あさ。
朝、目が覚めた瞬間から俺史上稀に見る最悪な状況。
そんな日は、きっと終日最悪なままなのかも知れない。
ただ、学校へ登校するだけで周囲の注目が降り注ぐ……はっきり言って、ムチャクチャ気分が悪い。
しかも、その原因がハッキリと視認出来るのだから、尚更ムカツク。
「どうしました、室尾くん?」
「…………」
俺はその原因と視線を合わせないまま、ススス…とさりげなぁ〜く距離を開けていく。
だが、敵はその分を更に縮めて俺の隣へと並ぶのだから性質が悪い。
離れる、くっ付く、離れる、くっ付く…そんな事を何度も繰り返すうちに、愉快な会話など一切無いまま学校へ到着。
コレで漸く解放されるのだと俺は心底喜んだ。
だが非常に残念なコトに、神様はそんなに優しくは無い。
まぁね、そりゃさ、俺をこんな状況に追い込んだのが神様なら、もっと酷い事が起きる事だって想像できた筈なのだ。
中内が下駄箱から上履き(俺の高校は便所スリッパみたいなのが上履きだ)を出しすと丁度クラスの担任がやって来た。
「お、中内!いい所に居たなぁお前を探そうとしていんだ。チョットこっちに来てくれないか?」
中内は得意の優等生スマイル(営業スマイル?)を浮かべて、分かりましたと告げる。
『先生偉い!!ヤッター!やっと俺はコレで祝・開放だ〜!!』
心の中でガッツポーズを作り、勿論心の中でだが俺は雄たけびを上げていた。
ザマアミロ!やっぱり悪の蔓延るコトは無しだぜぇ!!
ニヤニヤと笑った俺を見て、中内は通り抜けざまにワザワザ耳元でボソリと呟いた。
「定期と携帯」
「ぐっ…!」
急いで顔を引き締めるが、相手はサッサと先生の方へ行ってしまった。
そうなのだ、俺はまだ人質(物質?)を取られっぱなしなのだ。しかも、取り返すハズが何故か逆に増えている……。
ガックリとその場に項垂れた。
何でかなぁ?おっかしいよなぁ?
ああもう、こんな感じなんて云うの?チキショウ太陽が目に沁みるぜ……。
「よ、守!どうした?朝っぱらからシケた面してんなぁ?」
ポン、と頭を後頭部から掴まれる。
この軽い物言い、上から降り注ぐ声のでかさと手の大きさ……間違い無い。
「た、助けてくれよぉ!香川!!大変なんだって、マジでやばいんだって!!ソレがさぁ……聞くも涙、語るも涙で……」
俺は一年の頃、同じクラスになって以来の親友・香川彦根に泣きつこうと思いっきり顔を上げた。
が。
その後ろにズラリと並んで半円を描くように立って居る中内親衛隊の憎悪に満ちた眼光の鋭さに、思わず上履きを引っ掴むとダッシュで逃げ出した。
「わ、わりぃ…また後で!!」
「待ちなさい!!室尾―!」
金切り声を上げた女子の集団が、脱兎の如く逃げ出した俺の後をもの凄い迫力とスピードで追ってくる。
「冗談じゃねぇぇぇぇ!!!!!」
マジ掴まったら殺される!!
俺は朝っぱらから校内を必死で逃げ回る羽目に陥った。
何で、俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!?
絶対、絶対、100%す・べ・て、あの男“中内宏二”の所為だっつーの!!
「ちっくしょぉぉぉぉぉ!!!!」
始業ベルが鳴るまでの数分間、俺の叫びが校内に間響き渡ったのは言うまでも無い。
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