警視庁本部庁舎6階
Welcome To The Jungle (1)
地下鉄の駅というものには季節感が足りない。汗ばむような初夏の暑い日の筈なのに駅構内には涼気が漂っている。
新木場方面側の階段を足早に上がると改札口が見えてくる。ユニットICケースをかざし改札機を通り抜けるとスタンド型AEDが自然と目の片隅に止まった。
都会人は往々にして運動不足だと言われがちだが、あまりそうは思わない。駅の乗り継ぎや構内の複雑な構造を鑑みると、兎に角よく歩かされるし階段の上り下りがやたらと多い。座席に座ろうなんてもっての外だ。どこまでの事実確認が成されているのか定かではないが、往々にして日本人はアメリカ人に比べ足腰が強いとされるのも少しは納得のいく話である。
4番出口の看板を目で追い、若干歩を早めると案の定また階段があった。構造上仕方ないのかも知れないが、随分曲がりくねった所にあるものだ。歩を緩めることなく4番出口の階段を上りきると真っ先に目につく壮観な建物がそこに広がっていた。
流石に今日は暑い。外気に触れた途端、一気に季節感が舞い戻ってきた。息を整えるように歩を緩め、多少緊張した面持ちで今日からの職場になるその建物の玄関先へと向かう。
同業者の匂いを十分に感じていながらも制服が目を合わせてきた。手帳を片手で開いて見せるとすかさず敬礼をする制服。見学ツアーとでも言ってみればどうなったのだろうと自嘲気味に思いながら玄関をくぐった。
大きなマスコットぬいぐるみの横に受付の机がぽつんとある想像以上に狭いフロアを一瞥しエレベーターの場所を確認した後、再び歩を進める。ボタンを押すまでもなく扉が開き、数人の男が慌しげに押し出て来た。その様を見送り、入れ替わるようにエレベーターに滑り込むと数字の「6」と書かれたボタンを親指で押し込んだ。
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