第二十七話 異世界の住人で錯乱
:ルーノ視点:
今回は珍しくシエと二人っきりになった。豊倉町の「デパート」というところに来たのだが……広すぎる。シエもそう思ったらしく、入り口を通って最初のフロアについた瞬間にきょろきょろと辺りを見回した。無論、私も顔を四方八方に向けた。
「広いわねぇ。こんなに広いとは思いもしなかったわ」
「確かにな。私もこんなに広いとは……」
すると、シエが歩き始めたので私も足をそろえて歩き出した。今思えばこうやってシエと二人で歩くのは初めてだと気づいた。うむ、何かしらの緊張がある。あちらもそう思っているようでちらちらと私の顔を見ていた。
「あ、あのルーノ……さん?」
「ん? なんだ?」
「前前からお聞きしたかったのですが、フリスちゃんやルーノさんの居た世界。戦争は――終わるんですか?」
「……その答えについては――」
分からなかった。なんせ、世界大戦なのだ。そう簡単に終わるはずがない。全ての国が戦争を始める。膨大な被害と損傷を追う事になるだろう。私は思わず顔を暗くする。フリス様の護衛としてこの世界に来たのに、ツムジに助けてもらっているばかりだ。アパートの皆も同じような物。自分は――何をしているのだろう?
「あ、ご、ごめんなさい。なんかヘンな事聞いちゃいましたね」
「いや、大丈夫だ。――それなら、こちらもいくつか質問して良いかな」
どうぞ、、とシエの返事を聞くと私は最初に人物の名前を出した。
「ツムジ」
「へ?」
「ツムジのことをどう思っている?」
「つ、旋風ですか!?」
声がでかい。まあ、それだけ彼女がツムジのことを意識しているのだろう。まあ、私も同じような物か。さほど変わりはない。
「え、ええっとですね……旋風はで、ででづすね――」
「緊張しすぎだ」
私は思わず苦笑いをしてしまった。いつもツムジを吹っ飛ばしたりしているがアレは彼女の照れ隠しなのだろう。そう言うところは同じ人物にほれている私やフリス様、風菜だって気づいている。ただ、やられている本人は勘弁してほしいといっているよだがな。
「私は、ツムジのことが好きだ」
「る、ルーノさん……!」
「何赤くなっているんだ? シエも好きなのだろ?」
「えっと、そうですけど……直球に言われると…」
「恥ずかしがる事はないと思うぞ。私やフリス様。風菜……それにもしかしたら瀬戸美も狙っているかもしれないぞ?」
「ううっ……瀬戸美ちゃんまで?」
「態々弟子になったんだからな。惚れたのだろうな」
「ああ。なんであいつはそんなにフラグが立ちやすいのよ」
「ふふふ、そうだな」
なんて、何時の間にか緊張もなくなり、女の子同士の会話に花を咲かせていた。私も女だと実感をする。昔は戦争に出て、人を殺し、そして涙を流した。なぜ、自分だけこんなつらい目に会うのかと。だが、こっちの世界に来たときから傷が癒え始めた。だが、脆くなり始めた。あっちの世界に戻った時、自分は何が出来るのか。何を失うのか――怖くなった。
「うん? ルーノさんあの人」
「どうした?」
シエがあるお店の前で立ち止まり、二人の人物を指差した。いや、正確には三人居るのだがそのうちの一人が何かしらおどおどしている。それを不思議に思ったシエは立ち止まったのだろう。だが、他にも理由があった。お店は喫茶店のようで、コーヒーの匂いなどが香ばしい。しかし、その香りとは全く似合わないおどおどしている女性の格好。
巫女服。
というのだろうか。赤と白の綺麗な袴。間違いなく巫女服である。そして、もう一人。すぐ傍で座っている人物。漆黒のドレスに、ゆっくりとコーヒーを飲む姿。まさに綺麗だった。だが、何故ドレス?と言う疑問が残る。
最後にその隣の席に座っている茶髪でポニーテールにしている女性。おしとやかで目の色が青色。格好はジーパンに青のTシャツと簡単な物だった。
「あああ! もう! なんで空斗は電話に出んのや!?」
と巫女服の女性。
「仕方ありませんわ。裏界の仕事を一週間もサボったのですから。隊長からしごかれてもおかしくありませんわ」
とドレスの女性。
「まあ、空斗さんは昔からそうでしたからね」
とポニーテールの女性が言う。
ボーッとしているとポニーテールの女性と目が合った。美しい顔立ち。そしてその顔でにっこりと微笑を返してくれた。私とシエは固まってしまい、動けなくなってしまう。一体、彼女達は何歳なのだろう? 二十代後半にみえるが、先ほどの旅館でも実際は四十ぐらいの女将がいた。この町では本当の年齢が分からなくなりそうだ。
