第一話 「犯人」
「ひかる、新しい仕事が来たんだけど?」
せっかくの休憩時間、少しくらいは休ませて欲しい。それが今のひかるの願いだった。
「何、新しい仕事ぉ? もういいよ。適当に断って!」
最近、ひかるは大忙し。今日も有名ブランド雑誌の撮影の休憩時間だった。
だからひかるはマネージャーの冨田にそう言った。
だが、冨田はこう言った。
「何か、生放送らしいよ。題名がかくれんぼだって」
そんな子どもが遊ぶ名前にひかるは苦笑いした。
「何それ? うけるんだけど。てか、それいつやるの?」
その質問にマネージャーの冨田は答える。
「いや、何かOKしないと教えてもらえないんだよ。だからこうやって訊いてるんだけど……。どうする?」
ひかるは、悩むそぶりを見せてからこう言った。
「何か面白そうだからやってみる。生放送だし」
その答えにマネージャー冨田は言う。
「もし、違う仕事が入ってたらどうするの?」
ひかるは、だらしない格好で椅子にもたれていたのを直し、机の上に置いてある飴を一つ口の中に放り込み、適当に言った。
「キャンセルしといて」
その言葉に、マネージャー冨田は溜め息をついたのだった。
そうして数日が経つとひかるの携帯に一本の電話が入った。
ひかるは、すぐにマネージャーの冨田だと思い、すぐに携帯を手に取りディスプレイを見るとそれはマネージャーの冨田ではなく非通知からだった。
「何よ、非通知って……。こういうの変人さん多いからなぁ。出ないほうがいいよね」
そう呟き、そのまま電話に出る事もなくひかるは携帯をベットに投げた。
「ほっとけばそのうち切れるしょ」
そう考えていたひかるは、そのまま自分の部屋を出て行ってしまった。
そして、戻ってきたのは約五分後だった。
「嘘ー、まだ鳴ってるよ……」
ベットの上にある携帯を眺めながらひかるは気味が悪いと思った。
ひかるは、それを無視しながら勉強椅子に寄りかかり教科書を手にとって机の上に広げ、勉強を始めたのだった。
それから、五分、また五分と過ぎて行くのだが一行に鳴り止まない。勉強にも集中できず、とうとうひかるは怒りの頂点までに達した。
「あぁ! もうわかった! うるさい! 今出ます!」
椅子から立ち上がり、ベットの上にある携帯を取ろうとした時……。
「あれ?」
音が鳴っているのに、肝心の携帯が無かった。
「あれ? あれれ?」
ひかるは、ベットの上に被さっている布団を剥いでみる。だが、無い。
すると、シーツの下に何かがあるのが分かった。
「嘘……携帯?」
ひかるは、シーツまで剥ぐとそこにはハートのキーホルダーのついた携帯があった。それは間違いなく、ひかるのものだった。
「何で……こんなところに……」
そんなこともお構い無しに、ひかるの携帯はいまだ鳴り続けている。
ひかるは、それに手を伸ばし手に取るとディスプレイを見た。やはり、先ほどと変わらずディスプレイには「非通知」としか表示されていなかった。
ひかるは心臓をドキドキさせながら、その電話に出たのだった。
「は、はい。どちら様ですか……?」
そう訊ねると、聞いた事もない高い声が返ってきた。
「はい、わたしは被害者です」
その言葉に「は?」と答えるひかる。
高い声は、こう電話の向こうで言った。
「あなたは……犯人ですね? わたしは見ました。人を殺すところを……。ホラ、今だって……」
その意味の分からないことを話している電話の相手にひかるは言ってやった。
「ちょっと! 迷惑電話よこさないで! あんた、本当にだれ?」
すると電話の相手は、もっと高い声で笑い出したのだ。
「え……」
気味が悪くなったひかるは、電話を切ってしまった。
ツーツーツーという音が聞こえてくる。
「一体……何なのよ!」
ひかるは、しばらくその場で動けずにいた……。
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