学園と救済
学園都市パリバート
別名、栄華を象徴した都市。
かつては活気溢れ、商業盛ん、平和の代名詞とまでうたわれた学園都市パリバート。
パリバートに来れば必ず仕事につける。
統治者などいない。
それでも内乱や凶悪な犯罪などは起きなかった。
それはパリバート学園の存在が大きい。
みながひたむきだった。
そしてこの栄華はとこしえだと……
絶望都市パリバート。
ある事件以降、パリバートの二つ名となり、歴史に刻まれた都市名。
人々の活気は微塵もなく、ただただ地を這う者ばかり。
かつての栄華は見当たりもしない。
瘴気に覆われ、食料は腐り、飲み水は濁り、植物たちは枯れ果てる。
死人【アンデッド】がうごめき、人肉を求める。
昼夜限らず常闇。
強力な幻術がかかっており、パリバートに入ったものは朽ちる前の景色を見せられる。
黒き死の夢【ブラックナイトメア】
月詠のみが使用可能な《忘却魔法》の3種の一つ。
一定範囲にある生命の魂を抜き取り、不死の肉体へと成す。
解除は不可能。
詠唱が長ければ長い程、範囲は広げられる。
実戦で使用は限りなく無理に近い。
大きな利点は魔法陣を書くのに誰にも気付かれることはない。また、ある程度なら遠隔操作も可能。
それが発動。
パリバートは一変してしまった。
学園生のフィオやエドワードも…………
パリバート学園。
「そろそろナイトレイの封印が弱まり出す。メルローズ大陸へ」
「月詠、例の件はどうするよ?」
「ダークマター、貴方はそちらを頼みます」
「…………ちっ、わぁったよ」
言い終えた時、ダークマターの気配は完全に消える。
「さて、私はエアバーン王国へ」
月詠の身体は下半身から消え始める。
数秒で月詠の気配も無くなる。
そこにはまだセリアとディアナが残っていた。
先程から月詠とダークマターの会話を黙って聞いていた。
「本当に戻れなくなったわね。パリバートもサイラスも死の都と化した…………七騎士さえ」
「私はエアバーン王国に向かう。月詠のサポートを命じられているから」
後悔している、といいたげな表情をしたセリアをよそにディアナは話を切り出す。
「エアバーンには間違いなくソラが来るはずよ?それでもあなたは行くつもり?」
「……いつかはこの時が来ると思ってた。だから……本気でやるつもり」
「…そう、サイラスはエルフの国に攻撃を仕掛けるから」
「果たしてそこには誰が来るやら」
「………………誰でも」
二人の表情はもはやうかがううことはできなかった。
無表情。何の感情も無くなりかけている。
そう、20年前のように………
ディアナとセリア、かつてはただの殺人鬼であった二人。
マリス。
少し冷えた朝を迎える。
ベッドから起き上がり、レインは宿屋から外へ。
外はまだほんのり暗い。
よく見ると日の出の瞬間だった。
レインにとっては久しぶりの日の出だ。
思わず伸びをして、冷たい空気を大きく吸い込む。
肺に行き届いた空気はよく刺激してくれる。
なかなかいい朝だった。
「んー、むっ!気持ちいいな。…………あん時も日の出だったな」
ふとサイラスを出る前を思い起こす。
聡明な少女と出会ったこと。
感慨に耽りながらも早朝トレーニングにちなんで走り込みを始める。
マリスは小さな村なので一周するのに15分もかからないだろう。
少しだけハイペースで走る。
次第に体がほてりはじめる。
「…ふっ、ふっ……はー……ふっふ…はぁ」
体力づくりは基礎中の基礎。円から耳にたこが出来るほど聞かされた。
最近になってレインはその真意を理解できたような気がした。
「………ふっふ……先生……はー……」
いかんいかん、と首を振り走りに集中する。
もう何周しただろうか。なかなか時間が経過しない。
「…………おかしい」
いつの間にか自分の走っているのがマリスではないと感づいて、立ち止まる。
「……………」
自分は今丸腰、かなり分が悪い。
「…………通じた」
声が聞こえた。
僅かだが聞き取ることができた。
女性の声色。
「誰だ!?」
「やっと通じた。あたしの声が聞こえる?」
「……あぁ、どこにいる?」
辺りを見回すが気配は感じない。
それでも声は近くから発せられる。
「お願い!あたしたちの国を助けて!もうすぐ……来る」
女性はどうやら救済を求めているらしい。
レインは悪意がないと思い、耳を傾ける。
「あたしたち……フの……ルターニャ。お…がい!助けて!早く……あっ、もう……」
気が付けば周囲の景色はマリスのものとなっていた。
だが、確かに聞こえた。
エルフの国シルターニャ。
彼女はそこにいて、助けを求めている。
「…………行かないとな」
今の自分にはそれしかなかった。
いや、それは恐らく………
彼女の声がセラに似ていたから。 |