「ルーノさん、どうします?」
「どうするって……ずっと見詰められても」
そう、ポニーテールの女性は私たちをずっと見ているのだ。これは困った。
と、顔をしかめるとなんと手招きをするではないか。
ほかの巫女服の女性とドレスの女性も私たちに気づき目を合わせた。
これは、行くしかないだろう。そう思ってシエと二人で顔を見合わせた後に喫茶店の中へ入るのであった。
「ごめんね。突然、手招きなんかしちゃって」
「い、いえそんなことは」
私達二人に、三人の美女。これは結構緊張する。
「わたくし達をみていましたの?」
とドレスの女性が言った。怒っていると思い、二人そろって「すいません!」と頭をさげた。だが、どうも違うようで急いでドレスの女性が私たちの頭を上げさせた。
「ちょっと私が二人を呼んだのは理由があるかです」
「理由? ルル、理由ってなんやねん」
ポニーテールの女性の言葉に巫女服の女性が疑問を抱く。だが、ポニーテールの女性は「まあ、聞いて居たら分かりますから」といった。
「とりあえず、シエさん? だっけ」
「は、はい」
「貴方はこちら側の人間だからもんだいはないですよ」
「は、へ?」
「そして、ルーノさん」
「あ、はい。そうですが」
「貴方はどちらの異世界の人ですか」
……………………
……………
……
「ほんまか!? この子、裏界の子?」
「いいえ、裏界とは別の世界ですね」
「世界はほんと狭いですわね」
話の内容が全くつかめない。それよりも私が異世界の人間だという事がばれた。この人……何者? となりではシエが口を大きくぽかーんっとあけていた。その気持ちは分かるが顔がすごい事になっているぞ。
「えっと、どう言うことですか? 何故私が異世界の人間だと?」
「そんなの簡単ですよ。あれ? 分かりませんか? 私の魔力」
「ま、魔力?」
「ああ、そうでした。日頃から魔力は抑えていましたからね。――これならどうです?」
とポニーテールの女性が言った瞬間に大量の魔力が彼女から出ているのが分かった。だが、この魔力は私たちの居た世界とはまた別物のようだ。これこそ本当に彼女は何者だろうという疑問が残る。
「とりあえず、自己紹介しておきますね。私、高江・ルル・ジューヂュといいます。異世界、裏界という世界出身です。どうぞ、よろしくお願いします」
「わたくしは蓮動葉音と言います。よろしくお願いします」
「うちは祖神真奈や。宜しくな」
ポニーテールの女性改め、ルルさん。
ドレスの女性改め、葉音さん。
巫女服の女性改め、真奈さん。
これが私達の最初で最後の別の異世界の住人とのファーストコンタクトである。
「ええ!? 四十――」
「こえがでかいって、詩得ちゃん」
「あ、ああすいません」
すっかり打ち溶け合ってしまった私達。お互いの世界の情報交換や、彼女達の実際の年齢の話。実は旅館の乃香さんとも友人だという事も知った。どうみても、彼女達は二十代だが、お互いに娘や息子をもつ母親であるということ。もう、びっくりである。
「それにしても、まさかぁ他の世界の人に会えるなんてな。うちはもう、ないと思っていたで」
「私もビックリでした。魔力が感じ取れたので探していたらルーノさんでしたなんて」
「私もビックリです。異世界はたくさんあると聞きましたが、こっちの世界で出会えるなんて」
それぞれ、全員驚いている。
ま、それは仕方がない事だ。
「まぁ、それもなんですし、少し昔話に付き合いませんか?」
「昔、話ですね?」
シエが確認を取ると、ええそうですとルルさんは言った。
「あれは、もう三十年も昔の事です」
そして私達二人は話の中へ吸い込まれるように聞き入るのであった。
こんかいは前作のヒロイン、ルルと巫女の真奈、大金持ちの葉音が出てきました!
ルル「お久しぶりの方も居れば始めましての方も居るかもしれません」
真奈「かたっくるしいな。前作みたいに楽しくやっていこうとは思わんの?」
葉音「今回は脇役ですからね」
なんか、話の内容が生々しいわ
ブログはじめました『今宵の猫は月を見て鳴く』
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