「授業始めるで〜」
ある日の世界史の授業。
私はいつもの如く睡魔に襲われた。
あぅ…凄く眠いよ。
何でこんなに眠くなるんだろう…
ここで私の意識は途絶えたと思う。
――た
――なた
――こなた
う〜ん…
誰かが私を呼んでいる。
誰だろう?
「こなた、起きなさい!」
「ふぇ!?」
目が覚めたときは吃驚した。
私にそっくりな人が目の前にいたのだ。
「夏休みだからって、いつまで寝てるのよ〜……。朝御飯出来てるわよ、降りてらっしゃい」
その時私は悟った。
――この人、私のお母さんだ。
アルバムに載っていた写真と全く同じ。
私にそっくりのお母さん。
そして今気付いたことが一つ。
私の体が…縮んでる?
いや、時間が戻ったのか?
そう…今の私は…
小学生低学年並みの身体になっていたのだ。
「あれ!? なんで私……」
「こなた〜早く降りてらっしゃい」
「ぁ、は〜い」
おかしい。
何で死んだはずのお母さんがいるのか。
なんで私は小学生に戻っているのか。
今気付いたけど、ゆーちゃんもいない。
「こなた、やっと起きたのか〜」
お父さんだ。
やっぱり今より若い。
一体どうなってるんだろう……
私、タイムスリップでもしたのかな?
でも、そんなゲームみたいなことになんで……?
「早く食べましょ?」
お母さんがニコニコしながら席に着く。
とりあえず今は、過去に戻ったんだと思おう。
考えるのは後からでも出来るから。
朝食も済ませ、部屋にあがる。
よくよく考えたらパソコンもない。
……当然か。
今私がいる時間は現代より10年も前。
パソコンはそんなに普及していない。
「あ〜…やることがなくて退屈だな……」
私は青い空をずっと見上げたままボーっとしていた。
そのまま何にもせずに夕方までずっと空を見続けていたら、いつの間にか眠っていて既に夕方になっていた。
「あ…いつの間にこんな時間に」
体を起こす。
長時間横になっていると、何か体がだるい。
ほっぺたをパチンと叩き、気合を入れる。
すると、お母さんが「ごはん出来たわよ〜」っと言っていたので、下に降りた。
今日の晩御飯はカレーだった。
別に言う事もないと思うけど、美味しかった。
流石はお母さん……私が作ったのより遥かに美味しい……
次の日。
私はいつもより早く目が覚めた。
早く目が覚めても、パソコンはないので退屈である。
とりあえずプレステはあるから午前中はお父さんと対戦した。
午後からは退屈だった。
お父さんは「ネタが降臨した」とか言って仕事部屋に引き篭もったり……
と言うわけで、昨日のようにゴロゴロしていた。
「こなたー晩御飯よー」
ゴロゴロしていたらいつの間にか寝ていたらしい。
私は身体を起こすと、一階へ降りた。
今日の晩御飯はお母さん特製、鶏大根である。
お母さん特製のおつゆがたっぷりと染み込んだ鶏の手羽は、私の食欲を駆り立てた。
その夜。
お母さん特製鶏大根を堪能した私は、再びベッドでゴロゴロしていた。
いつまでもずっとこうしていられたら良いのに。
ずっとずっとお母さんといられたら良いのに。
どうして現実のお母さんは死んじゃったんだろう……
考えれば考えるほど、悲しくなってきたので私はさっさと寝ることにした。
次の日。
私の住む地域で祭りが開催されていた。
元々インドアな私は行く気がしない。
でも、お母さんは突然皆で行こう。と言い出した。
「賑わってるわね〜」
「そりゃあ祭りだしな」
「暑い〜…」
今日は凄く暑い日だった。
空も雲一つない快晴の空。
そして、何故か連れまわされる私。
楽しそうに笑うお母さん。
同じく笑っているお父さん。
……こりゃ、二人の世界に入ってしまってるよ。
「こなた、金魚掬いやろうか」
「うん、良いよ」
金魚すくいの前を通ったお父さんが言う。
まぁ、何もやらないよりかは楽しいだろうから私も参加する。
ポイとボウルを渡され、捕れそうな金魚を探す。
「そりゃ、一匹あがり〜」
早くもお父さんは一匹掬い上げた。は…速い。
「えいっ…ってあれ〜?」
「あ〜ポイが破れちゃった」
私とお母さんは苦戦していた。
掬いあげようとしても金魚は逃げるし、これは絶対いけるッ。と思っても紙が破れる。
「う〜…とれない〜…」
「私も〜…」
結局、私とお母さんは一匹もとれなかった。
お父さんは見事な腕前で十匹近くもとっていた。
「お父さん上手いね〜」
「ふふん、コツと言うものがあるのさ」
「今度私たちにも教えてよ〜」
「そう君だけ上手なのは納得出来ないもんね〜」
「ちょっと、なんだよ〜納得出来ないって〜」
そんな話をしながら今日と言う日が終わった。
今日も一日が始まった。
珍しく私は早起きをしていた。
時計を見ると午前4時。
空はほんのり明るい、清々しい朝だった。
「あ〜…早く起きすぎたな〜また寝よ」
何分経過したのだろう。
……眠れない。
流石に起きたばっかりでは、すぐには寝られない。
無理矢理寝るのもどうかと思うから、たまには早朝散歩にでも行きますとしますか。
ふと外に出ると、お母さんが立っていた。
「こなた、良い所へ連れてってあげるわ。ついていらっしゃい」
私はお母さんな連れられるまま、歩いた。
そこは今まで行ったことのない道だった。
途中で坂道を登る。朝の散歩にしてはちょっとキツイ……
坂を登りきると、今度は脇道へと入った。
そこは舗装などは一切されていない獣道だった。
「ここはね、そう君とよく見に行ってた所なのよ」
目の前にはまさに朝日が登ろうとしている景色だった。
キラキラと輝く朝日は、下の方にある町々を照らしながら登っていく。
「凄いよね〜……」
「うん……」
私はただ呆気にとられていた。
「こなた。今年は忘れられない夏になったわね」
「そうだね。一生忘れられないよ……」
「でも、人っていつかは忘れてしまうよね……良い思い出も、悪い思い出も」
私は何も喋らない。
お母さんが続けて話す。
「でも、忘れた思い出を思い出すことも出来るよね。何かがキッカケになって、それで思い出したり……だから、いつでも思い出せるように記念に一枚」
そう言うとお母さんは、どこからかデジタルカメラを取り出した。
あれ……何で持ってるんだろ?
「そろそろ時間ね……でも、こなたにもう一度会えてよかったわ。楽しい思い出が作れて」
「え……?」
「実は、神様に頼んだのよ。夢でも良いからもう一度こなたに会いたい。と」
「……そうだったんだ」
「…こなた、あなたといられたこの数日間。とっても楽しかったわ」
「私もだよお母さん」
「ありがとう」
カシャ
お母さんはそう言うと、静かにシャッターを下ろした。
「むにゃむにゃ……お母さん……」
「泉〜いつまで寝とんのや」
ゴツ
痛。
気が付くと、全てが元通りになっていた。
世界史の授業。
隣にはちょっと怒り気味の先生。
苦笑しているつかさとみゆきさん。
そして笑いが起きてる教室。
「よっぽど楽しい夢でも見とったんやな〜授業中ずっと寝てたもんな〜後で職員室来いや〜」
「はぅぅ……」
その日の昼休み。
私は鞄の中にデジタルカメラが入っているのに気付く。
電源を入れて、画像フォルダを覗いて見た。
そこには……
ニコニコと笑っている、私とお母さんが写っていた。
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