それぞれの一年〜レイン〜
力が欲しい。
何もできない、そんな目に会うのはもうごめんだ。
力が無ければ何かをすることさえできない。
綺麗事ばかりでは平和なんて築けないんだ。
力なき思想なんてのは無意味。
力だけでも駄目かもしれない。いや、きっと駄目なんだろう。けど、それでも俺は
力が欲しい。
誰よりも強い、強い、強い力が……
夕暮れ時だった。
パルバートから見る夕暮れの景色はまるで幻想的に思えた。
先程までの戦いなどが嘘のように自然は悠久であった。
「…一年か」
ふと思い出した。今までの事を。セラとの出会い、円の死、仲間との決別、六神、聖魔十傑。
こんな短期間の出来事がとても懐かしく感じた。
誰かが後ろから近づいて来た。
「君はどうしたい?」
その声の主が誰なのかはすぐにわかった。だから、レインは振り返らずに
「…………力が…力が欲しい」
「やめておけ、求める力はやがて破滅へと誘うよ」
「……それでもないよりはマシだ。力なしでは何も出来ないし、何も言えない、誰も聞いてくれない」
「…ふぅ、やはり……に…っくりだ」
小さく呟いたソラの声はレインの耳には届かなかった。
「この学園には師匠、アイラが残るらしい。リースはイヴとクライドをどこかに連れて行くと言っていたな。ディアナはコウヤ、フィオ、シャムを鍛えると。…………さて、俺と君が残ったな」
レインはその言葉の裏に何が暗示されているのかを悟る。
「強制はしない。天魔は使えるだろう?十傑との戦いには更に二段階、三段階の天魔が必要になる。それを修得すれば力を得られる」
「本当ですか!?」
「過酷なものになる。生死の保証は出来ないから、無理強いはしない。それでも」
「強くなりたい」
力強い瞳だった。その眼を見ればこれ以上何を言っても意味はないとわかったソラは、
「なら今日、ここを発つ。別れの挨拶は無しだ。時間が惜しい」
「…別れなんてありませんよ」 |