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レストロ☆アルモニコ
作:烏丸



第20夜:女色々長恨歌 7番


「ここで会ったが百年目、大人しく一純を放してもらおうか!!」

 太刀の切っ先を西明寺に向けながら、凛が凛々しくそう叫ぶ

「放せと言われ、はいそうですかと放す馬鹿が何処におる。これからワシらは、めくるめく官能の世界へと旅立つところなのじゃ。邪魔をすると因達羅神に蹴られてあの世行きじゃぞ」

 誤解の生じるような言い回しは勘弁してもらいたい

 こちとら官能の世界へ旅立つ気など毛頭無い

 最悪、急性アルコール中毒であっちの世界にこんにちはするくらいだ

 ・・・・・・・あ、こっちのほうがタチが悪いか

「戯言を聞く気は無い!貴様がうちの学校の人間でない事は何となく分かっているのだ!!大人しく正体を現せ!!」

 凛は西明寺を睨みつけてまくし立てる

 一方で西明寺の方は、少々だるそうな顔をする

「前の回で説明した事をもう一回言うのも面倒じゃから、そこらへんはかくかくしかじかで」

 思いっきり省略した説明で乗り切るつもりらしい

 ていうか説明ですらない

「なるほど、そういう訳か・・・」

 どうやら伝わってしまったらしい

 意味を理解したのか、凛は納得したように頷く

 これで伝わってしまうほうがある意味問題のような気もする

「だが、そもそも何故一純に付きまとう必要があるというのだ!!」

(それももっともだな・・・・)

 凛の言葉に、一純も疑問を抱く

 先輩が九十九神っていうのはわかった

 だが西明寺が自分にちょっかいを出す意図がサッパリわからない

 凛の問いを受け、西明寺は少し考える素振りをみせる

 すると不意に自分の懐から一枚の札を取り出すと、何か呟きだす

「二枚目の札よ、わしの代わりに一純を神社まで連れて行ってはくれまいか?」

 そう言うと、その札を一純の額にペタリと貼り付ける

「・・・けっして良い予感はしないんですけど」

 キョンシーのような扮装になった一純が西明寺にそう呟く

「まあそう言うな、少しばかりこの娘と話すことがあるのでな?一足先に向かっておれ」

 一純がその言葉を最後まで聞くことは無かった

 なぜなら、この娘の辺りで一純はすでに此処にはいなかったからだ

 その様子を見ていた凛の目にはこう映った

             一純と西明寺が何か話す
                  ↓
            西明寺が懐から何か取り出す
                  ↓
               それを一純に貼る
                  ↓
           一純、音速で空高くぶっ飛んでいく

「い、一純ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?!?!?!?!?!?」

 凛の叫びも空しく、一純は一瞬で見えなくなった

「案ずるな、一足先に神社に向かってもらっただけじゃ」

 西明寺は絶叫する凛にそう告げる

「これでもおぬしの事を考えての事なんじゃぞ?おぬしが知りたい事を話すには、少しばかり、あ奴おるのは都合が悪いと思ってのう」

 そういって西明寺は屋根から飛び降りる

「・・・・どういう意味だ」

 そう返して見るものの、凛は薄々だが西明寺の言いたいことが分かり始めていた

 西明寺の現れたのは、自分が例の神社で刻参りをした次の日

 しかも西明寺は、先程自分であの霊樹の九十九神と言っていた

 という事はつまり・・・・

 凛の額に一筋の汗が流れる

 凛の考えを悟り、西明寺が口を開く

「おそらくおぬしの考えは8割程あってるじゃろう。じゃが、おぬしだけが責任を感じることは無いぞ?」

 凛の顔に?が浮かぶ

「なぜならあの日、おぬしの他にも、一純の妹と機械人形も同じ事を願って行ったのじゃからのう。しかもワシがこの体を得る直接の原因は一純の妹にあるしのう」

 3人ともあの話を聞いてスグに行動に移すとは・・・・

 自分達の思考がここまで類似したものになるとは考え物だ、とうか嫌だ

 しかも直接の原因を作ったのが小夜の奴だとしても、自分も同じ様なことをしているので何も言えない

 凛は自分達の考えの浅はかさに頭痛を覚える

「・・・確かにこんな事一純の前では言えないな。・・・しかしそれが、一純に付きまとうのには関係ないはずだ」

 そう言われ西明寺はニヤリと唇の端を吊り上げる

「そこからは、おぬしの思いつかぬ残り2割の話じゃ」

 そういうと西明寺は、その場でくるりと回ったかと思うと、黒い煙のようになり、塀の上まで移動し元に戻る

「おぬし等3人が霊樹に願った事は、言い方は三者三様じゃったが内容は『一純を自分だけの物にしたい』というものじゃった。流石に三人の願いを同時に叶えるのはワシでも不可能じゃ、だからワシは考えた、ならば3人とも願いを諦めさせるしかないとな。そしてそれは、一純とかいう奴がいなければ簡単に目的を達成できるとな」

