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 ・・・・・・・この長恨歌編は難産です





レストロ☆アルモニコ
作:烏丸



第16話:女色々長恨歌 3番


「うりゃ」

 2−Cの担任、瀬尾の手からチョークが放物線を描きながら飛ぶ

 ガスッ

「あう!?」

 しかしそのチョークは真っ直ぐに飛ばず、最前列右端の女子の額に直撃する

「あらら、また外れたわね?」

 瀬尾は不思議そうに首を傾げる

「先生、コントロールが悪いのにチョークなんか投げないで下さい」

「そうです!まともに命中した試しなんてないんですから!」

 生徒達から苦情の声が湧く

「いいじゃない、教師の特権よ?」

 瀬尾はサラリと、生徒達の苦情を右から左へ受け流す

「そんな事より、一純君は何で朝っぱらから眠りこけてるの?」

 そう言いながら、瀬尾は一純目掛けてチョークを投げ続ける

「痛っ!」

「あだっ!」

「うばらっ!?」

「あうっ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!?目が!?目がぁぁぁぁぁぁぁ」

 しかしその被害は、常に周囲に撒き散らされる

 ちなみに最後の絶叫は佐倉の声だ

 コントロールは皆無だが、スピードはあるので、その破壊力は計り知れない

 狙われた本人以外の被害は甚大だ

「それはですね」

 目にチョークが突き刺さった状態で、佐倉が答える

 軽くホラーな光景だ

「彼が眠いからですよ」

「・・・・・・・・・」

 瀬尾は佐倉の後ろの生徒に目配せする

 生徒の方もコクリと頷く

 そして何処からか取り出した広辞苑で、佐倉の後頭部に一撃加える

「のぐふぁっ!?」

 その衝撃で目に刺さったチョークがポロリと落ちる

 そして佐倉の意識もブラックアウトする

 気絶した佐倉の変わりに別の生徒が答える

「一純君教室に入った時から、目の下にパンダみたいなクマ作ってて、椅子に座った瞬間崩れるように寝ちゃいました」

 当の一純も電池の切れた玩具のように、ピクリとも動く気配は無い

「・・・・一純君も色々大変そうだしねぇ」

 担任として一純の身辺事情について知っている瀬尾は、眠りこけてる一純に同情の念を覚える

 そして教卓の中からペンと紙を取り出し何か書き始める

「仕方ないわね〜・・・・・・っと」

 そして懐から判子を取り出すと、ハァ〜っと息をかけてから、ポンと紙に押す

「これ一純君に貼り付けておいて〜」

 その紙を前の席の生徒に渡し、リレー方式に一純の席に渡していく

 そしてその紙は、ペタリと一純の後頭部に貼り付けられる

『安らかにしておいて by瀬尾』

 担任のお墨付きの居眠りだ

 傍から見たらパッと見いじめに見えないことも無い

 しかし本人はいたって真面目に、一純を気遣っての行動である

「それじゃあ、HRはここまでよ。後はよろしくね?」

 そう言いながら、教室を出て行く瀬尾女史

 そうして一純が眠ったまま授業が始まっていった・・・・
           
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「・・・・・ということがあったんだ」

「・・・・長い回想をありがとう佐倉」

 机に突っ伏したまま一純は返事する

 現在1時間目の休み時間

 一純は結局1時間目に来た教師によって、普通に起こされてしまったのだ

 瀬尾先生の免罪符はこれっぽっちも効力を発揮しなかったらしい

「それにしても、いずみんがこんなに眠そうなのも初めてかもなぁ〜」

 そりゃこっちも、金縛りにあうまでは規則正しい生活をしていたわけで、自発的に睡眠時間を削るなんて愚かしい事は一切なかったからな

 だがここで金縛りにあってるなんて言うと、まためんどくさい事になりそうだから言わずにおこう

 それよりも知りたい事もあるしな

「・・・・・まあな、ちょっと寝不足でな・・・・・・・それより教えて欲しい事があるんだが」

 そう言って一純は顔を上げる

 すると、なぜか佐倉が涙にむせび泣いていた

 正直かなり不気味だ

「うう・・・・・は、初めて一純に頼りにされた・・・・・・一純が俺を必要としてくれるなんて、こんなに嬉しい事はない」

 なんか某ニュータイプみたいな事を言ってる

「そんな大袈裟な・・・・・」

 一純は佐倉の感激ぶりに少々怯む

「・・・それで、聞きたい事ってなんだ?じゃんじゃん答えるぞ!!」

 佐倉が涙を拭いながらサムズアップする

 ・・・・・・やっぱり御崎あたりに相談すればよかったかも

「ああ・・・・この学校にな?小さくて釣り目のツインテールの女子っていたか?」

 一純は特徴だけ簡潔に述べる

 ぶっちゃけこれだけで分かるとも思えないが・・・・・・

「ああ、いるぞ」

 即答した

 佐倉は意外そうな顔で答える

「いずみんが言ってるのは多分、3年の西明寺さいみょうじ先輩の事だろ、結構有名な人だぞ?」

 そういわれても、調理部以外では1、3年との付き合いがない一純にとってはピンとこない

「・・・・・・知らないな・・・・そんなに有名なのか?」

「そんなに有名なんだよ、これを機会に覚えておいて損は無いぞ〜、よ〜く聞いとけ?本名は西明寺さいみょうじ 九十九つくも、クラスは3−A、部活は無し、学校の裏にある神社の1人娘、そしてなにより、小さな体格に似合わぬ強気で物怖じしない性格がその知名度に大きく貢献してるな」

 どうやら本当にそこそこ有名な人らしい

「それで西明寺先輩がどうかしたのか?惚れたか?」

 このトンチンカンはどこを曲解してそういう結論に至ったんだろう

「アホ」

 そういうと一純は再び机に突っ伏す

 だが流石に、教えてもらってこの態度は、こっちとしても良い気分ではない

「・・・・・・・・・すまんな、勉強になった」

 一純は、一応ポツリと佐倉に礼を言った

「・・・・か、か、感激じゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 そう絶叫しながら佐倉は教室から飛び出していった

 よほど一純にないがしろにされていたのだろう

(・・・・・俺そんなに酷い扱いしてたのか?)

