28.知らなかった真実
次の日、和葉は部活があると家にいなかった。
蘭は、あることを決意して新一のいる平次の家に向かっていた。
「こんにちは。」
「あら、蘭ちゃんやないの。昨日はウチ、用事があって挨拶もできひんくて、ほんますまへんかったなぁ。」
「あ、いえそんなことないです。新一たちいますか?」
「平次の部屋におるよ。さ、上がってな。」
「ありがとうございます。お邪魔します。」
静香に挨拶し、新一たちのいる部屋へ向かいながら、蘭は和葉に謝った。
(・・・・和葉ちゃん・・・ごめんね・・・)
「蘭。」
階段を昇る音に気づいた新一が、先に扉を開いた。
「服部君は?」
だめだと首を振る。
「昨日はどうだった?」
今度は蘭が首を振る番だった。
「・・・そうか。」
「服部君に、話したいことがあるの。」
平次にも聞こえる声で言った蘭の言葉に、平次もこちらを見る。
平次が座っているベッドまで近づくと、蘭も隣りに座った。
「・・・どないしたんや?俺に話って、なんや?」
まだ昨日のショックに立ち直れていなかった。
「・・・これを服部君に教えるのは・・・悩んだんだけど・・・」
「・・・蘭?・・・言うのか?」
「なんや。工藤も知っとるんか?」
平次には答えず、新一は蘭が言おうとしていることに気づいて、驚いている。
「でも、新一。言わないと、服部君諦めちゃうでしょ?」
「・・・・そうだな。蘭が悩んでそうしたんだから、俺は何も言わねえ。俺もそうすべきか考えてたんだ。」
「ありがとう、新一。」
新一にも了解を得て、蘭は再び平次に向かい合う。
「そやから、なんなんや?」
「服部君。言う前にわかってほしいの。これは、本当は私が言うべきことじゃないの。」
「でも、言わないとこのままかもしれない。これを聞いて、考えてほしいの。本当にもう和葉ちゃんのこと、諦めるのか。」
「・・・わかったわ。」
平次に確認してから、蘭は決意していたことを話し出した。
「・・・・服部君、和葉ちゃんの初恋は誰かわかる?」
「・・・和葉の?山中やないんか?」
「違うよ。その前に、ずっとずっと、想ってた人がいるの。」
「・・・・誰や?」
「昨日言ったけど、和葉ちゃんがなんでお守りを見て、服部君と同じ顔してたか考えてみて。」
蘭に言われたとおり、平次は自分と重ねて考えていた。
ポケットに入れていた携帯をまた取り出して、見てみる。
俺が気づいてなかったお守りを見る顔やて?
どんな顔してるんや?
どんなこと思うて見てた?
俺が、お守り見て思い出すのは・・・
和葉や
「服部君にとって、お守りを見たら和葉ちゃんしか思い浮かばないでしょ?」
「・・・あぁ。」
「くれたのは和葉ちゃんだから、当たり前かもしれないけど。でも、その中に鎖以外に詰まってるものがあるんだよ。」
「なんやそれ?」
「和葉ちゃんの想いだよ。」
「和葉の・・・想い?」
いつも、お守りを持っているか確認してきた。
これは、平次を守ってくれるんやでと言っていた。
和葉も赤いお守りをずっと持っている。
その中に、鎖のかけらが入っているのは知っていた。
「和葉ちゃんの服部君への想いだよ。」
「・・・・・俺への?」
「そうだよ。和葉ちゃんがずっと好きだったのは・・・」
「服部君だよ。」
「和葉ちゃんの初恋も服部君なの。」
和葉が?
俺を好きやった?
今まで知らなかった事実に、喜びで体が震えてくる。
抜け切っていた生気が、戻ってくるようだった。
手にあるお守りをギュッと握る。
嬉しくて、堪らなくて、久しぶりに本当に笑った気がした。
和葉・・・
俺もや
俺もオマエが好きなんや
新一もそんな平次を見て、嬉しそうに笑っていた。
「このことを服部君が知らなかったのは、服部君のせいでも和葉ちゃんのせいでもないの。和葉ちゃんも、気づかれないようにしてたから。」
「でも、本当は和葉ちゃんが言いたかったと思うの。私じゃなくて和葉ちゃんが言わないといけないことだったの。」
「服部君に彼女ができて、言ったらいけないと思ったんだと思うよ。」
「どうする?和葉ちゃんを諦める?」
「そんなわけないやろ。」
気づいていなくて、知らなかった真実は、平次を奮い立たせた。
「おおきに。姉ちゃん。工藤。」
蘭は嬉しそうに笑った。
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