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彼岸の小道
作:灯夜


アスファルトの緩やかな上り坂
木陰の小道
穏やかな海風

そのどれもが舞と良くあっていると思った。
一歩前を歩く彼女は振り返り微笑みかける。
『夏なのにここは涼しいね、蝉の声もやけに遠いよ。』
舞は家こそ遠かったが幼稚園、小中学校まで一緒だった。
思い出せば、たいてい二人で過ごしていた。
高校も同じにしたかったが、天文学者を志す俺と、公務員希望の舞。
別々の高校に行くことになったけど、登下校の電車は待ち合わせて同じ車両だった。
そして俺は、大学に行き地元を離れた。
この道を使うようになったのは三年前。
思えばここを通る時は、いつも穏やかな天気だった。
『こんな涼しいのも良いけど、暑い中で冷えたラムネ飲むのも良いと思わない?』
「ビールの間違いじゃないのか。」
『ビールってお腹に溜まるから嫌いなの。』
いつの間にか隣に並んだ舞が手をつないできた。
見つめると、満面の笑顔が返るだけ。
「熱い。」
『素直じゃないやつ、嬉しいくせに。』
何でもないやり取りが嬉しかった。
並木の木陰は途切れ体感温度はぐっと上がった。
『まだまだ、夏なんだねえ。』

『どうかしたの?』
「なんでも、ただ」
『ただ?』
「日頃使わない道なのに、久しぶりに来てもぜーんぜん変わんねーなーと思って。」
苦笑いが返ってくる。
わかってるよ、俺自身が変わらずにここに来ている。
それが、変わらずにいて欲しいという事なんだ。
変わらない日々が続く事を願っていた。

在りし日の影は消え
目的地に着いた

丘の上の墓標、眼下に俺たちの過ごした町。
「舞、今年も来たよ。」
花束を添え墓前に向かう。
「俺は、宇宙開発事業団で研究をするよ。」
「ずっと、頑張ってきたんだ。」
「まだ好きなんだ。」
この気持ちがいつまで続くのか分からない。
誰かと出会い恋をするかもしれない。
このまま、舞だけの自分でいるのもいいかな。
でも、この好きな気持ちがある限り。
ここに訪れ続けよう。

祈り終え、背を向けた夏の日差しの中
懐かしい香りの
優しい風にそっと後ろから抱きしめられた。


最後まで読んで下さってありがとうございます。
初めて投稿した灯夜です。
未熟者ですが、頑張って行きますのでよろしくお願いします。













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