4.幼馴染とは
痴漢かと誰もなら思い逃げ出してしまうだろう、でも和葉には誰なのかすぐにわかった。
「・・・・平次。今、帰りなん?」
電灯の灯りに顔の半分が照らされた平次は、怒っているようだった。
これだけ、拒否していたのだ。怒っていることはわかっていた。
「なんでや。」
「なにが?」
「なんで、オマエ最近俺と帰ろうとせえへんのや。」
なんで平次にわざわざそんなこと言われんといけへんのやろうか。
なんでこう、デリカシーっちゅもんが無い男なんやろうか。
「そんなん、・・・彼女に悪いやん。」
「別にオマエと帰っても悪いことなんて無いやないか。」
あたしが嫌なんや。
「あたしやったら、嫌や。」
「あん?」
「彼氏が他の女の子と一緒に帰ってんの見るのは、嫌や。」
そやから、早く先に帰ってえな。
「オマエは幼馴染やないか。」
幼馴染でも、あたしは女なんやで?
「そんなん関係ない。・・・平次はあたしやなくて彼女さんのとこに寄って帰ればええやん。」
自分で言うのが、こんなに辛いとは思わんかった。
「彼女ができたら、彼女のことだけ考えてあげてえな・・・。」
悲痛な和葉の声に平次は困惑する。
「なら、オマエはどうなるんや?」
「さあ、どうなるんやろ?・・・こんなん今までに無かったからわからへんわ。」
平次に彼女ができるなんて想像もつかなかった。
そんな日がすぐにやってくるやなんて、思いもしてへんかった。
「わざわざ変えることなんかないやろが。」
「あたしが嫌やって言うてるやん!!」
「俺はそうは思ってへんわ!!!」
久しぶりに前と同じように一緒に帰ろうと思っただけだったのに、なにがいけなかったのだろう。
「平次は・・・平次はあたしのことなんほっといて、彼女のこと考えてあげんといけんのや!!!」
「そんなけったいな考えなんか、俺はいらんのじゃ!!!」
「「・・・・・・」」
「・・・あたしも、頑張って彼氏作るから、平次、応援してな?・・・」
「・・・応援してくれへんの?」
大人しくなったと思った途端、和葉が言ったことが、早く自分から離れたい、もういらないと言っているように聞こえた。
「・・・・オマエなんか・・・もうどうでもええわ!!!・・・もう勝手にしたらええ!!・・・オマエなんか知らんわ!!!!」
なんで、応援してやると言えなかったのだろうか。
自分は彼女を作っているくせに。
ただ、和葉が言ったことが無償にイライラしてしまった。
再び訪れた沈黙に耐えかねて、平次は和葉を通り越し、走り出す。
暗い夜道に一人、和葉が佇む姿が、最後に見た『和葉』になることなんて、思いもしなかった。
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