第五十三話 闘いの後【弐】
「・・・・・・さてと・・・・・・」
長い話しの後、盗一は自分の息子にに向き直った。
「父さんは母さんとフランスで過ごすつもりだ。日本国籍は抹消されているからな・・・・・・お前はどうする?」
快斗は大して考えるまでもなく、即答した。
「決まってんだろ、日本に残る。マジックの本場アメリカなら悩むとこだけど、フランスじゃあね・・・・・・」
と言いながらも、青子の方をちらりと盗み見る。
だが、盗一はその一連の動作を見逃さなかった。
そして、薄く笑みを浮かべた後
「・・・・・・まあ、そういう事にしておいてやろう・・・・・・」
と、息子に大打撃を与えた。
羞恥心と怒りで真っ赤に染まりながらも、快斗が応戦を試みる。
が、あまりの感情の高ぶりに脈絡のない単語を数個連発する事しかできなかった。
「青子ちゃん。『これから先』快斗のことを頼むぞ」
とどめを刺した。
「・・・・・・ほんで、親の不在をいい事に、二人は昨晩から朝に掛けてぴったりとくっついて、離れることがなかったとさ・・・・・・」
「うるせえ!」
平次の言葉を遮って、快斗が叫んだ。
だが平次は続ける。
「せやけど、大したことやないんやろ?今までも機会をうかがっては『あいびき』・・・・・・・」
「黙れ!黙れ!黙れ!」
「ここまで怒るんなら、図星やな。『お熱い』ことで・・・・・・」
「・・・・・・これ以上一言でも発してみろ、平次。すぐさま『消して』やる」
『Disappear』なのか『Kill』なのか。
通常なら必然的に後者の意味だが、マジシャンである快斗なら前者も可能だ。
「中森の姉ちゃんの事になるとすぐ『熱く』・・・・・・冗談や冗談!」
快斗がスナップ・フィンガーのポーズをしたのを見て、平次は慌てて言った。
本当に消されてはかなわない。
手を元に戻した快斗はここぞとばかりに応酬する。
「そっちこそ、どうなんだよ?」
「何のこっちゃ?」
天然かわざとか――おそらく前者だろう――平次は訊き返した。
「とぼけるな。お前の和葉ちゃんに対する態度を見れば一目瞭然だ。前までは和葉ちゃんに何か頼まれる度に嫌そうな顔してたけど、今は、何か言われるとホイさとばかりに従うじゃねぇか」
通常ならば顔を赤くするなり、言葉に詰まるなりする所だが、この鈍感男は平然と次のように言った。
「なんや、気付いとったんか。確かに和葉と付き合いよるで・・・・・・お前に見抜かれるとは思わんかったけどな・・・・・・」
「宝石の鑑定を一瞬で済ます俺の目を甘くみるなよ・・・・・・んで、いつ告白したんだ?」
復讐が完全に空振りに終わり、快斗が気の抜けた声で訊いた。
「お前の親父さんに会う前やな。病院の屋上でストレートに」
「・・・・・・お前な、学校の屋上ならまだしも、病院の屋上ってなんだよ・・・・・・よくOKしてもらえたな・・・・・・」
「悪いんか?」
「当たり前だ!」
その時部屋のドアが開いた。
忘れていたがここは快斗の部屋である。
「快斗、和葉ちゃんと買い物に行くから付いて来て」
「平次、そうゆうことやから付いて来て」
青子と和葉が顔を覗かせた。
快斗が代表して、平次と共通の疑問を口にする。
「なんで?」
女性陣二人は謀ったかのようなタイミングで答える。
「「荷物持ち!」」
翌日、平次と快斗は足腰が立たなかったとか何とか・・・・・・
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