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ぶどう
作:吉良ラスク


 私はぶどうが好きだ。

 プツン 房の中から一つもぎ取る
 プチュ ブドウの身を押し出し
 ツルン 口の中に滑りこませる
 ゴクン 種は出さない そのまま丸呑みする

 甘く芳醇な果実は私の食道を蠕動運動に任せて通過し、胃に落ちる。この喉越しがたまらない。

 去年の夏、私は妊娠した。結婚10年目にして授かった待望の赤ちゃんに、私たち夫婦は両手を挙げて喜んだ。
 しかし、喜びもつかの間。産婦人科の先生からこう告げられる。

「胞状奇胎妊娠です」

 受精卵から胎児の形にならず、丸い細胞だけが増殖した状態。
 出産は勿論無理だった。それどころか、ちゃんと処置をして子宮内を掃除し、細胞を一つ残らず除去しておかないと、残った細胞から絨毛癌と言う癌が発生する危険もあるのだそうだ。
 私達は考える余地などなく、初めての子どもを医師の処置で子宮から取り除くことを決定した。

「この病気は丸い細胞が房をなしているように見えるその状態から、”ブドウっ子”と呼ばれることがあります」

 医師は手術前、素人の私たちにも分かりやすく理解出来るためにそんな説明をした。その場面が今でも鮮明に思い出される。
 あの時、諦めることを決めた私の赤ちゃん。今度こそ、あなたを産んであげる。

「今度こそ、ぶどうの様にはさせはしないわ・・・」

 私は今日もそう呟きながら、ぶどうを食べる。
 想像の中で、あの日のあかちゃんの細胞を食べる。私の体から取り出されたブドウっ子の魂をもう一度私の体の中に招き入れる為に・・・。
 私はぶどうが大好きだ。


今日のお昼のデザートがぶどうでした。
そこから何かホラーなものを考えられないかな?と思って書きました。













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