!
作:雨月


 それは俺がまだ、自分のことを
「僕」と呼んでいたころの話だ。とある日、俺は両親に連れられて知らないところへやってきた。重苦しい雰囲気が立ち込める部屋を抜け出し、俺は近くの公園へと向かった。そこで、一人の女の子が泣いており・・・事情は忘れたが、女の子を助けてあげた。それから・・・十年がたった。

自称天使、現る

飯縄身いいづなみ高校二年三組出席番号拾弐番 律咲蒼りつざきそう
それが俺の名前であり肩書きでもある。
自分で言うとあれだが・・気分屋だ。
趣味は読書に昼寝とプラモの組み立て、後は・・・・まぁ、他にも色々と多彩な趣味を持っている。
彼女はおらず、悲しいことに年齢といない暦は一緒だ。
家族構成は父が一人・・名前は律咲健次郎りつざきけんじろうに母が一人。
名前は律咲早苗りつざきさなえ、ペットの犬名前はジェニファが一匹と・・・まぁ、こんなもんだ。
あと、親戚の娘・・・律咲理恵りつざきりえが家に住んでいる。
自分の部屋を持つことは我が家では許されておらず・・・今のところその親戚の娘と同じ部屋だ。なんでも、その両親がトレジャーハンターをしているらしく・・・小さい頃から俺の家に預けられているうちに面倒を見ることになったそうだ。お人よしの我が両親にはほとほと、呆れたりしたりもするが・・そこが尊敬すべき点であろう・・・。
「母さん、今日の晩御飯は何かな?」
「うふふ・・・健次郎さんの好きなとんかつよ」
「それは早く帰ってこないと蒼に食べられてしまうなぁ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
 こんなやり取りをしている両親を見ながら俺と理恵は朝食を静かに食べる。俺は静かな場所が好きだ。別にこの二人のラブラブ熱光線(きっと、赤道直下に違いない)を浴びるほど日光浴は好きではない。きっと、理恵もそんなことを思っているのだろう。
「じゃ、母さん行ってきます!」
「ええ、いってらっしゃい健次郎さん!でも、職場は一緒だから私も一緒に行くわ!」
 そういって出て行った我が父、我が母を尻目に、俺と理恵は同時に食事を食べ終える。
「・・・兄ちゃん、、今日は兄ちゃんが食器を洗う日だったよね?」
「・・・ちっ、気がついたか・・・そのままそこに置いといてくれ。俺が後でまとめて片付ける」
「そう?それならよろしく・・・」
 理恵もこの場所からいなくなり、二階へと上がっていく。俺は自分の分の食器を洗って次に理恵の分の食器を手に取る。母さんの食器と父さんの食器を洗って食器洗いは終了・・・さて、次は郵便物を取りに行くというどこの家庭でもある仕事だな。
 我が家の朝は早く、俺以外の人たちは朝日が昇ったと同時に目を覚ます。幼い頃から共に生活をしていた理恵もその生活習慣がうつったのか、我が両親と共に起床・・・そして、両親は新聞を見ることなく、出て行ってしまう。仕事上、朝早い仕事らしいのでそのことはしょうがないのだが・・・せめて、子供に
「いってきます」ぐらいは言ってもらいたいものだ。
 玄関から出て郵便受けを確認する。
この時間帯ならほとんど新聞だけなのだが・・以前は理恵をストーカーしていた奴の熱烈な告白文がはいっていたりもしたな。
理恵は気持ち悪がっていたが、俺にはそんな手紙が入っていたことが学校の下駄箱であったこともない。理恵の下駄箱にはぎっしりとラブレターが入っているというのに・・・あのずぼらな理恵が何故、もてるのか俺には理解できないし、理恵に騙されている野郎共の末路を俺は心配してしまうね。実物見ると、きっと幻滅してそのまま幽霊なら成仏するだろう。
「・・・おや、今度は婚約届けの紙が入ってるぞ?理恵の奴、ものすごくもてるんだなぁ。相手は誰だろう?まぁ、十八歳以上だろうな?」
「いえ、違いますよ、それは・・・蒼君と私の婚約届です。本日、提出しようかと思っているんですけど?」
「ふぅん、俺と・・・・・ああ、すまん・・・名前を・・・」
 声がしたほうを振り返るとそこにはニコニコと笑っている俺より少しだけ身長が低い女の子が俺を見ていた。
「・・・誰?」
「ええぇ!私のことを覚えていないんですか?」
 心外そうにそういうが、いきなり
