19.初めてのキスと涙
和葉を諦めないと決めたけど、和葉が自分の想いに答えてくれる自信はなかった。
こうして彼女を待つ間も、そんな結果になってしまったらと考えてしまうばかりで、怖くて堪らない。
彼女に電話をした時、友人と買い物に出かけていた。
バイクで駆けつけた方が早いし、友人との買い物を中断させてしまうことにも気が引けたので、近くの公園で会うことにした。
バイクを停め、公園のベンチに座っていた。
「平次君。」
振り向くと、永沢 葵がもう傍に立っていた。
「あ・・・あぁ、すまんな。買い物の途中やったやろ?」
これから告げることを考えると、目が合わせられない。
「ううん。別に構へんよ。三人でおったから、二人には後で合流するて言うてるし。」
隣りに座った葵の顔は見えなかったが、その声に喜びはなかった。
「・・・・・それで・・・・話なんやけど・・・・」
「待って。」
いざ、気を引き締め直して話し出そうとすると、突然止められる。
「・・・なんや?」
「一つ、聞いてもええ?・・・・ちゃうわ、二つやわ。」
「・・・・ええで。先輩から先に言うてくれ。」
何を言われるかわかっているのか、わからないのか、はっきり言えないが、これまでの自分の行動を振り返れば、葵の言いたいことがわかるような気がした。
「・・・・平次君。・・・・・なんであたしのこと、葵って呼んでくれへんの?」
(・・・やっぱり、気いついてたんやな・・・・当たり前か・・・・)
なんて、答えよう。
いや、理由は一つしかない。
「・・・・そ」
「あともう一つ、・・・・・・なんで?・・・なんでキスもしてくれへんの?・・・・」
答えは一つにまとめられるやろ?
そういう意味も含まれている気がした。
「・・・・それは・・・・・俺は・・・先輩に・・謝らんと、いけんことが・・・あるんや・・・・。」
いつのまにか、向き合っていた。
葵の目には、涙が溜まっていく。
「なんで!?なんで今更・・・ひどいやんか!!!・・・あたしが、どれだけ喜んどったかわかる?」
「それはわかってるんや・・・そやから・・俺はちゃんと」
「あたしのこと・・・好きになってくれたから、付き合ってくれたんやないの!?」
「・・・・あん時は・・・・すまん・・・ほんまに・・」
大声で叫ぶ葵の声に、通行人も振り向いている。
「あたしは、そんなん聞きたくない!!!あたしは、平次君とこれからも付き合うで!!!」
「先輩・・・・ほんまに・・・傷つけてしもうてすまん・・・でも・・・俺は・・・」
「あの子のことやろ!!!!」
葵が誰のことを言いたいのかは、合っているだろうから理解できた。
でも、なぜ公園の外に向けて指を指しているのか、わからなかった。
・・・・・・和葉?
入り口に永治と二人で並んでいる。
じっと、こちらを見ている和葉と目が合う。
思わず立ち上がって、和葉のもとへ行きたいと体が動く。
「遠山さんには・・・絶対に、服部君を渡せへんから!!!」
また、そう叫ぶ葵の顔が気づくと目の前にあった。
葵の肩越しに、和葉と目が合ったまま。
「・・・・な!?なにするんや!!!・・離れんかい!!!」
我に返って、葵を突き飛ばしてしまう。
「あたしは、彼女やで?キスするのが、なんでおかしいん?」
「・・・・・和葉」
違うんや。
これは、俺がしたくてしたんやないんや。
葵には答えず、すぐに和葉に弁解したかった。
でも、和葉はただの幼馴染の自分が誰とそんなことをしても、気にもしないだろうと気づく。
そう思ったのに。
まだ立ち止まってこちらを見ている和葉が。
泣いているのに気づいた。
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