第七話 恋のライバルで錯乱
:ツムジ視点:
学校が終わり、俺は一人で通学路をとぼとぼと歩いていた。
詩得は弓道部なので今日は部活で居ない。光斗は他の友達とゲーセン行ってから帰るそうだ。
俺も誘われたが家に居る二人がどうも心配なので今日はさっさと家に帰ることにした。
これ以上家を壊されても困るし、ご近所さんに迷惑になっていないかが心配だ。
こっちの世界のことを全く分からないあいつ等を外に出すのは本当は反対だった。
母親じゃないが、小さな子供が一人でどこかへ出かけると迷子になるんじゃないかという心配と同じだ。
そう考えると自然と足取りが速くなってしまい走ってしまう。
走るとフリスとの昨日の出来事を思い出す。背中にお姫様を背負って全力疾走で走った。
軽やかな走りで顔に当たる風が心地良い。
黒のマフラーが風になびき、季節はずれといってもひらひらと舞っているように見えて俺はこの姿が好きだった。
走って五分ほど、気がつけばもうアパートの目の前に着いていた。
ふぅっと息を吐いて家のドアのノブに手を掛けた。鍵は掛けるのが面倒なのでいつも掛けていない。
まわそうとしたらドアが丸ごと外れてしまった。そういえばドアは壊れたままだったな。
ドアをどかして中に入り再び置物のようにドアをはめなおす。
その際に「ただいまー」と言ってみた。
すると中から「お帰りなさい」と「お帰り」、「あら、もう帰ってきた」という声が聴こえてきた。
三人の声が聞こえたのでリビングに行く。
もちろん声の主はフリス、ルーノ、龍守さんの声だった。
リビングに行くと三人が四人掛けの机に座って緑茶を湯のみで飲んでいた。
「お帰りなさい、ツムジさん」
「ただいま」
俺はフリスの言葉に返事をして、鞄を椅子の隣に置き、フリスの隣に座る。
目の前の席にはルーノ、その隣に龍守さんが座っていた。
「で、龍守さん」
「ん?何?」
「俺から言いたい事が一つだけあります」
「何々?」
「何で俺とこの二人を一緒のクラスにしたんですか?」
別に同じクラスじゃなくても学校生活はできると思っていたからだ。ただ単に面白そうだからという理由は受け付けない事にしておこう。
龍守さんは少し考えるような顔をしておから思いついたように、笑みをこぼした。
「ああ、その事ね。それは簡単な事よ。この二人はこっちの世界のことを全く知らないでしょ?それなら知る必要がある。それならどうすればいいか?」
「情報をもっている親しい人物をそばに置いておく、って事ですか」
「おお、亡霊騎士君。分かっているじゃない」
彼女は嬉しそうに腕組をして肯く。
誰かさんのせいで推理力だけはついたんですよ。
そして俺は溜息をついて隣のフリスと目の前のルーノを交互に見た。
「ど、どうかしましたか?」
「そ、そんなに見られると・・・・・・」
「ああ、いや似合っているなーって」
二人は買い物にも言ったらしくてすでに着替えていた。
フリスはチェック柄黒のスカートに上は赤色のハートが大きくプリントアウトされた白の半そでのトレーナー。
ルーノはジーパンに上は白のロゴが入っている黒のTシャツだった。
二人とも良く似合っており、見惚れてしまうほどであった。
二人は顔を赤くしてうつむいてしまい、龍守さんは何がおかしいのか口元に右手、左手をお腹に当てて笑っていた。うーん、二人の顔が赤くなるのも不思議だが何故、龍守さんが笑うかが分からない。
「ま、別にいいか」
俺は立ち上がり、マフラーを椅子の背もたれに掛けて背伸びをする。
今から夕食の準備をしようと思ったのだ。
「ああ、それから亡霊騎士君。フリスちゃん達は君の隣の部屋で二人は寝てもらう事にしたから」
「ああ、それなら別に構いませんよ。それより隣の部屋倉庫みたいになっていますけど大丈夫ですか?使っていないタンスとか机とかたくさんありましたから」
俺は後ろを向きながら気軽に答えた。
料理を作るのに集中しないといけないと思ったので軽く受け流してしまった。
「その事なんだけどね、全部邪魔だったから捨てちゃった」
「・・・・・・・・・Why!!」
俺は急いで自分の隣の部屋の襖を開けに行った。
襖を開けると見事にデコレーションされた女の子の部屋があった。
ぬいぐるみや机、タンスなど合った。ちなみにベットはさすがに入らなかったようで布団がすでに敷いてあった。
って違うわぁ!!
