27.永治からの贈り物
まだ和葉に聞きたいと蘭とゆりの顔は言っていたが、新一は平次を見るとこれ以上、和葉から否定の言葉を聞かせるわけにはいかなかった。
「蘭ちゃん、夕食の準備するからそこでゆっくりしててな。」
蘭は和葉の家に、新一は平次の家にお世話になることになっていた。
蘭を残して、ゆり達も今日は帰るしかない。
「蘭。まだ諦めてねえだろ?」
「うん。」
「今晩、和葉ちゃんと話す時になにかわかったら、明日でもいいから教えてくれ。」
「わかった。」
玄関まで見送る途中に、二人は和葉に聞こえないように話していた。
夕食を食べている時も、蘭は何も聞かなかった。
和葉は蘭たちが、こんなに長く大阪にいてくれることはないと純粋に喜んでいた。
そんな和葉を見ていると、平次や永治のことばかり聞くことはできなかった。
風呂も済ませ、二人は和葉の部屋へと向かう。
「ほんまにうれしいわぁ。蘭ちゃんいつまでおれるん?」
階段を昇りながら、和葉が嬉しそうに聞いてくる。
「・・あ、そうだなあ。はっきりと決めてないんだけど、こんなことなかなかできないし、迷惑にならない程度にいてもいいかな?」
和葉には言えないが、二人を戻すまで大阪にいると決めていた。
「ええよ!!春休み中、ずっとおってもええんよ!なんや、蘭ちゃんと姉妹みたいで嬉しいし。」
もし和葉が、蘭たちが平次のことをまた好きになるよう、動いているのを知ったらどう思うだろうか。
寝るまでにまだ時間があったため、二人は思い思いの場所でのんびりと過ごしていた。
「?和葉ちゃん、それ誰の曲?」
しばらく蘭は雑誌を読み、和葉はウォークマンで何かCDを聞いているようだった。
音量で聞こえないのか、和葉はじっと外を見たまま。
リズムに乗ってるわけじゃないし、切ない歌でも聞いてるのかな?と蘭は思った。
途中で邪魔するのは悪いけど、聞いてみたかった。
まだ気づかない和葉の顔の前で、手をヒラヒラさせる。
「ん?なに、蘭ちゃん。」
「あ、ごめんね。それ、何の曲かなぁと思って。」
「これ?ああ、これな。永治が選んでコピーしてくれたんや。」
「へぇ。どんな曲なの?」
「いろいろまとめてくれてるんやけどな。これは、『元気が出るCD特集や!』って永治は言うてたんや。」
「フフ。何、その名前。おもしろいね。」
「やろ?永治、他にも変な名前つけてアルバムみたいにしてんのやで。」
「そうなんだ。誰の曲が入ってるの?」
「あたしも知らへんかったような、インディーズの曲とからしいんや。あたしも、まだ名前は覚えてないんやけど。」
「今度、あたしも聞いてもいい?」
「うん!ええよ。蘭ちゃんにも作ってもらおかな。」
「いいの!ありがとう!」
和葉は一旦耳から外しすと、蓋を開いて蘭に見せる。
「ほらな!おかしいやろ。」
確かに、『元気が出るCD特集!』と、あまり上手くない字で書いてある。
(いい人なんだなぁ・・・。)
自分にもコピーしてくれるかもしれない永治は、今日会った時もそうだったし、いい人なんだと思った。
でも、それが余計に辛かった。
和葉がもう寝ようと蘭に言うと、ベッドに入る。
他にもたくさん作ってあげてるんだろうなと、CDラックを見ていた。
(・・・・他は、ここに置いてないのかな・・・)
一緒に並べてあるCDは、既製品だった。
そんなにたくさん作ってるのかと、また悲しかった。
布団に入り明かりを消したが、和葉はまだCDを聞いていた。
音楽がうるさくて、寝れないのではないかと思う。
「和葉ちゃん。」
蘭は体を起こし、ベッドに寝ている和葉の腕を軽く叩いて呼んだ。
「何?」
目を瞑って聞いていた和葉は、今度はすぐに気がついた。
「いつも聞きながら寝てるの?」
「そうやで。」
「寝れないんじゃないの?」
「そんなことないよ。永治の選んだ曲やもん。どれ聞いても落ち着いて寝れるんやで。」
そうかなぁと思ったが、和葉はそれだけ永治のことを好きなのかもしれない。
「なぁ、蘭ちゃん。」
「なに?」
「工藤君と一緒におる蘭ちゃんをずっと見れるやなんて、ほんま嬉しいわ。」
「・・・・・・。」
あぁ、自分は和葉になんて言ってあげたらいいんだろう。
「和葉ちゃん、ありがとう。・・・・・私は・・・・」
「ん?」
「和葉ちゃん・・・・本当にもう服部君のこと・・・・・なんとも思ってないの?」
「うん。ほんまなんや。・・・・蘭ちゃん、悲しませてしもてごめんな?ずっと応援してくれてたんにな。」
「・・・・う、ううん。・・・・・いいの・・・大丈夫・・・和葉ちゃんの・・・せいじゃないからね・・・・」
なにが大丈夫なのか、わからなかった。
平次じゃない人を好きになったことが?
それを見ている自分が?
誰のせいでもないことはわかっていた。
CDを聞いたままの和葉の寝息が聞こえてくると、蘭は押し隠していた嗚咽を堪え切れなかった。
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