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第五十七話 真実は錯乱
:ツムジ視点:

瑞香の後ろを着いていき、屋上までやってきた。秋になったと感じられるような冷たい風が吹く。フリスが寒そうに自分の肩を抱いた。確かに寒いな……。他のメンバーも寒そうに手をこすり合わせたり、吐息を吹きかけたりと、寒さ対策をしている。俺はマフラーをしているので特に問題はなかった。

そんな中、瑞香一人だけは平然を装い、俺達と向き合うように立つ。彼女の瞳はじっと俺を見て、何かを訴えているようにも思える。だが、俺のほうが彼女に色々と言いたかった。おまえは誰だ――と。

「さて、ツムジ。わたくしから説明することは三つ」

「三つだけか?」

「三つだけ」


三つだけ……少ないだろ。なんて、文句も言えない。この三つで納得できるのだろう。それだけの説明で十分なんだろう。それだけで、俺を納得させる事ができるんだろう。俺達を納得せざるおえないんだろう。なら、説明して、解答して、凍解して、納得させろ。

「まず、一つ目。わたくしは『ニノマエ』瑞香。本名、東海道(とうかいどう)瑞香ですわ」

「東海道……」

東海道(とうかいどう)。ニノマエ、オオゼラ、モロミザト、サイムサ。この四つの家柄のもう一つしたのランクにある有名な家柄。その一つが、トウカイドウ。だが、トウカイドウはそのランクの中でも一番した。そこまで有名でもない。

「わたくし、東海道家を追い出せれたのです。もう、必要ないと……」

「はぁ? 必要ない?」

「ええ、わたくしはもともと養子で、東海道の子供が生まれなかったのでその代わりという事で、養子に取られました。でも、三年前に子供が生まれ、わたくしは用済み。追い出されたのです」

「っ……ひどい」

詩得がそう呟くのも分かる。いや、確かに酷い話だ。金の為なら血は繋がってないとはいえ、自分の娘を追い出すなんて無責任すぎる。

「そして、約二年間、わたくしは再び孤児院に行き、一人になり、心を閉ざしました」

聞いているこっちが痛い。悲しいすぎだろ……。

「そして、ちょうど今年に入ってから、わたしはある人に出会いました」

「それが俺の両親ってことか?」

「はい、最初は信用なりませんでした。でも、わたしの話を聞いてお二人とも泣いてくれたのです。わたくしはそのときに気づきました。この二人なら信用できる……と」

大体、話の内容はつかめた。とりあえず、両親は養子をとることにしたんだろう。そして、元東海道の娘である瑞香を探し出してニノマエになることを要求する。しかし、心を閉ざしてしまっている瑞香を説得するのは難しかった。だが、両親の説得でなぜ、心を閉ざしたのか理由を聞いて、泣いた。

俺の両親は心から泣いただろう。その姿に心を打たれた瑞香はニノマエになり、ちゃくちゃくと「本当のニノマエ」になっていたのだ。そして、この九月に瑞香はニノマエになった。

「わたくしは実際、あの両親に恩返しができればいいのです。この数ヶ月間はとても楽しかったのですから。そしてツムジ。わたくしは貴方などには興味がありませんが、二人からのお願いということで聞き入れただけです」

「ひどい扱いだな」

「当然です」

当然とまで言われた。いや、興味がないなら当然か。純粋に人をまだ愛する事ができないのだろう。信頼できる人間は瑞香にとって両親の二人だけ。俺の事は何も信用していない。いや、それはそれでいい。

「それでは、わたくしのお話しはこれでおしまいです。ツムジ、今後とも宜しくお願いいたしますわ」

最後にお辞儀をして俺の横を通り過ぎる。瑞香はそのまま屋上の扉を開けて出て行った。残されたメンバーには沈黙と暗黙だけがのこっている。そしてみな、思っていることは同じだろう。

なぜ、彼女は泣きそうになっていたのだろうか……。




「ツムジさん、ミズカさんは可愛そうです」

帰り道、フリスが俺に言った。隣にいるルーノも肯く。帰り道には俺たち三人の影しかない。詩得は部活だし、光斗は亜美を迎えに行っているだろう。心残りがあるのは全員だ。詩得は練習に身が入らないと思うし、光斗も今日は上の空になるだろう。

「ツムジ……わたし達はあんなに怒っていたが、今思えば反省している」

「ルーノ達に反省の色があるのは分かっているから、別に心配するな」

「でも……」

それに、俺から言わせてもらえば瑞香は幸せに生きている。大事なのは昔より今、みたいなことを良く耳にするが、まさにそのとおり。俺も、昔より今が幸せだ。このメンバーで、この暮らしが、この生活が何よりも大切で大事なことなんだ。

いまごろ瑞香は家にたどり着いて両親と挨拶でもしているだろう。俺の話をしたり、今日の出来事をしたり、もっと、もっと、別のことを話したり。

だから俺は何も言わないし、自分のしたいようにする。

婚約者というならば、俺は逃げる。家に帰れというならば、岳倉ハイツに引きこもる。まぁ餓鬼っぽいことしかできないけど、自分なりの「したいこと」をする。瑞香も「したいこと」をしているだけだ。制限された世界じゃなくて、自由な暮らしを望んでいる。

でも、

「ニノマエ」になる事は一つの自殺行為でもある。金持ちというだけで命を狙われたり、誘拐されたり、酷い扱いを受けることもある。それに耐え切れる自信があるなら、「ニノマエ」を続けろ。自信がないなら即立ち去れ。

これが俺の警告であって

注意であって

予言である。

できれば、当たってほしくないけど。
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