「粗大ゴミって金かかるんですよ!それをこうもあっさりと!しかも誰の金を出したんですか!?」
「亡霊騎士君」「ツムジさん」「ツムジ」
「やっぱりかチクショウぅぅぅぅぅ!!!」
俺はその瞬間に立ちくらみがして倒れそうになってしまった。
はぁ・・・・・・やっぱりあんた等酷いよ。
:???視点:
「ついに見つけた・・・・・・・・・」
怪しい人物が屋根の上に立って旋風の部屋をじっと睨んでいた。
その人物は軽い防具を頭からつま先まで完全に防備し、腰に三つのナイフを脇差に入れていた。
整った顔立ちの男で身長も170を越していそうだった。
「フリス姫・・・・・お命頂戴する」
男は静かに笑みを浮かべると煙のようにその場から消えてしまった。
旋風たちは自分たちが監視されている事に全く気づいていない。
一番最初に訪れる試練とも知らずに・・・・・・・・
:フリス視点:
タツモリさんが自分の部屋へ戻っていき、ツムジさんはちゃくちゃくと夕食の仕度をしていた。
わたくしとルーノはそんな彼の背中をボーっと見つめながら椅子に座っていました。
彼の背中を見つづけていると心が落ち着くんです。
わたくしの目の前に席のルーノもツムジさんを見ていることに気づき、口元が緩む。
身を乗り出して彼女の肩を軽くポンポンっと叩いた。
「あ、はい。なんでしょう?」
「いや、ルーノも女の子だなーって」
「え!いや!その・・・・・・・!」
彼女は顔を赤くしながら俯いてもじもじし始めた。
あっちの世界じゃ見せなかった行動に思わず笑顔になってしまう。
「ルーノも気になるんですね。彼の事が」
「いや・・・・その・・・・・」
「隠さなくても大丈夫ですよ。わたくしも初めてこのような感情が生まれました」
「フリス様。私は出来れば貴方の恋の邪魔には・・・・・」
「いえ、わたくしもライバルが出来て嬉しいですよ。それに、シエさんもツムジさんを狙っているみたいですしね」
と笑顔で言ってみた。
ルーノはゆでたみたいに顔を真っ赤にして目を見開いていた。
わたくしは笑みを崩さず彼女を見つめる。お互いに好きな人が初めて出来た。
その好きな人が同一人物である。
わたくしはルーノとの関係を崩したくない。
出来ればずっとこのままで居たい。
恋のライバルでもいい。わたくしを守る騎士でも良い。
彼女もわたくしの傍に居てほしかった。
「私は・・・私もツムジのことが好きです」
「はい」
「お互いに頑張りましょうね」
「はい、頑張りましょう」
お互いに微笑んで握手をする。
彼女の手はわたくしより大きく温かかった。
彼女としばらくいろいろな事を話しているとツムジさんが食器に乗ったお魚の料理を持ってきてくれた。それを二人で見てみる。始めてみる料理だった。良い匂いがして食欲が湧いてくる。
「さて、今日はアジのフライだ。タルタルソースでもかけて食べてみろ。美味いから」
そう言われてフォークを受け取りルーノと同時に一匹の魚のフライという物を取ってみる。
その後に「たるたるそーす」というものをかけて口の中に運んだ。
「「お、美味しい・・・・・!」」
「だろ。明日から学校だから今のうちに体力もつけておかないといけないからたくさん食べろ」
「それじゃお言葉に甘えて」
そう言ってもう一匹フォークで刺してソースをかけて食べる。
やっぱり美味しいです♪
ルーノも気に入ったらしく笑顔で魚を食べ進めていく。
楽しい食卓・・・・・・・・家族という物を久しぶりに感じた時間だった。
ルーノ「それより、旋風」
旋風「ん? なんかあった?」
ルーノ「いや、詩得とはどんな関係だ?」
旋風「はぁ? ただの同級生、それか大家と住人」
ルーノ「それならあのルウという娘は?」
旋風「あれは? 俺が保護者代理人?」
ルーノ「ならネイロはどうだ?」
旋風「龍守さんは逆に俺の保護者みたいな感じだな」
ルーノ「・・・・・・そうか」
旋風「?」
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