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魔法使いと風精霊  作者: 田中23号
第一章
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第一章エピローグ

宴が終わり数日がたった。


その数日の間に、クリスの周りではいろいろあった。


宴の後、クリスがフィリスを連れて家に戻ったことで一騒動あった。


「お義母さま、この子は主と私の子供でフィリスと言います。さぁ、フィリス、お婆ちゃんに挨拶しなさい」


フウリがフィリスを促す。


「おばあちゃん ?」


フィリスがマリアンを見、フウリに向き直って聞き返す。


「そうですよ、お父さんのお母さんなんです」


フウリがやさしく教える。


「おばあちゃん よろしく おねがいします」


ぺこりとお辞儀付きで挨拶するフィリス。


「か、かわいいわ・・・。何かあったらお婆ちゃんに言うんだよ!」


一瞬で骨抜きにされるマリアン。


「母さんが婆ちゃんってことはジョシュは叔父さんか。しかしそもそも俺の子供だと、どうしてこうなった・・・」


疑問がぶり返してきたクリス。


ちなみにジョシュは既に酔いつぶれて、兄が部屋に運んだ後である。


酔いつぶれた村人は基本放置なのだが、なんだかんだと弟に弱い兄である。



「主、何を言っているのですか。この子は主と私の子供です、しっかり認めてください、往生際が悪いですよ」


「あんた!こんな可愛い子を前にしてよくそんな事が言えるね!表出な!再教育だ!」


マリアンとフウリが結託し、クリスを責めたてる。


「おとうさん ふぃりす こども いや ?」


フィリスがただ見上げてくる。


「そんなことあるわけないじゃないか!!お父さんはフィリスの味方だからね!世界を敵に回してもいいよ!?」


即座に方向転換するクリス。


「さすが主です。家族で新しい世界を作りましょう」


「なんで一度更地にすること前提!?」


「私は綺麗好きなので。しかし、こうなると主のベッドは少し手狭ですね、どうしましょうか」


「綺麗好きが高じて世界を更地にするのはやめてください・・・。ベッドはフウリが浮いて寝ればよくね」


「何馬鹿なこといってるんだい、あんたは。ベッドならウルバのが私の部屋にあるから、持っていってくっ付けな」


マリアンが口を挟む。


「さすが、お義母さまです。早速運ばさせていただきます、主が」


「あはい・・・」


酔っているのか、よろよろとマリアンの部屋に向かうクリスだった。


翌日、叔父さんと言われて苦悩するジョシュの姿があったとか・・・




フィリスはマリアンによく懐き、一緒に寝ることさえある。


そのときは、ベッドが二つあるクリスの部屋では、なぜかベッドの一つが空いているようだ。


ジョシュは畑仕事に精を出し、クリスも手伝おうと思ったのだが、弟の畑を手伝う兄の図を想像し躊躇する。


結局、得意の錬金で村の農具や生活用品などを修理して回ることにするクリス。


村人たちは、ここにきてやっとクリスが魔法使いだということを認識する。


「クリ坊、本当に魔法使えたんだなぁ」


「俺はてっきり嘘かと思ってたぜ」


「っていうかフウリ様とはどういう関係だ!?」


「むしろ、フィリスちゃんを俺に下さいお義父さん!」


回る所々でいろいろ言われて、そのたびに叫ぶクリスが見られた。


子供たちも面白がってクリスの後をついてくるようになり、ついでにと村長に頼まれたクリスが健全な遊びを教えたりしている。


「いいか、的から目を逸らすなよ。しっかり狙いをつけるんだ。一番的に当てた数が多い子には豪華景品があるぞ!」


子供用の弓を作り、皆に扱い方などを教えているクリス。


「子供を物で釣ろうとするなんて、さすが主です。しかし、あの吸血鬼の前例もあります、あまり多用しないほうがいいですよ」


横からフウリが現れる。


「あ、フウリ姉ちゃんだ」


「姉ちゃんも一緒にあそぼー」


「おっぱいさわらせてー」


「俺が一番弓うまいだぜ」


「一本も的に刺さってないくせによく言うな!」


「お前だって刺さって無いだろ!」


「矢ははずしちゃいけないときに当てればいい、そう、意中の女を射止めるときだけな、って父ちゃんが言ってた」


子供たちが騒ぎ出す。


「物で釣るとか人聞きの悪い事言わないでくれる!?少しでもやる気をださせようとしてるだけだし!しかしあのちびっ子吸血鬼はちょっといじめすぎたな、元気にしてるかねぇ。それとおっぱい言ったやつ、後で個別に特訓な。それにお父さんの迷言を暴露した坊主、そっとしておいてやれよ、お父さんもきっと後悔してるからさ・・・」



このように、クリスが無職ライフを堪能する一方で、フウリは村の娘たちとよく話をしていた。


フウリはクリスのせいなのかかなりの水準で世間を把握しているので、娘たちが話を聞きたいとせがむのだ。


流行の服の話をしたり、読み物の話をしたりと、精霊らしからぬ引き出しが多いフウリは、面白おかしく話すのでよく盛り上がっている。


「ところでフウリさんは、クリスのどこが気に入ったの?こう言っちゃなんだけど、変わってるじゃない?彼」


「あら、その変わっているところも魅力的なんですよ。長年生きていると、変わったものに興味がでてくるんです」


「ええ!フウリさん若く見えるのに!」


「あらあら、いけませんよ。年齢は秘密です。それに主はああ見えて結構情熱的なんですよ」


「たとえばたとえば?」


「あれは、パーティーのメンバーが遺跡につくまえに脱落してしまい、主と私だけで遺跡に潜ることになったことがあったのですが、ちょっとしたミスで主が呪いにかかって私との契約が切れそうになったんです。そしたら主ったら、私との契約を維持するために呪われた自分の腕を切り落とそうとしたんですよ」


「きゃぁ!クリス君男前ね!」


「腕が無くなってもフウリさんと一緒にいたかったのねぇ」




フウリがそんな感じで村娘たちと親交を深める中、リリィは森に入った罰としていつも以上の畑仕事をしていた。


「クリス君が帰ってきたのに、ほとんど話す時間がない!フウリちゃんの話も聞きたいのに!うがー!!」



少女の叫びが広い畑に響き渡った。





こうして、魔法使いは故郷に平穏を取り戻し、自分もまたその平穏を楽しんだ。


そう、つかの間の平穏を。

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