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奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第五十二話 闘いの後【壱】


――翌日 阿笠邸
「博士、コーヒー炒れてちょうだい・・・・・・」
そう言うが早いか、志保はソファーに沈み込んだ。
「進み具合はどうなんじゃ?」
そう訊きながらカップを取り出し、薄めに調節したコーヒーを炒れてやる。
角砂糖は三つ。
通常なら多いかもしれないが、疲れた体には丁度良いだろう。
「とりあえず一段落ってとこかしら。でも、先は長いわ・・・・・・」
「期待しておるよ『志保君』」
志保が現在取り組んでいるのは、APTXシリーズの平和利用だ。
中々に骨の折れる作業らしく、現に志保の顔には疲れの色が見てとれた。
それを追い払うかのようにカップに口をつける。
その時、インターホンが鳴った。
「はて?誰かな・・・・・・」
博士は玄関に向かったが、すぐに戻って来た。
一人の男を連れて。
「志保君、君にお客さんじゃ」
入って来たのは赤井秀一だった。





「君には謝らなければならない」
促されて席に着くや否や言った。
「お姉さんを守ってやれなくて、本当にすまなかった・・・・・・」
そして、深々と頭を下げる。
志保は言った。
「いいのよ、過ぎた事たもの・・・・・・それにお姉ちゃんの仇はとってくれたんだし・・・・・・」
それでも、彼は頭を下げたままだった。
「・・・・・・頭を上げて・・・・・・義兄にいさん・・・・・・」
そう呼ばれた男は驚きのあまり顔を上げた。
さらに、志保は言う。
「お姉ちゃんの恋人だもの。そう呼ぶのが自然でしょ?確かにいろいろあったけど、それは変わらないわ。だから・・・・・・」
志保は手を差し出した。
「これからは兄妹として生きていきましょう。これからもよろしく、義兄さん」
二人は数年振りの真の笑顔と共に、互いの手を握り合った。





「・・・・・・新一?」
病室のドアを開け蘭が入って来た。
「何してるの?」
食事用のプレートをベッドの柵に取り付け、当の本人は上半身を起こしていた。
その上には封筒が三つ、そして同じ数だけの便箋が置いてあった。
「ああ、これね・・・・・・」
そう言って、その内の一つを蘭に渡す。
蘭は怪訝な顔をしてその文面に目を通していたが、読み終える頃には微笑んでいた。「そっか・・・・・・あの子達には何も話してないもんね・・・・・・」
「ああ、悪いことしたな・・・・・・でも、今全てを話すわけにもいかない。複雑すぎるからな・・・・・・」
「そうね、・・・・・・十年後か・・・・・・」
蘭は便箋をもとに戻した。
「まあ、こういうやり方もありなんじゃない?」
そして、新一に詰め寄る
「でも『誰かさん』はわたしにも未だにすべてを話してくれないのよねぇ・・・・・・」
「あ、いや、それはだな・・・・・・」「分かってるわよ、どうせ、こんな場所じゃ恰好がつかない、とでも思ってるんでしょ?意地っ張りなんだから・・・・・・」
「仰せの通りで・・・・・・」
「ま、期待してるわよ・・・・・・」
そう言って、蘭は暫く考えるような仕草をしていたが、やがて新一の頬にキスをした。
「・・・・・・まあ、今の段階ではここまでよね・・・・・・」
真っ赤になっている新一を尻目に
「部活があるからまた後でね」と付け足して部屋を出ていった。



(さて、どうするか・・・・・・)
部屋に残された探偵が困惑していたのは言うまでもない。
















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