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レストロ☆アルモニコ
作:烏丸



第19夜:女色々長恨歌 6番


 空は漆黒に染まり、見上げれば、黄金色に輝く満月が煌々と地上を照らす

 その月明かりに照らされ、地に3つの影が浮かぶ

 不思議な事に、その内の1人の足は地に着いておらず、数メートル宙に浮いている

「一純の妹に機械人形、あの小娘の有り様をもっても引かぬとは、勇猛なのか愚かなのか・・・」

 浮いている影が呆れたように溜息を吐く

 地に立つ2つの影の内の1人、小夜がキッとその影を睨み付ける

「敵討ちって言うのは柄じゃないんだけどね、凛にあんな風に言われちゃったら、こっちも黙ってる訳にはいかないじゃない」

 小夜はそう言うと懐から銃を取り出す

 その銃は、いつも持っている通常の拳銃とは違い、闇のように黒く鈍重な外見の巨大な物だ

 こんな大きな銃を撃ったら、小夜のような体躯では腕が外れてしまうだろう

「相手が人間じゃないんなら、こっちも徹底的にやらせてもらうわ」

 小夜はそのまま、銃口を宙に浮かぶ影に向ける

「・・・・・待て妹、・・・・・・・対象の背後に別の熱源反応・・・・・・・これは・・・!!」

 2人の内のもう片方、麻紀音が何時もの淡々とした言葉に驚愕の色を浮かべながら、小夜を静止させる

 その様子を見た影がニヤリと笑みを浮かべる

「本当ならこの後、2人でゆっくり酒でも飲もうかと思うてたんじゃが、先におぬし等を黙らせておくもの、また丁度良いものだ」

 影はそう言うとパチンと指を鳴らす

 そうすると背後の空間がユラリと揺らいだかと思ったら、別の影が現れる

「な・・・・・!!!」

 その現れた影の正体を知った小夜は驚愕する

「兄さん!?」

 そこに現れたのは簀巻きにされた一純その人だった







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 さかのぼる事、二時間程前

 凛は、小夜と共に一純からケーキを奢ってもらい(当然、麻紀音の店ではない)浮かれ気分で帰宅していた

 口の中には、先程食べた紅芋のモンブランの余韻がまだ残っている

 小夜も公共の場では理性的なので、いざこざも無く、久しぶりにとても穏やかな時間を過ごしたような気分だ

 まったく、小夜の奴も常にあんな状態でいてくれたらありがたいものだ

 そして早々に兄離れしてもらいたいものだ

 そんな事を考えていると、やがて凛は自宅の前に到着する

 そこは、類家グループの一人娘が住んでいるとは思えないような質素な家だった

 しいて言えば、一階建ての純和風の庭付きだという事くらいか

 しかもこの家に住んでいるのは凛ただ一人だけである

 両親はまた別の家で暮らしている

 そこには別段後ろめたい理由があるわけではない

凛が高校に上がる際に、何を思ったか社会勉強を兼ねて一人暮らしをしたいと希望した為、両親が高校に近いこの家を急遽、土地ごと買い取ったのだ

 両親は質素な生活を尊ぶべしとこの物件を選んだようだが、土地ごと買い占めている時点で質素とはいえないような気がする

 それでもこの家は凛の気質に合っているらしく、悠々自適に毎日の生活を送っている

 凛はポケットから鍵を取り出すと、少々立て付けの悪い玄関の錠を開く

「只今」

 凛は誰もいない自宅に帰宅の旨を告げる

 少しだけ寂しく感じるものの、日々の習慣として挨拶は欠かすことが無い

 こんな時に、家に待っていてくれて「お帰り」と言ってくれる存在が恋しい

 それが一純であってくれれば僥倖だ

(私が仕事から帰ってくると、エプロンをした一純が夕飯の支度をしてくれて『お帰り凛、夕飯にするか?それとも風呂?』なんて言って迎えてくれる・・・・・・・・・・・ふふふふふ・・・・いずれは叶えてみせよう、必ず)

 凛は妄想に浸りながら、顎に手を当て一人にやける

どうやら一純が主夫になるのは、凛の中では決定事項になっているらしい

 ていうか普通逆だろう

 まあ、凛としても互いの立場や特技を考えた上での結論なのだろう

(・・・ま、とりあえずは自分で夕飯の支度をしなければな)