 その言葉を聞いた凛は、瞬く間に西明寺の立っている塀に飛び乗り、その喉元に切っ先を突き立てる

「せっかちな奴じゃのう」

 喉元に刀が突き立てられているのに、西明寺は涼しい顔で口元に笑みを浮かべている

「一純に危害を加えるのなら容赦はしない、このまま喉元をかき切ってやるぞ」

 凛の目には躊躇は無かった

 その言葉通り、ためらい無くその刃を引くだろう

「話は最後まで聞け、それに一純の命を取るだけならとっくの昔にやってるわ」

「・・・・確かにな」

 その言葉に納得したのか、凛は刀を喉元から離す

「うむ、物分りが良いのはいいことじゃ。・・・まあ、確かに初めは一純の命を奪うつもりじゃった、だがいざ部屋に侵入して奴の顔をみたら・・・・・・」

 そう言う西明寺の顔が見る間に赤くなっていく

「・・・・何故かわしには一純を殺す事は出来なかった・・・・・・呪い殺そうにも集中できんし、首をしめて殺そうと奴に触れると力が入らぬ・・・・・・このままでは目的を果たす事が出来ぬ・・・・・・・そこでわしは思いついたのじゃ!!」

 西明寺はそう叫ぶと、力強く握りこぶしを振り上げる

 凛は次に出てくる言葉に大体の予想がついていた

 ていうか分からない奴がいたるとしたら、おそらく一純くらいのものだろう

「三人を諦めさせるには、一純を第三者、つまりわしのものにするしかないと!!

 ビュン!!

 凛によって思いっきり刀が振り下ろされる

 西明寺はそれを紙一重で避ける

 そしてガツンと刀が塀に叩きつけられる

 刀を振り下ろした凛の目は、さっきよりもさらに殺気立っていた

「やはり貴様はここで叩き切る!!」

 危ない目をして凛が刀を振り回す

 人がいたら必ず通報されてしまう光景だが、幸か不幸か周囲に人気は無い

「まあ落ち着け小娘、おぬしではワシが逆立ちしていたとしても絶対に勝てん」

 一応神様だし

「しかし、だからと言ってこのまま力で人間をを負かしても神として心象が悪い・・・・・そこでだが」

 ザク

 そう言ってる西明寺の脳天に刀が刺さる

 どうやら凛は話を聞かずに刀を振り回していたらしい

 しかし西明寺は死ぬ気配は無く、むしろ話を聞かれてなかった事に憤慨していた

 そして一瞬黒い煙のようになり刀から離れる

「・・・・話はちゃんと聞け。じゃがこれで分かったじゃろう?おぬしではわしは殺せぬわ」

 ブス

 今度は西明寺の腹部に刀が刺さる

 いい加減頭に来たのか、西明寺の眉間に血管が浮かぶ

「い・い・か・げ・ん・に・せんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

 そう叫んだ西明寺の掌に五芒星が浮かんだ瞬間、凛の足元から大爆発が起きて、そのままきりもみして吹っ飛ぶ

 そして結構な滞空時間の後、べチャっと凛が地面に落下する

 しかしこっちも何事も無かったかのようにムクリと起き上がる

「む?私は今何をしていたのだ?」

 凛は黒焦げになりながらも頭に?を浮かべる

 どうやらさっきは完璧に暴走してたらしい

 西明寺は呆れながらも話を続ける

「早い話、平等な条件で決着をつけようというわけじゃ」

 西明寺は、我に返った凛にそう告げる

「・・・・具体的に何で決着をつけるつもりだ?」

 一瞬で状況を理解した凛は西明寺に尋ねる

 そう言われた西明寺の口元がニヤリと上がる

「それは・・・・・・コイツでじゃ!!」

 そう言って西明寺は、何処からとも無くあるものを取り出した

 そのあるものとは・・・・

「一升瓶?ということは・・・」

 凛の顔に珍しく不安の色が浮かぶ

「うむ、察しの通り、飲み比べで勝負じゃ!!」

 一升瓶を抱え西明寺は高らかに叫ぶ

「あ、ちなみに未成年じゃからというのは無しじゃぞ、わしに人間の法律なぞ関係ないしのう、それに互いに飲酒は初めてじゃろうからこれが一番平等じゃ・・・・・・一純との酒盛りの予行練習にもなるしのう」

 どうやら最後に出たのが本当の目的らしい

 一方、凛は言おうと思ってたことを先に潰されてしまったので反論出来ずにいた

(・・・・生徒の見本であるべき生徒会長が飲酒など・・・・・しかし、ここで逃げては一純を奪われてしまう・・・・・・・・・ええい!!仕方がない!!!)

