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君から奪ったもの
作:ERIKA



8.心からの祝福


あれから、相変わらず調子の乗らないまま彼女と付き合っていた。
彼女は受験も終わり、京都の大学に決まった。
今は、友達と卒業旅行に行っている。
この間会った時、一人暮らしの準備を手伝ってほしいと頼まれた。
「ああ、別にええで。」
付き合っているのだから当たり前のことなのだろう。
加熱していく彼女の想いとは反対に、平次は別のことが気になりそれどころではなかった。


和葉は事件に巻き込まれたわけではなかった。

公園にずっといたと言っていた。
でも、まだこんなに寒い真冬の夜、外で何時間もいたのに風邪すらひいていない。

平次は納得がいかなかった。

それから、和葉はいつもと変わらない様子だった。

「俺の考えすぎか?」

特におかしいところは無い。
きっと自分の思い過ごしなのだろう。
平次はいつまでも考えることをやめた。




3月に入り、少し風が暖かくなった気がする。
平次は相変わらず、一人で学校へ行っていた。
和葉は元気だったが、一緒に登校することはやはり無理なのだろうか。
朝っぱらからあんなにうるさいと思っていた声が聞こえない。
認めたくなかったけど、ほんの少し寂しかった。





「へ〜いじ!」


その声に横を向くと、以前と同じ場所に和葉がいた。


「どうなん最近?」

「なにがや。」

「もう〜、先輩のことに決まってるやん!」

「・・・別に。」

「デートしてるん?事件ばっかりやなくて、もっと会ってあげんとあかんよ。」

なにがそんなに楽しいのか。
ほんとは彼女のいる自分がそうでなければいけないのに、和葉と平次が反対の立場のようだった。


「オマエに言われる筋合いはないやろ。」
イライラした気持ちを声に出して言ってやる。

「なんやのその態度!?お姉さん役のあたしがせっかく心配してあげてんのに。」

慌てて謝って機嫌を直そうとしてくるのだと思っていた。
「お姉さん役」という言葉と、今更こうして一緒に歩いてくることに更に怒りを覚える。



「なんなんや、今更。」

「なにが?」

「俺と一緒に歩くんはまずいんやなかったんか!」

「別にええやん、ちょっとぐらい。そうでもせんと平次と先輩のこと聞けへんやろ?」

拗ねてみて、平次をからかうように悪戯っぽく笑う和葉に対し、どうすればいいのかわからない。


「それとも何?先輩のこと聞かれるの照れてんのやろ〜!」


「・・・・・・。」






「なぁなぁ、・・キスとかもうしたん?」


クスクス笑う和葉。

ブチッと自分の堪忍袋の緒が切れる音を聞いたような気がした。



「なんでオマエにそんなこと言われなあかんのや!!!!!」

「別にええやん。幼馴染なんやし。なに怒ってんの?」

「な・・・・オマエはお」
「あ!ゆり〜!」

「おはようさん!ゆり!昨日の数学の宿題めっちゃ難しくなかった?もう、あたし1時間もかかったんやで〜。」

じっと立ち止まり、和葉たちを見つめていたゆりの元へ駆け寄って行き、ゆりと一緒に歩き出す。




調子が狂う。



「・・・・なんなんや・・・・・。」


和葉の態度が癪に障る。

あんなに自分を避けていたくせに。

意味がわからない。

自分が妙にイライラするのもわからなかった。

その場に一人呆然と立ちすくんでいた。




「なぁ、和葉。」

「なに?」

「あんなこと言うて、平気なん?」

「平次のこと?そやかてあの平次に彼女がやっとできたんやで?ここは、お姉さん役のあたしが心配してあげんとな!」

スキップでもしそうなぐらい楽しそうな和葉。


「・・・なんで?なんで、そないに楽しそうなん?」

信じられない。
あんなに大好きで、この17年間、平次しか見てなかったのに。


「あの遅刻魔で、推理オタクの平次に彼女がや〜っとできたんやで?お姉さんはうれしいわぁ。」
泣く真似までして、嬉しそうに話す。


「・・・・でも・・・・和葉・・・あんなに好きやったのに・・・・」

「そうやねぇ。こないだまではな。でも、平次には好きな人おるやろ?もう追いかけても意味ないやん。もう、きっぱり諦めついたし。遠山和葉、卒業までに彼氏作ってみせます!!」


ケタケタ一人で笑って宣言までする和葉に、ゆりは固まっていた。




「ほら、ゆり!早よ行かんと遅刻してまうで!」



平次に彼女ができた時の落ち込みようが嘘のようだった。

無理して笑って、自分は大丈夫だからとバレバレの演技をし続けていた。

でも、和葉は本当に諦めたのかもしれない。

だって、本当に嬉しそうに笑って、ゆりをからかう時のように平次をからかっていた。





「・・・・ほんまに?・・・和葉」




おはようございます。
和葉は平次をきっぱり諦めています。
平次はそんな和葉にとまどって意味がわからなくて。
読んでくださってありがとうございます。











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