「覚えていないんですか?」といわれても知らないものは知らないし、覚えていないものは覚えていない。目の前にいる魔女っ娘が着ていそうな服を着て白い羽を生やしている女の子が可愛いことは認めよう。だが、事実を認めることと心で認めることは別物だ。今まで血のつながっていた両親だと思っていたら違う奴だったといわれても信じられん。つまり、俺は目の前の人物を知らない。
「すまん、知らん・・・覚えていないとこの場合は言ったほうがいいんだろうな」
「・・・くすん、ひどいです!私の名前はクリアですよぉ!」
「・・・クリア・・・お前の名前、クリアなのか?」
「ええ、クリアです!思い出しましたか?」
 クリスティンとかのほうが俺的には好きだなぁ・・・いや、そんなことをいっている場合ではないない。
「・・・すまん、全然思いだせない・・・」
「そ、そんなぁ!私が十六歳になったら結婚しようって約束したじゃないですか!」
「・・・?」
 俺はまだ、十七歳になったばかりだ。法律的にまだ、結婚はできないぞ。
「・・俺はまだ、十七だ。残念ながら結婚できる歳ではないぞ」
「しょ、しょんなぁ・・・」
「大体、君は何だ?」
「くすん・・・ええと、私はですね・・・・ここはきめ台詞だからかっこよく言わなきゃ!私は『消去天使』です!」
 人差し指を天に向け、彼女はそういった。その目は揺ぎ無く・・・しっかりと俺の目を見つめていた・・・かっこいいことは認めるが、鼻水が出ていて台無しだ。
「・・そうか、よかったな・・・鼻水、きちんと拭けよ?」
 俺はそういって自宅に新聞を持ってはいった。馬鹿には付き合っていられない。
「・・・ま、待ってくださいよぉ!普通は『天使なんているわけないだろ?』とか『それなら、証拠を見せてみろ!』とかいいません?」
「・・・ああ、そんな風な展開を希望してたのか?ここはスルーかと思ったんだ」
「そんな!?せっかく心の準備だってしてきたんです!」
「ああ、それは・・悪いことをしたな。一人でやっていなさいな・・そんじゃ、ばいばい」
 俺は自宅の玄関の中に姿を消したのであった。音がしなくなったので放っておいたのだが・・・
ピンポーン!
「・・・あいつか?」
 確認してみると、先ほどの自称天使だった。まだ、俺に何か用事があるらしい。
「・・・何か?」
「お願いですから、せめて私の力を見てくださいよぉ!」
「・・わかった、見せてくれ」
「絶対に自宅にこもらないでくださいね?私のこの大切なステッキで奇跡を起こします!そのクールな面を笑わせてあげます!二つの目をしっかり開けててくださいね?」
「ああ、約束しよう・・・」
 俺は自宅の扉を閉めて外に出た。いつの間にか彼女は謎のステッキ(先っちょに巨大な消しゴムがついている)を握り締めてぶつぶつ言っている。きっと、はたから見たらおかしい人だと思われているに違いない。俺としてはあまり関わり合いを持ちたくはないんだがなぁ。いや、誰も見ていないなら話をしてもいいとは思ってる。
「・・・白き聖なる我が獣よ・・・すべての汚れを消してくれたまえ!」
 そういうと、彼女はステッキを振り下ろした。その右腕から発せられた白く聖なる光の先には俺の左手があった。そして、見事俺の左手に直撃・・・俺の左手はきれいさっぱり、なくなった。血が出ることもなく、その空間から消されたといったほうがいいようだ。
「・・・ほら!見てください!完璧に消すことができましたよ!すごくないですか?私のこと、思い出して惚れてくれました?」
「・・・ほぉ、近頃の若者は好きな人の左手を消すことが奇跡なのか?お前のその力が本物であると俺は認めよう・・だが、俺の左手はその奇跡のせいで消えちまったぞ?」
「あ・・・」
 クリアはそういっておどおどしている。よし、ここは冷静にどうすればよいのか考えよう。目の前の天使はきっと役に立たないに違いない。終わった祭りに参加するには一年かかってしまうものさ・・・。
「・・・・消すことができるということは戻すこともできるんだろう?」
「それは・・『消去天使』だから、ちょっと無理ですね♪消すことが使命ですので・・・」
 なんて、役立たずな上に場合によっちゃ迷惑な天使なんだろうか?産業廃棄物以下の役立たずさだ。厳しいのではなく、それが現実だ。
「・・・俺、これから左手なしで生活しないといけないのか?」
 そんなことをつぶやく俺の前に、新たな登場人物が現れた。
「・・・影から影へ・・謎の『落書き悪魔』参上!」
