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魔法使いと風精霊  作者: 田中23号
第三章
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第三章エピローグ

オーリの町の小さな家、魔法使いの家に久しぶりに風が通る。


「ぬお、ほこりっぽいな」


「窓を全て開けましょう」


「おう」


「うん」


帰ってきた一家がまずやったことは、換気である。


嫁は、魔法まで使って家の空気を入れ替えている。


夫と娘は、手分けして家中の窓を開け放つ。


こうして、帰ってすぐに騒々しく家を掃除するクリスたち。


その帰還を知って、町の人々も顔を見に家に訪ねてきた。


「おう、帰ってきたのか、だめ亭主!」


「いつまでも帰ってこないから、心配したんだよ!」


ご近所の方々に、なんだかんだと心配されているクリス。


「フウリちゃんがいないから、市場も張り合いが無くなっちまってよぉ。世間話、期待してるぜ」


「明日からまたよろしく頼むよ!もちろん、たっぷりおまけするから!」


八百屋と雑貨屋が、それぞれフウリに声を掛ける。


「ボス!あそぼーぜ!」


「フィリスちゃん遊びましょう!」


子供のアイドルと化しているフィリスは、クリスとフウリの顔をみる。


二人が頷いたのを見て、子供たちと駆けていく。


結局その日は掃除もそこそこに、三人が帰ってきたことを祝うというお題目で、ご近所さんらが集まって盛大な宴会へと発展していった。





翌日からは、すっかり普段通りの生活を送っている。


王都へは、ディサン同盟国からオーリの町へ戻る前に寄っているので、特に急ぎの用件がないクリスは、ギルドで細々とした依頼をこなしている。


王からの依頼はもうしばらく継続のため、あまりオーリから離れた仕事は請けずにいる。


フウリは相変わらずの良妻賢母っぷりを発揮している。


帰ってきてからは前にも増して、その姿が堂に入っていると評判である。


フィリスは、近所の子供たちと駆け回る日々である。


見た目と中身は幼女だが、強さは並みの兵士では手も足も出ないとあって、父親同様いろいろなことに巻き込まれては、その容赦の無さで華麗に解決しており、町ではかなりの人気者である。


そんな三人が、久々の大仕事で家を空けてオーリの町の門へと向かう。


いつも通りに、いろいろな人に話掛けられ、それに無愛想に返答する父、要領よく答える母、舌っ足らずに話す娘は、周りを笑顔にしながら町を歩く。


「主、ご機嫌ですね」


「久々にまともな大きい仕事だからな!」


クリスが嬉しそうに返事をする。


「なるほど。では張り切っていきましょう」


「がんばる」


フィリスが拳を握り、熱意を表現する。


「おう、頼りにしてるぞ、二人とも!」


「任せてください、怪しい者には容赦しません」


「もやす?」


少々物騒なことを言う二人に、クリスが慌てる。


「おい、娘が着々と母に似てきているぞ」


「それでは将来は安泰ですね」


「おいおい、どういう意味だよ?」


自信満々に娘の将来を評価する嫁に、夫がどこにその要素があるのか疑問を持つ。


「私のように、いい夫を見つけるという意味です」


「な!?」


フウリの言葉に、クリスは驚きと恥ずかしさのあまり絶句する。


「ふふ、よかったですね、フィリス」


「ふぃりす、おとうさんとけっこんする」


重大発表する娘。


言葉をなくしていた父は、今度は感動のあまり空を仰ぐ。


「あら、それは仕方ありませんね、特別に半分譲りましょう」


「ん!」


フィリスが嬉しそうに大きく頷く。


「両手に花ですね、主。これからもよろしくお願いします」


「おねがいします」


二人がまるで血の繋がった母娘のように、同じ仕草でクリスを見る。


その姿を見たクリスは、無性に嬉しくなり、二人のお願いに返事をする。


一際明るい、幸福に満ちた声が町に響くのだった。






自分と他人の幸せを追い求める魔法使い。


それを愛し、愛され、支える精霊たち。


長く詠い継がれる英雄と女神たちの物語は、まだまだ続いていくのであった。

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