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ユダの即興曲
作:マギ



1A.勇者御一行


平和だ。
空は青く澄み渡り雲ひとつない快晴。
ちょうど山の頂上なので涼しい風といい眺めが俺を楽しませる。
道の両脇には森がうっそうと生い茂り、その隙間から赤い瞳が覗き、
そして道の真ん中では・・・・勇者(・・)が倒した盗賊を足げりしていた
「たく、雑魚に用はねぇのですから、早くアジトの場所を教えなさい。」
うわ〜、仮面が外れてるよ仮面が。
足元の盗賊の怪我はまるで奇跡が起こったみたいに綺麗に急所だけ外してある。
あいつ人を殺さない事に長けてるからな〜。
まっ、その分地獄を見ることになるんだけど。
そしてこの光景に慣れてしまったことに結構ショックを受ける俺。
あれだ、俺が生きてたときぐらい驚いた。
「アテル、行きますよ。」
勇者レリエルはさわやかな笑顔で俺に言う。
この笑顔にだまされた人は万をこえるとか、こえないとか。
まぁ、だまされる奴も仕方が無いと思う。
俺に国語力は無いからよく言えないがとにかく美形なのだこいつは。
光に反射してキラキラと輝く白銀の髪といい、金の瞳といい。
悪質なのはこいつがそれを自覚して、利用しているという所だろう。
「置いて行きますよ。」
森へ入ろうとするレリエルが言う。
ちなみに意味は『さっさとしないと死よりひどい目にあわす』
ことば通りに取ると後で痛い目に会う。
経験者が言うんだから間違いない。
「はい。」
返事をして自分も森へ入ろうと足を踏み出すと
「勇者様〜、お待ちください〜。」
若い青年の声とガシャガシャと金属音が盗賊のうめき声しかしないこの道に響く。
しばらくすると、軽装備の鎧を着た茶髪の青年が
俺を通り越しレリエルのところで立ち止まる。
「勇者様、先日は魔物退治ありがとうございました。」
・・・・えっと、どの魔物退治だろう。
「あの馬車にはお忍びで貴族のご令嬢が乗っておりまして、
是非お礼がしたいと申しておるのですが。」
あ〜、昨日の馬車か。
あれが途中で魔物に襲われたせいで俺はこいつと肩を並べて
道をひたすら歩く事になったんだっけ。
「お言葉は嬉しいのですが・・・・。」
丁寧に断り始めるレリエル。
あ〜あ、青年が尊敬で目をキラキラさせちゃって、
そのうち弟子にして下さいって言い始めるぞ。
「弟子にして下さい!」
・・・マジで言った!
自分がここに来た用件を忘れてないかこいつ。
「ですが私はあなたの事を知りませんし。」
やんわりと断りの言葉。
「ロギエ村出身 ギル・アルバート 十九才です。」
しかしその言葉を彼はその言葉のとおりに受け取った。
「弟子は今手のかかるものがいるものですし。」
そう言って俺を指差すレリエル。
こいつ、人をだしにしやがった。
あ〜、そんな敵対心剥き出しの目で睨まれても・・・。
「私は魔法も剣の腕も女性になど負けはしません。」
……いまの女子差別発言だ。
俺が言ったら回りの女子にボコされたのにここはそれが当たり前なんだよな〜。
それに、俺だってレリエルと一緒に旅なんかしたくねぇよ。
だけどさ・・・・。
「誰か!誰か助けてくれ〜〜〜〜〜〜。」
今度は俺達の前から太った成金親・・・・いや、少々メタボリック気味で運動不足の
あまり良い趣味をしていない中年が必死の形相でこっちに走って来る。
「お願いだ、礼はする。娘を助けてやってくれ。」
そのまま崩れるように青年の足元にしがみつく中年。
「どうしたんだ?」
「商団が・・・盗賊に娘が、他にも女子供はすべて・・・早く、早く助けないと!!」
その先は言わなくても分かる。
さんざん回し者にされた後、変態親父達に売られていくのだろう。
ここじゃありがちで、考えるだけでめちゃくちゃ胸糞悪くなる。
それが行われている事と、それをやろうとする屑どもに。
頭が少しずつ冷え渡っていくのが自分でも分かる。
「おそらく・・・この方たちと同属でしょう。」
レリエルが冷静な声で言う。
「このあたりの盗賊ですと龍の牙でしょうか。」
「龍の牙?」
声を出すと少し冷たい声が出た。
思った以上に頭に来ているようだ。
「変な噂がありますが・・・おそらくはデマでしょう。」
それに気づいたのかは分からないが彼の態度は変わらない。
いまの言葉だって、
「お前、そんな事もしらねぇのか。」
という見下しの言葉が多分に含まれている。
そう思ったのも後から考えてから気づいた事だ。
「ワリ、先行くわ。」
言葉と共にさっきから悪意がバカみたいに渦巻いている場所へと走っていく。
無意識のうちに手は口を隠すようにそえられる。
「待ちなさい!!」
俺の後を追ってくるのはさっきの単純細胞。
「女性が行くような場所ではありません!ひき帰しなさい!!」
「うるせぇ、黙ってろ。」
「…なっ!」
絶句した後また喋りだそうとしたギルの声は…
「グガアァアァァァアァァアァァアァ…。」
天が割れるような龍の叫びによってかき消された。












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