 こちらの方も覚悟が出来たらしい

「・・・わかった受けて立とう」

「うむ、その意気や良し。では同時に一杯ずつ杯を交わしていき、先に酔いつぶれた方が負けじゃ、負けた方は大人しく引き下がる・・・・・・どうじゃ?」

 そういって西明寺は凛に杯を手渡す

「異議は無い」

 凛も腹をくくったらしく決意の眼差しで杯を受け取る

 そして最初の一杯が互いに注がれる

「では同時に飲むぞ?」

 凛はコクリ頷くと、一瞬躊躇したあと意を決して杯にその口をつけた





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「急ぎなさい麻紀音!!早くしないと兄さんが危ないわよ!!!」

 そう携帯電話に叫びながら小夜が夜の街を疾走する

 その顔には焦りと不安と怒りが混じっている

「あたしとした事が、こんな札に騙されるなんて・・・・・あぁ!!腹立たしい!!!!」

「そう怒るなよ小夜」

 小夜の言葉に札が反応して答えを返す

「五月蝿い!!!!」

 小夜の逆鱗に触れ、そのまま札はビリビリと破かれてしまう

 夕飯の後、凛に言われたとおり出かけようと、部屋に戻った兄さんに声を掛けに行ったら、返事は返ってくるものの何か様子がおかしい

 案の定天井裏から覗いてみると、この札一枚残して兄さんは消えていた

 そうして今に至るわけである

「誰の仕業か知らないけれど、こんなふざけた事をしてくれた御礼はたっっっっっっっっっっっぷりとしてもらうわ、そりゃもうこの世に生まれた事を後悔するくらいに」

「・・・・・・・・・・その意見には賛成」

 いつの間にか麻紀音が上空を飛びながら小夜に追走している

「・・・あんた、一言くらい言ってから来なさいよ、ビックリするじゃない」

「・・・・・・・さっきからマスターの反応がはっきりしない、消えたり現れたりフランスに現れたり一気に2178369箇所から反応が現れたり」

 小夜の言葉を華麗にスルーしながら麻紀音が話す

「無視するんじゃないわよ・・・・・・まぁ、こっちも同じようなものよ、とにかく兄さんが危ないわ!!手がかりは今のところ凛の言ってた神社だけだし・・・・もう、とにかく急ぐわよ!!」

 そう言って走り出しそうとする小夜の肩を、飛んでいる麻紀音がガシッといきなり掴む

「ちょ、ちょっと何するのよ!?」

「・・・・・・・前方に見知った反応がある」

 そう言われて目を凝らしてみると、確かに前の方に誰かが居る

 しかもうつ伏せ大の字の状態でぶっ倒れている

 麻紀音は小夜をぶら下げた状態で倒れてる人に近づいていく

 少し近づくと、それが誰なのかハッキリと確認できる

 しかも傍らにでっかい刀が落ちてるので間違いない

「何こんな所で寝てるのよ凛、とっとと起きて兄さんを取り返すわよ」

 そう言いながら小夜は足で凛をひっくり返す

 すると

「うわ・・・・・・・」

「・・・・・・・無残」

 二人同時にあっけに取られる

 ひっくり返された凛は酷い状態だった

 白目を剥いて顔を真っ赤にしながら気絶してた

 しかも滅茶苦茶酒臭い

 よく見れば近くの電柱の下に大量の酒の瓶やらが入った袋がある

「・・・・・・・・日本酒、ビール、チューハイ、焼酎、ジン、ウォッカ、老酒、ワイン、医療用アルコール・・・・・・・・・・・・・通常の人間なら致死量に相当」

 飲んではいけない物まで混ざってるんですけど

「このくらいで死ぬんだったら苦労しないわよ・・・・・ほら!!とっとと起きなさい!!!」

 そういいながら凛の頬にバシバシと往復ビンタを喰らわせる小夜

 ていうか叩いてる手が見えない

 問答無用だ

「あ・・・・・う・・・・・・?」

 音速のビンタを喰らい続け、ようやく意識をとりもどす凛

「目が覚めた?一体何があったの?」

 小夜は未だに麻紀音に吊るされたまま凛に尋ねる

「越前クラゲと・・・・・・・・ペリー提督が・・・・・・アンコールワットで闇鍋・・・・・」

「麻紀音」

「・・・・・・・おけ」

 麻紀音は小夜を降ろすと、凛の口に自分の人差し指を突っ込む

 するとボンヤリしていた凛の顔が焦点を取り戻し、赤い顔が更に赤くなっていく

「か、か、か、辛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?ていうかそれを通り越して痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 麻紀音の人差し指から口を離すと、そのまま地面をのた打ち回る凛