 ・・・・・・・・・まぁ、それはともかく、これで一応あの人の事が分かった

(やっぱり今朝の事は凛の気の性だな・・・・・知らない先輩に恨みを買うような事をした覚えも無いし、凛が覚えて無いのもたまたまだろう)

 総じて言えば「今朝の事は別にどうでもいっか」というところだ

(凛にも後でそう言っておこう・・・)

 そうして一純は再び眠りの世界に旅立っていった






               *





「・・・・・・・・・おかしい」

 昼休み

 凛は生徒会室でパソコンとにらめっこしていた

 その顔には困惑の色が浮かんでいる

(あの女・・・・・他の生徒にはかなり有名な生徒ようだが・・・・・・・それだけ有名なら私が知らない訳が無い・・・・・それに学校裏の神社に娘がいるなど初耳だぞ!?)

 学校裏の神社といえば、先日の丑の刻参りが思い出されるが関係はあるまい

 その指がすばやくキーボードを叩く

 そして画面に映し出されたのは、学校のデータベース

 全生徒と職員のデータが入力されている

 プライバシーが何たら言ってるよその学校とは違うのだよ

「3−Aの・・・・西明寺・・・・・・・むぅ、確かにあるな・・・・」

 そこには顔写真付きで西明寺九十九のパーソナルデータが載っていた

 凛は後ろの本棚に視線を移す

 そしてその中から、前年の修学旅行のアルバムを取る

「・・・・・・集合写真にもちゃんと写ってるな」

 そこには2−Aの集合写真にちゃんと写る西明寺の姿があった

 やはり自分の思い違いだったのだろうか・・・・

(回りの人間に聞いても、一純とは欠片も接点が見つからないしな・・・・・・・・やはり今朝の事は一純の言ったとおり、たまたまあの場所に居合わせただけなのかもな・・・・・・)

「しかしそうなると、家にある『個人用全生徒名簿』からも情報が抜けてる可能性があるな・・・・」

 また犯罪チックなものを所持してるお方だ

「パソコンから印刷して持って帰るとしよう」

 そういうと凛は印刷の表示をクリックする

 すると瞬く間に、生徒会室備え付けのプリンターから印刷された資料が出てくる

 だが、操作を誤ったらしく3−A全員の分まで印刷されてしまった

「・・・・・むぅ、資源を無駄に使ってしまった・・・・・・・・・仕方ない、一緒に持って帰るか」

 そして凛はパソコンの電源を落とし、1クラス40人分の資料を持って生徒会室を後にした






                 *





 その頃一純は・・・・・

「さあ、兄さん大人しく保健室に行きましょう!!」

 小夜にズルズルと引きずられ、保健室へと向かっていた

 昼食に誘いに来た小夜が、机に突っ伏してグッタリしてる(というか寝てる)一純を文字通り引きずって来たのだ

「・・・・・・さ、小夜さん?さっきから言ってるように、ただ眠いわけであって、別に具合が悪いわけじゃ・・・」

 引きずられながら何とか説明する一純

「甘いです!!そんなに眠いという事からして、兄さんにとってはおかしな事!!金縛りにあう位疲労が蓄積されているのなら体に異常が起きていても不思議ではありません!!とにかく、午後の授業は大人しく保健室で休んでて下さい!!」

 そこまで言われたら大人しくしてるしかない

 小夜も自分の体を心配して言ってくれてるんだ

「・・・・わかったからとりあえず普通に歩かせてくれ。引きずられるというのは肉体的にも精神的にもキツイ」

 しかも、もう少しで階段に差し掛かる

 あんな所を引きずられたら堪ったものではない

 全身削れてしまう

「わかりました、では大人しく保健室で休んでくださいね?」

 そういうと小夜は、階段に差し掛かるギリギリ手前で一純を立ち上がらせる

 間一髪、削られるのは免れたようだ

 まぁ、保健室はこの階段を下りた横なので、最悪スグに治療はできる

(そんな縁起でもない・・・・・・)

 そうして階段を降り始め、中腹辺りに差し掛かったその時

「の、退けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」

 何か背後から叫び声が聞こえた

 イヤ〜な予感がして背後を振り向く

 それがいけなかった

 声の通り避けておけば・・・・・・・ってそれも不味いのだが

 背後・・・・・・というか階段の上から、一純目掛けて誰かが一直線に落下して来る

 そして

 ガゴーンッ!!!!!!

 避ける間も無く、思い切り頭に頭突きをお見舞いされた

 そしてそのまま重力に引っ張られて、階段から落下する

 当然頭突きをしてきた人もそのまま落下する

 全てがスローモーションに感じる

(・・・・・こ、これはヤバイ!)

 一純は頭突きの直撃で遠のく意識の中、本能的に頭突きをしてきた誰かを庇うように自分の方へ引き寄せる

 そして、その人を抱きしめた状態のまま、背中から地面に叩きつけられる

 肺から空気が全て吐き出される

 そしてそのまま、背中に受けた激痛を感じる間も無く意識が遠くなっていく


 意識が無くなる直前、小夜の叫び声が聞こえた気もしたが、薄れる意識の中ではそれも定かではなかった




to be continued・・・・・・・・・・・・・・・・







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