第8夜:ストーキング・ブギ 4番
放送が流れてから僅か数秒、二つの足音が爆音をたてて教室の前に到着した
その足音の片割れが息を切らせながら、もう片方に尋ねる
「はぁ・・・・はぁ・・・・一純は睡眠薬で眠ってるんじゃなかったのか?」
尋ねられたほうも肩で息をしながら答える
「・・・こ、こっちだって全くの想定外よ・・・・・」
尋ねられた方、つまり小夜にとっても一純が目覚める事はイレギュラーな事体らしい
(睡眠薬の効き目で最低5時限目までは目覚めない予定だったのに・・・・・薬の配分にミスがあったのかしら・・・・・・・・・・・あぁ、そんな事よりも兄さんに凛を抹殺しようとした事がバレてしまった事のほうが問題よ・・・・・・・このままじゃあ兄さんに叱られるどころか絶縁されてしまうかもしれない・・・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう)
どうやら小夜は完全にパニック状態になったらしい
一方凛の方はというとまだ冷静な状態だった
(・・・・・一純には叱られるかもしれないが、もし咎められたら妹の方から仕掛けてきたと言い張れば矛先は妹に向くだろうしな・・・・・うまくいけば一純の妹に対する好感度を下げられるかもしれん・・・・・まぁ、どちらに転んでも私にはあまり被害はあるまい・・・・)
・・・・・・小夜を陥れる策略まで練ってるほどだ
「いつまでも立ち尽くしてる訳にもいかん。開けるぞ」
凛はそう言うと教室の入り口に手をかけた
「ちょ、ちょっと!?まだ心の準備が!!」
一方、凛とは反対に冷静さを失った状態の小夜はワタワタとしている
小夜の言葉を無視して入り口を開いた
ガラガラガラッ!!
「失礼する・・・・・ん?」
「ああああああああの、に、兄さん?これはその・・・・・ちょっとした手違・・・・あ?」
入り口を開けた二人は足を止めた、いや正確に言うと止められた
入り口を塞ぐ巨大な辞書の山に
その山越しに声が聞こえてきた
「小夜と凛か?」
「に、兄さん!?」
「一純か?」
二人も山越に返事をする
しかし凛は少し疑問に思うことがあった
「この辞書の山、先程より大きくなっていないか?」
凛が疑問をぶつけた、確かさっき来た時はふんずけて乗り越えられたはずだが、今は自分の肩位の高さになってる
一体どこからこれだけの本が出てきたんだか
すると地の底から呻くような声が聞こえてきた
「・・・・・・クラスの連中が面白半分で積み上げていったんだよ〜・・・・」
勿論、孫悟空の如く山の下敷きになっている佐倉本人の声だ
「全く、いずみんもやっと起きたと思ったのに全然助けてくれる気配ないしよ〜」
その言葉を聞き逃す2人では無かった
「兄さん、今起きたとこなの?」
小夜が一純に尋ねる
「ああ、起きたら放送が流れてな、なんか2人を呼んだ事になってるらしいが俺はサッパリ状況が分からないぞ?」
「そ、そうなんだ・・・」
表面上はなんとも無いが、小夜は心の中で歓喜に踊り狂った
(チッ・・・)
一方凛のほうは心の中で舌打ちした
「そうか〜、いずみんは知らないんだったな〜、あのな?どうやらこの2人がな〜・・・・」
「「!?」」
小夜と凛に戦慄が走った
(こいつぅぅぅぅぅぅぅ、余計なことをぉぉぉぉぉぉぉ!!)
(この状態でも構わないが、私の好感度を下げるような事は無いに越した事はない!!)
「おお!!こんなところにゴキブリがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
わざとらし〜く、凛が木刀で辞書の山ごと佐倉を上に吹き飛ばす
「ぎゃぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
佐倉は某カンタービレの人のような声をあげて宙を舞った
「ああ!!あんなところにスズメバチがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これまたわざとらし〜く、小夜が宙を舞う佐倉に弾丸を撃ち込む
「うげふぅっ!?」
この時クラスのみんなは佐倉の死を悟った
それと同時に佐倉のアホさを再確認したのだった
そして佐倉は別の場所に墜落した
ドサドサドサッ!!
その上に再び辞書の山が築き上げられていく、まるでそっくりそのまま場所だけシフトしたみたいだ
(まるで墓標みたいだ・・・)
クラス全員がそう思った
「随分息が合ってるなぁ、最初は心配してたけど2人とも仲よくなっててお兄ちゃんは嬉しいぞ」
あくまで一純は気づかない
「ま、まあね」
「ふ、分別はつけてると言ったろう?」
だが2人の目はいろんな方向へと泳いでいた
おまけに制服は汚れてたり破けてたりと、いかにもさっきまで戦ってました感MAXだ
「ところで結局さっきの放送はなんだったんだろうな?」
一純は一人で首を捻る
小夜と凛は無言の「お前ら黙ってろ」的なプレッシャーを他の生徒に放ちながら
「「さあ?」」
2人仲良くしらばっくれた
to be continued・・・・・ |