再び、あさ。
「ん…むぅ……」
俺は自分の体に掛かる圧迫感から逃れる為に寝返りを打った。
腹の辺り、上も下も妙な感じがして目をうっすらと開けてみる。
「ぬぉ!!」
驚きすぎて、俺はまったく昨日の朝と同じコトを繰り返した。
びきっ。と固まり、慌てて逃げ出すと、勢い余ってベッドから落ちる。そしてやっぱり後頭部をしたたかに打ち付けて、痛みの余りに悶絶する。
「う…う…うわぁぁぁ!?ぬおっ!!」
毎朝こんなに頭を打ってたら、俺、今以上にバカになるんじゃない…?
「な、なんで!?」
ドッキンドッキンと心臓が踊り捲くり、あわよくば口から外に出ようとしている。とにかく落ち着こう、と立ち上がって胸に手を当て深呼吸。
よく見ると中内の手が、俺の寝ていた辺りをパタパタと叩いて何かを探していた。
もしかして、俺を探してるの?
「ん…」
しかし見つからなくて諦めたのか、微かに眉を顰めると手は引っ込み、中内は膝を抱えるように丸くなって眠っている。
「…………」
寝てる、よね?
俺は昨日と今のドキドキの違いを知りたくて、恐る恐る中内の寝顔に顔を寄せてみた。
一体ドコに行って来たのか知らないけれど、洋服のままベッドに転がっている。半開きに開いた口が、規則正しくスウスウと寝息をたてていた。
その無防備ともいえる姿に、俺の鼓動は落ち着きを取りもどし、ホッとする。
昨日の気を失うほどの高鳴りは消えているし、今までみたいに恐怖に竦む事も無い。
「…なんだ、大丈夫じゃん」
俺はそう呟いて、顔を引き掛けた。
すると、ふいに寝ていた筈の中内の口元がニヤリと歪み、気が付けば素早く伸ばされた腕に引き寄せられ、俺は再びベッドに逆戻り。
「おはようございます、室尾」
「あ……う…ね、寝てたんじゃ無いのかよ!?」
「寝てましたよ。でも、室尾の声で目が覚めました。大丈夫って云いましたよね?」
「!!」
「それって、昨日の答え?」
冷や汗がタラリと頬を流れ落ちる。
「そ…そんなの知らねぇ!とにかく放せ!昨日のとかって、全然、覚えてねぇし!」
「ふぅん?…ね、キスしていい?」
「ぎゃー!!ダメダメ!絶対ダメ、止めろ!!」
「どうしてですか?昨日はよかったのに…」
駄々っ子のように、口を少し尖らせて中内はそう呟いた。俺は、全身から溢れる冷や汗を止められない。
ダメだ、ココで認めてしまったら最後だ!!負けるな守!何が何でも知らぬ存ぜぬで押し通せー!!
「ば、バカ!!違う、違うぞ!アレはなんかの間違いだ!気の迷いだ!!だからダメ!ダメったらダメ!!」
「なんだ、ちゃんと覚えてるじゃないですか。まぁいいですケド。だったらもう一度、試しませんか?」
「い・や・だ!!あ、ちょ、バカ、どこ触ってんだ!待て、コラ!!ナニ朝から発情してんだよ!!わぁぁ放せー!変態!!」
俺はギャーギャーと喚き、中内の腕から逃れようと身を捩る。
何でこうなるんだよ!?
中内はとっても嬉しそうに、且つ、俺から見れば邪悪そのものでしかない笑みを浮かべて、頬や耳や首筋なんかにキスをしてくる。
「大切にしますよ」
「しなくていい!!しなくていいから、俺を放せ!いやだぁぁぁ!!」
「え、乱暴に扱われる方が好きですか?」
「はぁ!?ちっがーう!!何ソレ!?どおいう意味だコラ!!あ、バカバカバカ!!ヤメロってば!!」
冗談じゃネェェ!!流されて堪るか!俺の人生、そう簡単に手放さないよ!?頑張っちゃうよ、俺!
Tシャツに進入してくる中内の手を止めながら、俺は全力で抵抗した。そりゃもう必死で
すよ?
その甲斐もあって、俺の悲鳴に麻広先輩と香川がすっ飛んでくる。
「コラ!宏二!!いくら春だからって、朝からうるさいよ!?」
「おーい、守、無事かぁ?」
「たすけてぇぇぇ!!」
こうして俺の災難はまだまだ果てなく続く。
もうイヤ、こんな生活。元の生活に戻りたいぃ〜…。
ちくしょー!!何で俺ばっかりこんな目に遭うんだっ!
やっぱり俺、絶対死んだら神様に文句を言ってやるっ。
今だって言うケドね、絶対、絶対、全力で、耳元で、力いっぱいこう叫んでやる。
神様のばかぁぁぁぁ!!
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