第五十四話 闘いの後【参】
─二週間後・・・・・・
「《二大組織に対する三大機関》《為政者の研究から派生す二大組織》《二世代に渡る捜査と陰謀》その他諸々・・・・・・」
新一の病室だった。
快斗が持ってきた新聞の見出しを端から口にしている。
新聞には、壊滅した組織の特集が組まれており、各紙の半分以上をその記事が占めていた。
「ほんでも、何で今まで記事にならんかったんや。警視庁が握りつぶしたんかと思ったわ」
と、平次が言った。
「ICPOがアメリカ政府に事の次第を話して、ロシアとアメリカが和解するのを待ってたんだってよ。いきなりアメリカ政府の耳に入りでもして、冷戦が加熱したら元も子もないからな」
そう、新一が答えた。
隣には当然だが蘭がいる。
「第三次世界大戦の防止っちゅうわけか。ICPOは目的を達したわけやな」
「ああ、これで事件は本当に終わったんだ・・・・・・」
そう言って新一は伸びをしてた。
そこに快斗が不意打ちを掛ける。
「お前の事も出てるぜ、新一。《陰で動いていた平成のホームズ》だとさ」
「・・・・・・なんて書いてある?」
「《ここ半年、消息を絶っていた『平成のホームズ』こと工藤新一君(17)が、その間今回の事件の主犯と思われる組織を追っていたことが昨日発覚した。警視庁によると、工藤君は組織の一員に毒薬を飲まされ体が幼児化し、身を隠す必要に迫られたとのこと。しかし、それにも関わらずFBI等と協力して捜査を続け、傷を負いながらも逃亡していた最後の構成員を逮捕に追い込むなど、目覚ましい活躍をした模様である。警視庁目暮警部らは彼に警視総監賞を申請している。弱冠17才の名探偵。今後の活躍を期待したい。》だってよ。良かったじゃねえか、新一!」
だが、新一はあまりうれしくないように見えた。
「じゃあな、また来るぜ」
快斗と平次は部屋を出ていった。
「『また来る』って・・・・・・・ひょっとして、新一、あの二人に知らせてないの?」
「まあな」
「どうしてよ?」
「今日ぐらい邪魔されずにお前といたかったんだよ・・・・・・退院したその日ぐらいなな・・・・・・」
そして、病院を出る準備に取りかかった。
つまり今日は退院の日なのだ。
荷造りをしながら、蘭に話しかける。
「ってなわけで、今晩空いてるか?」
「え?・・・・・・・うん、空いてるけど」
「決まりだ。飯でも食いにいこうぜ・・・・・・今夜八時に・・・・・・」
──フランス マルセイユ
あるバーに一人の男が入ってきた。
「・・・・・・・・・いらっしゃいませ・・・・・・工藤優作さん」
店のマスターが言った。
「・・・・・・ばれましたか・・・・・・」
策を見抜かれた優作は変装を解いた。
「さすがは、盗一さんだ。なぜ分かりました?」
「ははは、私を騙そうと思うなら胸ポケットの万年筆は隠すべきですよ」
店のマスター、盗一は言った。
つまりここは盗一が経営しているマジックバーである。
「うむ、抜かりましたな・・・・・・」
「私も同じように正体を見破られましたからね」
盗一は、長さ七センチ、幅一センチ程の四角い棒を取りだした。
表には6と書かれている。
それを裏返した。
そこには9と書かれている。
「足すといくらですか?」
「15」
棒を一撫でする。
すると6と書いてあった所に15へと変化した。
裏も同様、9が15になっている。
「この動作をカードでしている所を、見咎められ、正体を見破られた・・・・・・何たることか・・・・・・」
病院で優作が盗一の変装を見破ったのはこういうことだ。
「・・・・・・それで、何か問題でも起こりましたか?遠路遙々日本からいらっしゃるとは・・・・・・」
「いえいえ、日本の新聞を持ってきただけですよ」
盗一はグラスを磨いていた手を止めた。
「それは興味深い・・・・・・」
盗一はそれを手に取った。
「ようやく終わりましたね・・・・・・新一君の怪我はどうです?」
「すっかり良くなりましたよ、今日退院です」
「それは良かった・・・・・・」
優作は出されたコーヒーを一口啜った。
「多分今頃は、蘭君と食事でもしてるんじゃないですかねぇ・・・・・・」
壁の掛け時計が正午を知らせた。
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