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第四十七話 集う者達で錯乱
:???:

試験興行――トライアウトが町に現れて約一週間。彼女は拳銃を片手に不良グループを壊滅まで追い込み、そして仲間にする。それを繰り返し、150人ほどの組織を作った。その組織の目的は……不明。作るだけ作って活動はあまり目立たない。だが、それと入れ替わるように出てきた人物。追及者(チェイサー)幸福状態(ウエルビーイング)責任と義務(ライアビリティー)の三人だ。この三人はチームを組み、よい実績を残していった。情報、守り、攻撃。この三つがバランスよく取れていた。活動内容は主に人助け――と言う口実の暴力。依頼があればなんでもする、殺戮、リンチ、恐喝、闇討ち、などだ。

この三人がであったのは、とある大学でのことだった。

「よぉ、龍守!」

「ん? ああ、物井(ものい)か」

大学の中庭、そこでは多くの大学生が友人としゃべったり、本を読んだりと自由な時間をすごしていた。その中で、龍守音色はベンチに座って「人生の落とし穴」と書かれた本を読んでいた。本の内容は推理小説となっており、今ちょうど探偵が犯人の名前を言おうとした瞬間に、その人物はやってきた。名前を物井刃(ものいやいば)。スポーツ刈りがよく似合う少年だ。

「悪いけど物井、私はこの推理小説を現在形で読まないといけない」

「いや、そんなことよりも、俺が頼んでおいた物は?」

「ああ、それならここにあるぞ」

と、龍守が自分の隣に置いておいたA4サイズの茶封筒を渡す。それを待ってましたといわんばかりに取り上げる。さっそく龍守の横に座って封筒を開けだす。そんな物井の姿を迷惑そうに見つめていた龍守は、ため息をついて本を閉じた。

「物井、せっかく気を使って封筒に入れたのに、いいの?」

「ああ、別にかまわないぜ、俺は」

封筒から数枚の神を取り出すとそれを目で追うようにして読み始めた。そして、ため息をついた。ついたのは物井のほうだった。資料を見るなりため息。さすがの龍守もこれには気分を害する。

「私の情報が不愉快だったか?」

「いいや、ちょっとな。ここらで暴れてる試験興行(トライアウト)と俺らが同等レベルにされてんのに不愉快になるよ。そもそも時雨(しぐれ)もかよ」

「時雨ちゃんは私たちに巻き込まれたようなものだ。確かに私もそれにはいらだっている」

資料の内容は……トライアウトに続く三人。龍守音色――追及者(チェイサー)、物井刃――責任と義務(ライアビリティー)無杭時雨(むくいしぐれ)――幸福状態(ウエルビーイング)、この三人は大学には内緒で人助けという名の暴力活動をしている。このごろその活動が目立ってきており、この異名がついてしまった。

「しっかたない、時雨には俺から言っておくから仕事を減らすか」

「ああ、それが妥当だろう。私もさすがに最近やりすぎたと思っている」

「だな」

そういって物井が立ち上がろうとしたとき、一人の少女がこちらへ走ってくるのが分かった。その人物の顔を見て、物井は口元をぴくぴくと動かした。逃げようと後ろへ一歩を踏み出した瞬間に――

「刃君〜!」

「ぐはっ!?」

その少女が物井一直線に飛んできた。少女は物井の腰を抱きしめるような形で突っ込んできて、物井は耐えることができるに吹っ飛んだ。

「もう、刃君。ウチが待ってっていったのにどうして待ってくれなかったの! 音色ちゃんと浮気までして!」

「い、いや、ちょっと待て!? 音色と俺は何もないし、俺とお前は彼氏彼女関係ではない!」

「いいの! 私は刃君を愛してます!」

「大きなお世話だ!」

少女、名前を無杭時雨(むくいしぐれ)――幸福状態(ウエルビーイング)の異名を持つ少女である。この三人は大学の同級生で昔からの親友でもあった。

「はぁ、いちゃいちゃするのは私の居ない所であってくれ」

「やらねぇよ!」

憂鬱だよ、と龍守はつぶやき、再び小説を開いた。





場所は変わって町から離れた都のとある豪邸。そこに、金髪の美しい少女が玄関前で荷物を持って立っていた。そして少女の目の前には白い髭を伸ばした男性と、少女と同じく金髪が目立つ女性だった。

