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水曜日18時半
作:佐達砂羽


 いっつも 水曜日、18時半ごろ。
 298円の炒飯弁当とポテトサラダ。スーパーのプライベートブランドの緑茶、500mlのペットボトルのやつ。そして、サイコロキャラメル。
 いっつもおんなじ。
 合計金額は635円。覚えてしまった、いっつもおんなじだから。顔はあんまり見ないけど。
 「おはしご利用ですか?」て聞くと「いらないです。」て言う。
 いっつもおんなじ。
 今日もあたしは学校から直接バイト先であるこのスーパーへ来て、17時からレジを打ってる。水曜日は、いつもすいてるから15台もあるレジの半分以上は動いていない。
 みんなヒマそうだけど、レジという名の独房にとじこめられて、話したりできない。

 ふと、お客様が作業する台の上にかけられた時計に目をやった。
 時計の針が それぞれ不器用に床を指そうとしていた。

 もうすぐ だ。

 ガタ とかごの置かれる音。
 振り向くとあのひとが立っていた。

「こんばんわ、いらっしゃいませ。」

 あたしの発する言葉はマニュアルどおり。
 いっつもおんなじ。
 値段を読み上げなさい って注意を受けるけど、あたしは声が枯れるのがいやでいつもやってない。

 ピ ピ と読み取られていくバーコード。
 すいてるせいでその音が店内によく響く。

「おはしご利用ですか?」
 お弁当を買ったお客様には尋ねましょう。マニュアルどおりにしか発せられない、あたしの言葉。
「いらないです。」
 返ってくる言葉もいつもとおんなじ。
「ありがとうございます、635円のお買い上げです。」
 袋をかごに入れて、あのひとの手元を見た。
 500円玉と100円玉が2枚、置かれた。
「700円お預かりいたします。」
 金額を打ち込むと、ガーと音をたてて釣銭機が小銭を吐く。

 今日も何事もなく 無事に終わる。

「65円のお返しです。」
 おつりを受け取られたら、ありがとうございました て言って終わり。
 そう思ったあたしの手首を大きな手が握った。
 レシートに乗せた小銭が落ちて、転がっていく。
 手を握られたことよりも小銭の行く末が気になったあたしって かわいくない。
 職業病かな‥アルバイトだけど。

「いいかげん 覚えてくれた?」
 いらないです よりもいじわるな声にあたしは手を握られていたことを思い出した。

 はじめて正面から見た顔。
 あたしの体が急にあつくなったのは、手首から伝わる波のせい‥‥?
 目がはなせなくて、何を問われて何を答えるのかすっかり分からなくなった。

 体温が上がっていくことと、あのひとの目に吸い込まれそうなことだけが あたしを支配する。

「ここいけんのっ!?」
 8番レジの静寂をやぶる、中年女性客の声。
 手首の熱が、冷房の冷気にあてられて元に戻っていく。

「あ、あいてます!いけます、だいじょうぶです!」

 アルバイト初日だって、こんなにどきどきしながらレジを打つことなかった。
 あたしは体をほてらせ、胸におおきな爆弾を抱えたような気分で、あと3時間もレジを打ち続けるはめになった。


おつりは拾って帰ったのかな‥‥
いつか続きを書きたいです。
読んでくださってありがとうございました!
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