第6夜:ストーキング・ブギ 3番
人のいない廊下を小夜は駆け抜けていた
黒い髪をなびかせ、手に持った拳銃を強く握り締めながら
そして思考する
凛を始末する算段を
愛しの兄をあのストーキング・クイーンの魔の手から救うために
(・・・・・・・この学校の内部構造は完全に頭に入っているわ。・・・・・・しかし、それでも相手に地の利があることに変わりはない。ましてあの女は腐ってもこの学校の生徒会長・・・・・。校内は庭みたいなものだろうし・・・・・・。まずは間合いに入られるより先にあの女を見つけなくちゃ・・・・)
幸い先ほどの放送で廊下にはネズミ一匹いない
人の気配があったらすぐに気づく
「普通の人の気配だったらな」
「何っ!?」
声がした瞬間小夜は反射的に前に飛んだ
すると先程まで立っていたリノリュームの床に木刀が突き刺さる
・・・・・・木刀が地面に刺さるって
「ほう、よく回避したものだな」
上を見ると凛が蝙蝠のように天井にぶら下がってた
因みにスカートは完全に捲れていたが、下にはちゃんとジャージを穿いていた
「・・・・流石ストーカー、欠片も気配を出さないなんてたいしたものね。・・・・でも直前に声かけられれば誰だってかわせるわ?」
言いながら小夜はトリガーを引く
問答無用で放った弾丸は真っ直ぐ凛へ打ち込まれる
しかし凛はぶら下がった状態のままで弾丸を避ける
・・・蓑虫が揺れてるみたいな動きだ
「何、僅かばかりの情けというものだ。ここからは手加減しない」
「・・・・・随分と舐めた事言ってくれるわね」
「では、舐めたついでに貴様の算段を当ててやろうか?」
そういうと凛は天井から飛び降りてくる
「おそらく、お前が浮かんでいる私の弱点は2つ。まずはリーチ。貴様の銃のほうが圧倒的に長い上にこちらは狭いところでは振り回せない」
「・・・・・2つめは?」
「2つめは私が生徒会長という立場にあることだ。生徒の見本たる生徒会長としては、備品の破壊はよろしくないからな」
「あら?罪も無い生徒への暴行は良いのかしら?それに、さっき机ふっ飛ばしてたじゃないの」
「何、これも教育的処刑という奴だ。それにあの机は私個人の持ち物だ」
軽いやり取りをしてるように見えるが、内心で小夜は少し焦っていた
(完全に読まれてるじゃない・・・・・)
小夜は凛の指摘したとおりの弱点を突くつもりだった
(・・・・2つの弱点のそろう場所、図書室か理科実験室にでも誘い込もうと思ってたんだけど・・・・・・・)
小夜は内股のガーターベルトからもう一丁拳銃を取り出した
「・・・・ガーターベルトは校則違反だぞ」
「それは失礼したわ」
小夜は冗談めかして肩をすくめた
しかしスグにその表情は鋭くなる
「・・・・・バレてるみたいだし、小細工なしでいくわ」
言うや否や小夜は両手に構えた拳銃を乱射した
「フッ・・・・・・・」
凛は木刀を引き抜くと、無数の弾丸を弾きかわしながら小夜に突撃した
「弾丸など、銃口から身をずらせば容易くかわせる・・・・・・それに・・・」
凛が一気に小夜の懐まで入る
「速っ・・・・!」
ガキィィィィィィィィン!!
床に2丁の拳銃がカラカラと転がる
小夜も一緒に弾きとばされ、床に倒れる
「クッ・・・・・」
弾かれた衝撃で体を打ったせいか小夜はうつ伏せに倒れたまま動けないでいた
凛は落ちていた2丁の拳銃を拾い上げる
「拳銃は本来、両手で1丁の銃をホールドするものだ。・・・・・短期決戦に焦るあまり2丁にしたのが仇となったな」
そして木刀の切っ先を小夜に向ける
「・・・・一純を諦めるというなら、これ以上痛めつけることもないが?」
小夜は顔だけ向けて言った
「・・・・・・・貴女が・・・・私なら・・・そういうかし・・・ら?」
「・・・・・死んでも言わないな」
凛は静かに笑った
そして木刀を小夜目掛けて振り下ろ・・・・・
「・・・・・かかったわね」
小夜の目が怪しく光る
「!?」
今まで痛みをこらえていたのが嘘のような速度で小夜が凛の懐へ飛び込む
さっきとは逆のシチュエーションだ
そしてその右手にはさっき弾かれたはずの拳銃が握られてた
「拳銃が2丁だけ何ていつ言ったかしら?」
さっきまでうつ伏せで倒れてたのも、凛に気づかれずに拳銃を取り出すためだった
全てはこの一瞬のためのブラフだ
「零距離なら避けれないでしょう!!」
「クッ・・・・貴様・・・」
凛もとっさに木刀を引いた
小夜と凛
互いの喉元を狙った一撃が今まさに・・・・・・・!!
ピンポンパンポ〜ン
・・・・・・・邪魔された
木刀と拳銃が互いの喉元で止まる
『お呼び出しいたします〜。・・・え〜と会長と妹さん、一純君が呼んでますので至急2−Cまでお越しください〜』
間延びした放送部員の呼び出しコールが校内に響いた
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
二人とも顔から血の気が引いていた
((お、怒られる・・・・・))
二人同時にそう思った
そして、2人共まさに疾風のごとく2−Cへとスッ飛んで行く
さっきまでの攻防が、まるで嘘だったような静けさだけがそこには残っているのだった・・・・・・・
to be continued・・・・ |