「愛、もう少し考え直さないか?」

「別にいいよ、俺はとりあえず目的を果たしてくるから」

愛と呼ばれた少女――炉熊愛は今まさにこの家を出ようとしていた。その目的は二つ。一つは自分の友人である、とある人物を――殺すためにこの家を出るのだ。二つ目はその人物を殺すために仲間を増やす必要がある。試験興行という人物が隣町で仲間を増やしているということを耳にして、自分も実行しようと思った。

「愛、大丈夫なのかしら?」

「大丈夫だよ母さん。俺はもう女を捨てた。あいつを殺してから、女を拾ってくるよ」

「でも……」

「大丈夫だって、親父から教えてもらった剣術でそうにかするから」

笑顔で両親に微笑むと、右手に持っていたバックを一度地面において、頭をさげる。我が娘のその姿を見て、やはり二人は不安が積もるばかりだった。炉熊がやろうとしているのは立派な犯罪。だが、この殺しは許される殺し。そんな殺しはこの世にないが、この両親が許すことのできる殺しなのだ。

「じゃ、俺も名を上げて、あいつを殺せるまでがんばってくるよ」

そういって炉熊愛は玄関を出た。後に彼女は、手段を選ばずに、殺戮を繰り返す悪魔。殺戮奇術(ジェノサイド)と呼ばれる存在となる。彼女の目的であるとある人物の殺し――それは成功したのか成功しなかったのかは、また別のお話しで。




小学校の教室には、一人の少女がなにやら怪しい薬物を試験管の中に入れてくるくる回すように混ぜたり、ビーカーの中の液体を加熱したりと、理科室でするべきことをしている不思議な光景が広がっていた。教室にはその少女以外誰もおらず、陽がほとんど沈みきっているところから見るとすでに放課後のようだ。

そんな化学実験をしている少女――園無青羽は真剣なまなざしで試験管の中を見ていた。彼女はこうやって放課後一人だけ残って理科室から借りてきた(勝手に取ってきた)道具や薬物でこっそりと実験するのが楽しみだった。

この前は衝撃を与えるだけでクラッカーほどの音を出して爆発をする簡単な爆弾を作った。人に当ててもやけど程度で済むのだが、それを百個作ったとなれば大問題。先生たちは血相を変えて園無から爆弾を奪い取った。そのうちのいくつかは爆発してしまい、先生たちが怪我をしたのは目に見えていた。

「っふふふ♪ これで痺れ薬が完成。これがあれば前みたいに先生たちから逃げれる。ふふふふ♪」

後に少女はこの科学の力で、中学生から高校生までを撃退する小学生となり、涙の雫(ディアドロップ)となずけられる。当時の彼女はそんな自覚はなかった。襲ってくる高校生や中学生を倒すのが楽しくてたまらなかったらしい。

それでも十分に恐ろしい子供だった。





「なぁ練磨」

「なんでござるか?」

中学生の制服をきた少年が二人、下校しながら会話をしていた。一人は男なのに髪が長いのが目立つ少年。練磨東野という。彼は剣道部に所属し、このあたりでも有名な名前だった。そしてその隣にいる少年、工藤春継(くどうはるつぎ)。同じく剣道部に所属。腕のほうも練磨に続く強豪だった。

「このあたりで剣道に強い二人がいるって知ってるか? 確か旋風っていう奴と光斗っていう奴だったな」

「ほほう、なるほど。拙者もそれは嬉しい情報でござるよ。ところで工藤」

「ん? 何?」

「ちょいと耳にしたのだが、このあたりに試験興行(トライアウト)と呼ばれてる例のチームのボスがいるどうだ。それと追及者(チェイサー)責任と義務(ライアビリティー)幸福状態(ウエルビーイング)という三人組。知ってるか?」

「ああ、その四人ね。知ってるけど、二つ名なんて名称をもらって何が面白いんだか」

「まぁそういうな。名を馳せるのは武士の役目」

「いや、この時代武士はいないから」

「そこで考えたでござるよ」

「?」

「拙者たちも一暴れるでござるよ」

「やっぱな。ああ、まぁ乗る気じゃないけど別にいいぜ。俺もこのごろ暇だったんだ」

「決定でござるな」

そして二人は静かに足を進めていた。この二人も後に練磨東野――血の死者(ブラッドはーピー)と工藤春継――正常化(ノーマイぜーションン)と呼ばれるようになる。

こうして歯車は着々と噛み合っていく。

すべては亡霊のために。
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