 妄想だけでは夕飯は出てこない

 凛は靴を脱ぐと、夕飯の準備をするべく台所へ足を向けようとする

 だが、ふと自分の鞄を見て足を止める

(そうだ、忘れる前にこの資料をリストに加えておこうか)

 そんなに手間になる作業でもない

 夕飯の支度をするまえにサッサと作業を終わらせてしまおう

 そう思い立った凛は身を翻し、その足で自室へと向かうと入り口の襖を開く

 そして部屋に入ると、本棚から一冊のファイルを取り出す

 タイトルには「お前らの事は全てお見通しだ」と書かれている

 なんだか高校以外の人間のデータまで入っている気がする

 そのファイルを机の上に置き、自分の鞄から学校で印刷した資料を取り出す

 間違って西明寺のクラス全員分の資料を印刷してしまったため、結構な量だ

 やはり紙の無駄だったと、今更ながら後悔する

 そしてその資料の中から、西明寺の資料を探すため紙をめくる

「サッサと終わらせて夕飯の準備をしなければな・・・・・・・・・・・む?」

 資料をめくる凛の手が止まる

 どうやら、お目当ての資料が見つかったというわけでもないようだ

 凛の目に映るのは、一枚の白紙のA4用紙

 だが、その紙が白紙であるというのは、少々奇妙な事なのだ

 クラスの名簿順に印刷されたはずの紙にある白紙

 しかも、そこに書かれているはずである人間が問題だった

「・・・何故奴の・・・・・西明寺九十九の資料だけ無くなっているのだ!!」

 不可解な出来事に、凛の声が荒がる

 学校を出る前に確認した時には確かに存在した

 それに白紙の紙なんて一枚も無かったハズだ

 しかし其処には、どう見ても白紙にしか見えない紙が確かに存在する

 他の生徒の資料には異常はない

 西明寺の資料だけがスッポリと抜け落ちているのだ

 凛の中に、昼まで存在していた西明寺への不信感が再び湧き上がる

「・・・・・どうやら夕飯の時間は少し遅くなりそうだ」

 そう言うと凛は携帯を取り出すと、どこかへ電話をかけ始める

「・・・・・あぁ、小夜か?・・・・まあ、そう言うな・・・・・うむ、今回は少々真面目な話だ・・・・・今から30分後私からの連絡が無かった場合、学校の裏にある神社に麻紀音と一緒に来てくれないか?・・・・・うむ、もしかしたら取り越し苦労なのかもしれないが、一純の身に関る事だからな・・・・・・ああ、時間が無いから詳しい説明は後でな?・・・・・すまない、それじゃあ頼んだ」

 言い終えると凛は携帯を切る

 そして凛は壁に掛けてあった一振りの大きな太刀に手をかける

「・・・・・本当に、杞憂であれば良いのだが」

 凛はポツリとそう呟くと、足早に家を後にした





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 その頃、一純はと言うと

「・・・先輩?先輩は知らないだろうけど、俺こうやって拉致られるのって二回目なんですよ?」

 簀巻きにされ、小さな少女に担がれた状態で一純は言う

「知るかそんな事・・・・・それにしてもお主はこの状況で、よくもまあ冷静に居れるもんじゃなぁ」

 一純を担いでる張本人である西明寺が呆れたように呟く

 しかも西明寺は、その細い腕で一純を担ぎ上げるに留まらず、結構なスピードで屋根伝いに疾走している

「普通、わしの正体が何なのか問い詰めたり、この状況に慌てふためくものじゃろうに」

 まあ普通の人だったらそう言うだろう

 だが、高倉一純という人間は、普通の人間の精神力じゃあやってられないような面々に囲まれてるので

「まあ、世の中色んなことがありますからね。先輩が何であってもそんなに驚きませんよ」

 と、サラリと真顔で答えてしまう

「・・・でも確かに先輩の正体とかは兎も角、一体なんで俺が拉致られてるのかは気になるんですけど」

 そう言われ、西明寺はううむと唸る

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・そういえば深く考えておらんかった」

 ・・・・・・・・今回も衝動的犯行ですか?

