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卒業の涙

作者:黒ユリ
 いつも学校に行くのは退屈で、早く帰りたいと願っていた。しかし、今日は卒業式なせいか、とても興奮しているのは自分だけではないはずだ。

 卒業アルバムを先生に貰い、メッセージを書いて貰うために他クラスに行くときの感情はとてもわくわくしたものだった。それはまるで、体育祭でティーシャツにメッセージを書いて貰うときのようだった。

 きっと、別れの実感が湧かないせいだ。

 ギリギリまで他クラスで書いたり、書いて貰ったりした後は自分の教室まで全力で走った。
 廊下に名前順に並び、保護者の待っている体育館へと向かう。いつも以上に皆の会話は弾んで、先生に注意されていた。


 2列でゆっくりと歩けば、ふと入学式のことを思い出した。

 新しい制服を着た自分は少し大人になったように感じたことを。



 校長の話す内容も、PTA会長の話す内容も全てが耳を通り抜ける。退屈だね、と隣と苦笑する。その後、まだ歌詞を覚え切れていない校歌と式歌を歌う。
 卒業式の定番な式歌は今の自分に重なりやすいせいか、感傷的になる人が多い。鼻をすする音が聞こえると、泣いてるよ。なんて小さな声でからかった。

 最後に保護者や職員の拍手のなか、音楽に合わせてゆっくりと退場する。
 皆に見られながら歩くのは恥ずかしくて、仏頂面になってしまう。やはり、母親が撮ってくれたビデオには口元の歪まないように必死な自分がいた。

 その後、遅くまで友達とプリクラ取って、カラオケして、食事をした。過去に何度もプリクラだって撮ったし、カラオケだって何度も行った。
 時間がいつもより進むのが早く感じるのは、もう最後だと無意識のうちに気付いているからだろう。



「ラインで連絡とって、また遊ぼうね」



 お互いの進路ですれちがい、きっとまた集まれるのは数回だろう。
 回りの環境に染まって皆大人になっていくのだろう。 
 今のまま集まることは出来ない、と思うと何故か寂しくて涙が滲む。それはきっと皆は私の知る大好きな友達では無くなるからだ。
 きっとそれは私も同じだ。今のままではいられない。自分はどうなるのだろうか? とてもとても怖かった。



 家に帰り、部屋でゆっくりとアルバムを見る。

 写真を見ると、過去が眩しすぎて辛かった。もう、二度と戻ることは出来ないと思うととても寂しかった。
 卒業式では出なかった涙がこぼれた。

 アルバムに落ちた涙を拭いて、アルバムを棚へとしまった。

 



 気がつけば月は隠れ、眩しい太陽の光がカーテンから漏れていた。

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