 既に、謎ではない・・・俺はそんなことを思いながらも、その相手を見る。その姿は目の前に突っ立っているクリア(真っ白)を真っ黒に塗ったような感じだった。だが、微妙にその雰囲気は大人っぽい・・・そして、胸もクリアより大人っぽい。
「・・・君、名前は?」
「・・・ペン・・・私が、あなたの消された左腕を書いてあげる」
 これまた謎のステッキ(さきっちょには鉛筆がくっついている)をかざし、何ごとか呪文を唱え始める。その姿に俺は微妙に不安を抱きながら神に祈る。いや、相手は悪魔だが・・・
「・・・黒き邪なる我が獣よ・・・・すべての白紙を黒く塗りつぶせ!」
 そして、振り下ろす・・・真っ暗な光線が俺の左腕にあたり・・・俺の左腕は復活していた。
「・・・おお!なんとパーフェクトな左腕なんだ!きっと、ジオ○グの下半身もパーフェクトにかけるに違いない!」
「・・・この道、十六年・・・生まれたときからやっている」
 それはまた、紹介文的なことをどうもありがとう・・・こちらの疑問が出る前に答えるなんていい人だなぁ。
「蒼さん、よかったですね?」
「・・・何がだ?」
「左腕、治って・・いやぁ、めでたしめでたしです!私の姉さんのおかげですね。さ、家の中にはいりましょう?」
「・・・ペンさん、どうぞ、俺の家に入っていってください。なくした左腕のお礼をしたいんです。クリア、お前は入ってこなくていい・・・なくした左腕の代償はでかいぞ?」
「・・・どうも(ぽっ)」
 俺は頬を染めている彼女の肩に手を回して(先ほど書いてもらった左腕)家の中へと姿を消す。
「・・・よければ、この紙にサインをいただけません?」
 そういって俺は右腕で持っていた婚約届けをペンに手渡す。
「・・・あなたのその大きな鉛筆で俺たちの未来を描いてみませんか?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ!私のことは無視ですか?それは私が持ってきたものです!」
 そういって割ってはいってくる真っ白少女に俺は別に何も感じない・・・いや、正直にいうと・・・迷惑という感情を抱いていた。
「・・・クリア君、君は好きな男の子の体の一部を消すのが好みかね?」
「え・・・そうですよ・・・って、冗談です!そんなことはありません!」
 玄関を閉めようとすると、手に持っていたステッキでそれをまるで悪徳セールスの人がするように間に割り込んでくる。
「おいおい、それは大切なステッキなんだろ?もっと大切に扱えよ!」
「いえ!どうせ代わりはたくさんあるんですから気にしないでください!物は消費するためにあるんですよ!大切にするのは老人だけで充分です!」
 結局、家の中に無理やり入ってきたクリアに俺はお茶を出す。
「・・・・粗茶ですけど・・・」
「へ、そんなお茶を飲ませないでくださいよ!牛乳がいいです!」
「・・・OK、君はどうやら出がらしがそんなに飲みたいようだね?」
「・・・いえいえ、なんて立派なお茶なんでしょう?心が現れるようです」
 きっと、醜い心なんだろうなぁ。名前はクリアのくせして・・・まぁ、それはいいや。
「・・・それはそうと、君たち二人のような非日常の俗物が俺に何かようかな?」
 そういうと何故か落ち着き払ったクリア(猫舌なのだろうか?まったくお茶には手をつけていない。)が俺の眼を見る。
「・・・実は、真剣な話・・・婚約を迫りに来たんです!」
「・・冗談・・じゃないようだな・・・・ペンもか?」
「・・・うん・・・(ぽっ)」
 その言葉に俺は唸った。いや、その言葉を正確に言うなら俺は(やっぱり、結婚するならどう見てもろくなことがないクリアを生涯の道連れにするなら寡黙で優しそうなペンと結婚したほうがいいだろうと)唸った。
「・・・待った!」
「何が待っただ?」
「・・・これから、一緒に生活して決めてください!私、がんばりますから!」
「・・・・私からもそちらのほうがいいと提案したい・・・」
「ペンがそういうなら・・・」
「わ、私はどうでもいいんですか!?」
 こうして、俺はあっさりと非日常的な存在の二人を受け入れた。理由?そりゃ、まぁ・・その場の気分に押し流されてしまったと思うしかないだろう・・・気にしないでほしい。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう