腹グロ王子と子羊ちゃんsideM 3(10/11)PDFで表示縦書き表示RDF


腹グロ王子と子羊ちゃんsideM 3
作:狐狸川ゆうら



よなか。


 急に沸きあがった、とてつもない変な考えに目を白黒させる。
 ど、どうしよう。
 俺、頭がおかしくなっちゃたのかな!?


 だって、だって、いま中内のコト…カッコイイとか思っちゃてるよ、俺。
 風呂上りの中内見て、なんでこんなにドキドキしなきゃいけないんだ?


「どうしたんですか?」

 ちょい、と顎を持たれて上を向かされる。
 湯上りでほんのりピンク色の頬とか、唇とか、意識しないようにすればするほど、見ちまう。とてもじゃ無いけど目なんかマトモに見られない!!
 その上、昨日から今日にかけて中内に色々された事や、言われた事が怒涛のように押し寄せて来て、そりゃもう身悶えするほど恥ずかしい。

「うっ……」

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバーイ!!だめ、いま顔見られたら……いやぁぁぁ!何されるか分かったモンじゃ無いってば!!どうにか逃げようと身を捩るが、それを許さない中内の腕。
 俯いて隠しても、それを追って中内の顔が近付く。

 イヤだって!見るな!!バレちゃうだろうがー!!

「ダメ!見るなって!!」
「ナゼ?顔を見なければ話せないでしょう?」
「だっ…!!」

 文句を言おうと迂闊に見上げた先に待っていたものは…ハイ、もう皆さんお分かりですね?そうです、もうそのまんまです。

 何も言えず、完全に言葉に詰まってしまう。
 だって中内の楽しそうに細められた視線にしっかりと捕らえられ、その黒い瞳から目が離せない。
 目が話すなんて、おかしいと思うだろ?俺もそう思う。だけど、中内の目はソファの時同様、明確に言葉を俺に伝えて来た。

『捕まえた』と。

 何で、俺なんだよ。
 他にも一杯キレイなやカワイイ娘がいるじゃないか。それに、俺だってそうだけど中内は違うんだろ?男は対象外なんだろ?


なのに、何で俺?


「……変だよ、こんなの。なんで、俺なんだよ…!」

 あ、だめ、泣く、泣いちゃう。
 喉の奥がギュッと閉まって、鼻の奥が痛い。体が小刻みに震えて、目にはこみ上げた涙が溜まる。

「ワケわかんねぇー…どうして、俺?」

 もう俺の中はメチャクチャで、辻褄とかそんなのとか、とにかく色々わかんなくて、俺ってばもう、怒ってるのかも、苦しいのかもわからない。
 忙しなく瞬かれる目から、涙がスルリと零れ落ちる。

 そのうえ緊張の所為で、体の色んな場所を無数の針が歩き回るみたいな、とってもイヤな痛みが這い回って不快だ。

 挙句、クソ真面目な顔で答えた中内の言葉が理解出来ない。

「どうしてって…それは室尾だから」

 そんなんじゃ、わかんねぇって。

「意味不明」
「そうですか?俺は、十分な説明だと思いますけど」
「わかんねぇよ。そんな答え……ずりぃってば…!」
「ね…ところでまだ、俺のことが怖いですか?嫌いで逃げたいですか?…こうされるのとか、すっごくイヤ?」

 小さく音を立てて、おでこに唇が当る。瞼に、頬に鼻に耳に、次々と当っては場所を変えていく。

 触れては離れ、離れては触れる。

 何故だかソレってすっごく気持ちイイ。
 もっとして欲しいって思っちゃう、嫌なわけなんか、無い。

 でも!そんなコト、絶対口が裂けたって言えるかー!!

「答えて下さい。じゃなきゃこのまま、ずっと俺の腕の中に閉じ込めておきますよ?」
「…ぁう〜〜」

 そんなのはイヤだと思いながらも、中内が俺にキスをする度、体の中で作られる熱が頭の中を暖めてクラクラする。

 あぁもう!なんだか、このままだと脳ミソとか沸騰する!

 耳に聞こえる中内の規則正しい息遣い、一際その音が大きくなった。そして、唇がピタリと寄せられると、とても小さな声で囁かれた。

「……ね…もっと…色んなトコロ…キスして、イイ…?」
「……っ!!」

 ぎゃぁぁぁぁ!!

 俺だって今まで、兄ちゃんの友達とか自分の友達の持ってるAVとか見たことあったし、知識が全く無いわけじゃ無いし、アノ時のエロイ声とか聞いた事が無いわけじゃ無い。(実際の経験はないけど…)

 ケド、どうしたことか低く擦れた中内のその囁きが、どんなAVの声よりエロイと感じたんた。ゾクゾクっと全身に鳥肌が立つ。

 俺の頭ン中で、ヤカンの沸騰した時になる笛の音がピー!!と、とんでもない大音量で鳴り響いた。と、同時に意識は突然ブラックアウト。


 そう…俺は冗談じゃ無く、本当に自分の熱にのぼせて意識を失っのだ。全く情けなくって涙が出る。

 …………せめてもの救いは、のぼせて鼻血が出なかったってコトくらいカナ。



 俺が次に目が覚めたのはリビングのソファの上。

「!!」

 慌てて飛び起き、着衣の乱れの有無を反射的に確認する。大丈夫、昨日みたいな大事には到ってない。ホッと一息つくと、床に落ちている濡れたタオルに気が付いた。

 辺りを見渡すも、人の気配は無い。

「な、なかうち…?」

 恐る恐る名前を呼んで見ると、さっきの中内の顔と声がフラッシュバックして、途端に恥ずかしさで真っ赤になってしまう。
 傍に居てほしいケド…身の置き所が無くなるから居ないで欲しいなんて、気持ちはとっても複雑だ。

「あれ、守、宏二は?」

 リビングの扉が開く音と共に、香川が麻広先輩と肩を組む様に担いで入って来た。

「あ、香川!お帰り!!って、麻広先輩どーしたんですか!?」
「おチビちゃん、お前もこの体力バカに文句言ってやってくれ……」

 麻広先輩はぐったりと力の抜け切った顔を俺に向ける。香川に支えられ、何とか立っていますっていう体で、腰に手を当てて眉をしかめた。

「何だよ、孜。ヒドイ言いようだなぁ?体力には自信があるんだろ?」
「バッカ!ソレの適用は夜の大人の事情だ!しかも相手は普通の人間が前提!!」
「俺も一応、普通の人間なんだけど?」
「…笑えねぇよ。冗談は僕へのアノ仕打ちだけで十分だ。くそっ、お陰で足腰が立たねぇだろが!」
「ハハハ、軟弱者〜」
「うるせ!!彦根が異常なんだよ!」

 麻広先輩がキッと香川を睨みつけるも、香川はすっきり爽やかな笑顔でどこ吹く風だ。

「え…と、まぁ大丈夫みたいデスね」

 俺も香川に釣られて笑顔になる。しかし麻広先輩はどうにも納得がいかない様で、ブツブツと何事かを呟きながら苦虫を噛み潰した顔だ。
 香川は麻広先輩を俺の横へ座らせると、台所へ飲み物を取りに引っ込む。なんやかんや言っても、香川は面倒見がいい。

「僕、本当に大丈夫じゃないんだけど!ったく、さぁ〜…」
「一体どうしたんですか?」

 俺がそう話しかけると、パッと顔を明るくして待ってました!と麻広先輩が俺に向き直る。

「ほんと?聞いてくれるの?優しいなぁおチビちゃんは!!全くどっかの誰かと大違い!ソレがさソレがさぁ…ひぃっ!」
「それ以上喋ると、後でさっき以上のお仕置きが待ってるけど、イイ?」

 香川が水の500mlペットボトルを麻広先輩の首筋にペタンと当てる。その冷たさに、麻広先輩は小さく飛び上がった。

 背後を取られてしまい、両手をバンザイと挙げて完全に白旗状態。
 ご愁傷様です。

「わかった、わかった!!喋らないよぅ!!」
「宜しい。あ、そうそう、ところで宏二がドコに居るか知ってる?」
「え?いないの?」

 ふーん、と香川と麻広先輩が殆んど同時に目を細めた。

「じゃ、今夜は帰ってこないな」
「そーだね。良かったな、おチビちゃん。宏二はもう今日中には帰って来ないから、好きな所で寝て大丈夫だよ〜。そうだな大体、60%は安全だから」
「60%…?」

 それって、安全基準としては随分曖昧なんじゃ…?

 でも何で?って聞こうとしたら、香川には頭をくしゃくしゃと撫でられ、麻広先輩は小さく肩を竦めて困った顔を見せた。

「ま、ソレは何だ。家庭の事情ってヤツ?あ、そうだ彦根、お前は責任とって僕を労ってよね。おチビちゃんは宏二の部屋でも僕の部屋でも好きに使っていいよ。あー眠い!!でもその前に風呂!彦根、早く早くっ」
「ハイハイ」

 麻広先輩は苦笑する香川に連れられてリビングを後にして行った。ヤッパ、ココの奴らのパワーバランスってわからねぇ…。

 それから俺は麻広先輩を風呂に放りこんだ香川と少し話した後、俺も風呂に入ってTシャツとか借りた。
 その後、香川もシャワーを浴びると、ギャンギャンと文句を言い続ける麻広先輩を宥めながら自室に連れて入る。

「じゃ、オヤスミ」
「オヤスミ〜」
「オヤスミなさい」

 で、俺はと云うと、いま麻広先輩の部屋に居る。
 想像していたのと違って、ウッド調とでも言えばいいのか…全体的に木の色そのままの家具ばかりで温かみがあるトコロだった。
 なんかさ、麻広先輩ってモノクロとかメタリックなイメージだったんだけど、観葉植物なんかもあったりして、へえって思った。
 中内の部屋と、とても対照的で不思議と気持ちが和む。
 だって、中内の部屋ってさ、フローリングに壁面全部窓ってカンジが二面。壁らしい壁は入り口のある面と、麻広先輩の部屋と隣り合ってる面だけなんだもん。無駄な家具は一切無いし、全体的に、無色透明とか白とか云ったイメージ。
 開放感はあるけど、逆に何も無さすぎてちょっと緊張する。

 俺はモソモソと麻広先輩のベッドに横になった。だけど、どうしてだかどこか落ち着かなくて眠れない。何回寝返り打っても、全然眠気が来ない。

 う〜ん…う〜ん……。

 考えに考えた末、仕方が無いので一応、試しに中内のベッドに潜り込んでみることにした。もしかしたら眠れるかもしれない。

 ま、寝れない可能性は大だけど。

 俺は恐る恐る中内の部屋に行き、躊躇いながらもベッドに潜り込んでみた。ところが、思いの外居心地が良く、そのしっくり来る感じに驚くほど早く眠りの淵へと沈んで行った。

 これって、もしかしてインプリンティングってヤツ?
 ひよこが初めて見た生き物を親と思うのと同じで、初めココで寝ちゃったから、ココが寝床と思っちゃってるの?

 オイオイ、俺の思考回路はひよこ並みかよ……。


 さて、麻広と香川の間には一体ナニがあったのでしょうか?そして、中内には何が?(笑)











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