 西明寺は殆ど飛ぶように走りながらも頭を捻らせる

 どうやら、今後の一純に対する処遇を考えているらしい

 真面目な顔をしてるかと思ったら、今度はニヤリと怪しげな笑みを浮かべたりと、一人で百面相している

 すると突然、顔が火でも点いたように赤くなった

「・・・・・いや・・・・流石にそれはまだ早い・・・・じゃがしかし・・・・・・・ううむ・・・・・」

 しかも、なにか小声で呟いている

「先輩?」

 一純は自分の世界に行ってしまった西明寺をサルベージしようと声をかけてみる

 不意打ちのように掛けられた声に、西明寺の肩がビクンと驚いたように跳ねる

「!な、なんじゃ!!い、いきなり声をかけるな馬鹿者!!!」

 真っ赤な顔をしながら西明寺が、担いでいる一純の頬をお仕置きとばかりに引っ張る

 だが手加減してあるのか、頬は伸びるだけで痛くは無い

「ひゅいまひぇんひぇんぱい」

 すいません先輩と言ってるのだが、頬を引っ張られていては正しく発音できるはずも無い

「ふ、ふん!下僕は下僕らしく、黙ってわしについて来ればよいのだ!!余計な詮索は無用じゃ!!」

 そう言いながら西明寺は一純の頬から手を離す

 まあ、ついてくるって言うか拉致られてるんだけど

「・・・・それじゃあ、やっぱり先輩の正体だけでも教えてくれませんか?」

 詮索無用とは言ってるけど一応聞いておこう

 そう言われた西明寺は、目を輝かせたかと思うと走るのを止め一純を地面に降ろす

「ふん!聞いて驚くでないぞ!!わしこそは、この町に1000年以上前からそびえる霊樹から生まれし九十九神なのじゃ!!」

 先輩は偉そうにそう言うと、無い胸を張り踏ん反り返る

 ・・・詮索無用じゃなかったのだろうか?

 ていうか神様だったんだ・・・

 ・・・・・まあ確かに威厳があるといえばあるような気がしないでもない 

「そのわしの下僕となれる事を喜ぶが良い!!宝くじで1億当てるより凄いことじゃぞ!!」

 ・・・・・なら普通に1億欲しいです

 それに神様なら下僕とかじゃなく眷属とかでしょう・・・・・多分

「むう、そうなのか?ならお主はわしの眷属じゃ!!」

 西明寺はアッサリと下僕から眷属へのクラスチェンジを了承する

 ・・・・・って、よくよく考えたら呼び方が変わったところで別に何にも無いんだけど

 すると、西明寺は何か閃いたようにポンと相槌を打つ

「そうじゃ!お主を眷属にするのなら、やはり契約の儀みたいな事をせねばのう!!」

 明るい声で先輩はそう言い放つ

「・・・儀って、やっぱり儀式の事ですよね」

 不安そうな声で一純は返す

「何、儀式といっても互いに杯を酌み交わすだけじゃ。用は酒盛りじゃな」

 ・・・・俺、未成年なんだけどなぁ

 しかし神様に人間の世界の法律なんてどうでもいいだろうしな・・・・

 結局無視されて無理やり飲ませられるのだろう

 なんて考えていたら、再び西明寺に担ぎ上げられる

 その顔には、何か企む時のような妖しい笑みが浮かんでいる

 実際に何か企んでる顔を見た事は無いが、そう思える位妖しい笑みだ

「そうと決まったら善は急げじゃ、早く神社へ戻らねばな」

 そう言い走り出しかけた西明寺の足がピタリと止まる

 すると後ろの方から大きな排気音が聞こえてくる

 この音には聞き覚えがある

 しかも今と同じようなシチュエーションで

 そして排気音が自分達の下で止まった時、先輩がゆっくりと口を開いた

「・・・・・思ったよりも対応が早いのう小娘」

 そしてその目線を屋根の下の地面に向ける

 そこには黄色いべスパにまたがり、その体には不釣合いな程大きな太刀を携える少女が一人、真っ直ぐにこちらを見上げてるのだった







to be continued・・・・・・・


 本当はこの回で長恨歌編は終わらせる予定だったんですが、思っていた以上に長くなりそうです

 その都合で、切りの良いところで終わらすため前回よりも少し短くなりました

 あと短くて1話、長くても3話で長恨歌編は終わります

 この長恨歌編は難産なので、次回の更新まで気長にお待ち下さいw






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