 普段の凛からは考えられない苦しみようだ

「・・・・・・・・・・・・・通常のハバネロの3倍の辛さのレッドサビナ種のハバネロの成分を抽出した特性の気付け薬・・・・・・・・・効果は良好」

「あたしも前喰らったけど、これで目が覚めないのは死人くらいのものよ」

 下手すればこれを喰らって死人になるが

「あ・・・・うう・・・・?・・・・小夜に・・・・・麻紀音か・・・・?」

 意識を取り戻すも、酒+ハバネロのショックでグロッキーの凛

「私はここで限界みたいだ・・・・・・・元凶は・・・・・学校裏の神社にいる・・・・・すまないが・・・・・・一純を・・・・・・・」

 そういって凛は再び意識を失った

 その頬には一すじの涙が伝っていた

 結局何も出来なかった自分の不甲斐なさを悔やみつつ流した涙だった

「・・・・・・急ぐわよ麻紀音」

「・・・・・・了解」

 凛の意志を受け取り、2人は一純の待つ神社へと急ぐのだった




               ・

               ・

               ・


 そして時間は現在に戻る

 場所は学校裏の神社

 空は漆黒に染まり、見上げれば、黄金色に輝く満月が煌々と地上を照らす

 その月明かりに照らされ、地に3つの影が浮かぶ

 不思議な事に、その内の1人の足は地に着いておらず、数メートル宙に浮いている

「一純の妹に機械人形、あの小娘の有り様をもっても引かぬとは、勇猛なのか愚かなのか・・・」

 浮いている影が呆れたように溜息を吐く

 地に立つ2つの影の内の1人、小夜がキッとその影を睨み付ける

「敵討ちって言うのは柄じゃないんだけどね、凛にあんな風に言われちゃったら、こっちも黙ってる訳にはいかないじゃない」

 小夜はそう言うと懐から銃を取り出す

 その銃は、いつも持っている通常の拳銃とは違い、闇のように黒く鈍重な外見の巨大な物だ

 こんな大きな銃を撃ったら、小夜のような体躯では腕が外れてしまうだろう

「相手が人間じゃないんなら、こっちも徹底的にやらせてもらうわ」

 小夜はそのまま、銃口を宙に浮かぶ影に向ける

「・・・・・待て妹、・・・・・・・対象の背後に別の熱源反応・・・・・・・これは・・・!!」

 2人の内のもう片方、麻紀音が何時もの淡々とした言葉に驚愕の色を浮かべながら、小夜を静止させる

 その様子を見た影がニヤリと笑みを浮かべる

「本当ならこの後、2人でゆっくり酒でも飲もうかと思うてたんじゃが、先におぬし等を黙らせておくもの、また丁度良いものだ」

 影はそう言うとパチンと指を鳴らす

 そうすると背後の空間がユラリと揺らいだかと思ったら、別の影が現れる

「な・・・・・!!!」

 その現れた影の正体を知った小夜は驚愕する

「兄さん!?」

 そこに現れたのは簀巻きにされた一純その人だった






 to be continued・・・・・・




 長かった長恨歌編、次回でラストです

 あとここで緊急告知です

 このレストロ☆アルモニコをここまで読んでくださってるかつ絵を描ける人にお願いです


 あなたがこの小説を読んできて抱いた、キャラクターのイメージを描いてもらえませんか?

 本来はイラスト依頼で書くべき事なのですが、私がこのキャラはこんな感じでと指定して描いていただくのではなく、本編を読み続けていただいたなかで、どのようなキャラクター像を思い浮かべながら読んでいるのかをそのまま描いて欲しいのです

 私の中の小夜はこうだ!!凛はこうだ!!!麻紀音はこうじゃ!!!!といった風に挿絵がないとキャラの外観は千差万別になると思うのです

 こんな依頼を受けてくださる仏のような方がいらっしゃれば、メッセージを下さい

 受けてくださる方が出現したらイラスト依頼に正式に出そうと考えてます

 それではよろしくお願いします

               かしこ 






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