第3夜:小夜の夜想曲 2番
私は帰ってきた
9年間離れていた故郷へ
9年間離れていた愛しい兄さんの側へ
勿論、ちゃんとした予定通りに
決して、9年間も兄さんが会いに来てくれないから業を煮やしたからだとか、9年間も会いに来てくれないのは兄さんに悪い虫がついてしまったから心配になったからだとか、9年間も会いに来てくれないという事はもしかして私の事などキレイサッパリ忘却の彼方へと忘れ去られてしまったのではないかと不安のあまり情緒不安定になってしまったからではない。断じてない
そもそも9年間も妹をほったらかしにするというのはどうかと思う
だから、兄さんの顔を見た途端、遂に会う事ができた嬉しさと一緒に、よくも9年間もほったらかしにしてくれたな、っていう殺意も湧いてきてしまった
・・・・・・・いわゆる可愛さ余って憎さ100倍という奴だと思う
ホントに100倍になるものなんだ・・・・・
「・・・・・・という訳なの」
「という訳なのじゃないだろ・・・・・・」
ソファーに横になりながら一純は呟いた
先程の小夜のフルパワーの鯖折りから意識は取り戻したもののまだ立ち上がる事は出来ないらしい
ちなみに小夜はちゃっかり一純を膝枕している
「でも、確かに9年も会わなかったのは悪かった。本当にすまない」
「兄さんもういいの。だってこれからはずっと一緒にいられるもの」
小夜はそう言うと一純の頭を優しく撫でた
(・・・・・・そうずっと一緒よ、ウフフフフフフフフフフフ♪)
小夜の目が怪しく光っているが、小夜の優しさに目が眩んだ一純は気付いていなかったりする
「・・・・・ところで」
「何?」
「小夜は何で9年も全寮制の女子校になんか行ってたんだ?親父達も知らないらしいし」
「あぁ、それは・・・・・・・」
言えない
言えるわけない
あの女以上に完璧な女になって兄さんを横取りされないためだなんて・・・・・・
そのために9年ものリスクを背負ったんだけど・・・・・・
小夜はチラリと一純の顔を見た
まさか9年の間に一度も会いに来なかったのは誤算だったわ
流石に9年も会わなければ兄さんもあの女に傾いてしまうかもしれないし・・・・・・・
しかしそれを兄さんに直接言える訳はない
だけど兄さんに嘘言うのも・・・・・
「・・・・・や、大和撫子を志していたから」
う、嘘は言ってないわよね?
「でも、せめて高校位は兄さんと一緒に通いたいから帰ってきたのよ」
「という事はやっぱりウチ学校に編入するのか」
「そうよ」
一純は少しコメカミを押さえてうぅむと唸った
「・・・・・・・・一つ言っておくが、ウチの学校には凛の奴も通ってるぞ?」
「でしょうね」
兄さんが入学してるのに、あの女がいない訳がない
「・・・・・・・一応言っておくが、くれぐれも学校内を騒然とさせるような喧嘩は起こさないでくれよ?」
(コイツと凛は水と油なんてもんじゃないからなぁ…)
なんせ小学校入学前にグーで殴り合いの喧嘩をした程だ
おそらく幼稚園史上最凶の喧嘩だっただろう
「心配しすぎよ。私も凛も子供じゃないんだから」
・・・・・・・子供で殴り合いの喧嘩をするのだから、成長したらもっと恐ろしい事になるのではないだろうか?
「まぁ、どの道会ってみないと何とも言えないけど・・・・・・・」
そう言うと小夜は一純の頭をそっと膝から下ろすとスッ立ち上がった
「それじゃあ、部屋を片付けてくるわね」
そう言って小夜は部屋に向かっていった
(・・・・・・甘いわ兄さん、私はこの9年間で身に付けたもの全てを駆使して凛の奴を再起不能にしてやるから・・・・・・)
一純はまたまた気付かなかった
妹の放つドス黒いオーラに・・・・・・
明日学校で起こるであろう惨劇の予兆に・・・・・・・・
to be continued |