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奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第五十二話 和訳の齟齬


「そして、もう一つのイレギュラー・・・・・・」
盗一は新一の方を見た。
「高校生探偵工藤新一君の幼児化」
自分たちが関わっていた事件の壮大さ。
その場の全員が息一つ立てずに聞き入っていた。
少しずつ糸が解れていく。
今、話題に上っている人物に言わせれば、それが探偵の楽しみだと言うだろう。
「これも、私たちにはメリットとデメリットをもたらしました。デメリットは言うまでもありません。追っている組織の危険度が増したことです。そして、メリットは新一君の持っている情報が工藤優作さんを通じて、我々の手中に入ることです」
すると、新一は眉をひそめた。
そして、優作に言う。
「おい、父さん。それは初耳だぜ」
涼しい顔で優作は答える。
「そう、目くじらを立てるな。組織の大きさについては盗一さんからよく聞いていたから、お前を海外に連れ出せない以上、情報提供をして早めに組織を潰すのが得策と見たのさ」
「・・・・・・なるほど。あの時に言ってたICPOの知り合いってのが、盗一さんだった訳ね・・・・・・」
新一は、両親に反対して日本に残ると言った時のことを思い出していた。
あの時に気づくべきだったか・・・・・・
「優作さんから新一君の幼児化を聞かされた後、我々は情報を集める為に日本にもどり、そして、私を含む幾人かは新一君の周りの警護をしました。その間に情報を集めることができたのは言うまでもありませんけどね。そういったときでした。新一君達が組織でジンとウォッカと呼ばれる人物に遭遇し、杯戸シティホテルで一悶着あったのは」
話がだんだん最近に近づいてきた。
「彼らの視点から見て何があったかは周知のことだと思うので割愛させていただきますが、私もその現場にいて、探偵バッジの電波を傍受して彼らのやり取りを聞いていました」
「博士に盗聴防止機を付けさせないといけませんね・・・・・・」
新一が冗談めかして言った。
「いや、付いていない方がいいと思うよ。現に役に立ったからね・・・・・・そのやり取りを聞いている中でAPTX4869のデータが入ったMOが作業員のツナギの中に入っていると言うことを聞きました」
と言うことは・・・・・・
「私はそれを回収するために、ジン達が部屋から去った後で酒蔵に侵入し、目的を達しました。後は知っての通りです。私はそのMOを宮野志保──当時の灰原哀に届けました。時が来るまで口外しないようにという書き置きを添えて・・・・・・」
それを聞いて蘭が驚きの声を上げた。
「でも、燃えさかる炎の中に入るなんて・・・・・・」
新一が答える。
「盗一さんじゃないとできなかっただろうな・・・・・・」
さらに続ける。
「炎の中からの脱出を幾度と無く演じてきた盗一さんだからこそできたんだ。そうでないと、炎の中に飛び込むなんてことは、素人には百パーセント不可能だからな・・・・・・」










「さて、ここであなた方FBIの登場です」
盗一は秀一とジョディの方を向いて言った。
「それからしばらくして、FBI、さらにはCIAも組織を追っているという情報が入ってきました」
盗一は続ける。
「一時期は、我々の役目は必要ないのではないかという意見も出ました。我々が何もしなくてもFBIとCIAが組めば確実に奴らを追いつめるはずだからです。しかし、その内、彼らは持っておらず我々だけが持っている情報があることが発覚します。それは組織の海外支部が存在していることです」
秀一がそれに応じた。
「ええ、確かに我々は支部の存在を知りませんでした。それを知ったのは日本にある本部を解体に追い込んだ後ですからね・・・・・・」
盗一は
「そうでしたか」
と言い先を続ける。
「それを考慮したとき我々の今後の方針が決まりました。支部を先に叩いては奴らに怪しまれFBIとCIAの捜査に支障をきたす。だが、手をこまねいているのも釈然としない。ならば、支部を徹底的に洗い出し、本拠地を彼らが叩くと同時に攻めればいい。我々ICPOはそう決議しました」
「じゃあ、奴らの支部は・・・・・・」
ジョディが言った。
「三日前に壊滅。跡形もありませんよ・・・・・・」
「以上が」
盗一はやや間を取った。
「長い年月を掛けICPOが裏で取っていた行動のすべてです・・・・・・・・・」
これほどの大きな立ち回り。
これを誰にも悟られることなく行っていたこと。
その場の全員が呆気にとられていた。









「じゃあ新一と志保ちゃんを助けたのも親父だろ?」
快斗が言った。
「そう考えると、疑問が全て解決する。まず変声機に関して。あの謎の人物が親父なら、変声機なんて必要ない。どんな声でも自由自在だからな。よってスイッチが切れていた事も説明が付く。あの変声機は奴らを撹乱するための物だった。生駒山の件に関してもまた然り。俺達の捜査の手助けになればと思ったんだろ。そんでもって最後に新一を助けたのも親父以外に考えられない。あんな高い所からの救出なんてハンググライダーでもないと不可能だからな」
盗一は感心したようだった。
「ほう、新一君達のおかげで推理力が上がったようだな。その通りだ」
「へ〜、FBIにCIAさらにはICPO・・・・・・」
快斗は驚きにため息をついた。
新一もそれに同意するかのように口を開いた。
「ああ、俺も知った時は驚いたぜ・・・・・・米花総合病院でだけどな・・・・・・」
「・・・・・・あん?」
何気なく聞いていたが、最後の部分が引っかかったのか平次が口を開いた。
「米花総合病院やと?」
新一が説明する。
「『灰原』が入院していたとき元太達が見舞いに来たんだけど、その時に元太が外人とぶつかってこう言われたんだとさ。『お元気ですか』ってな」
「勿体ぶらんとはよ言えや、それがどないしたんや?」
平次がカリカリして言った。
「これはフランス語が関係するんだ。フランス語で『大丈夫ですか』は『Ca va?』だけど、これは『お元気ですか』という意味で使われることの方が多いんだ。つまりその人は日本に来たばかりで訳を一通りしか覚えてなかったのさ。それで思ったんだよ。組織を追っている俺達の周りに、日本に来て間もないフランス人が居るって事は、ひょっとしたらこの事件にはICPOが関わってるんじゃないか、ってね」
「ほー、なるほどな・・・・・・」
だが、優作が口を挟む。
「よくできた、と言いたいところだが、もっと早く気付くことができたはずだぞ、新一・・・・・・」
「え?」
優作は懐から例の変声機を取りだした。
「父さんがもってたのか?」
だが、それには答えず、それを裏に向ける。
「No.931615だ・・・・・・」
優作は変声機の製造ナンバーを指して言った。
「・・・・・・!」
「気付いたようだな・・・・・・」
新一は頷いて言う。
「9、3、16、15で区切って考える。そして、それに対応するアルファベットを当てはめる・・・・・・だろ?」





9、3、16、15

それぞれに対応するアルファベットを当てはめる
つまり、アルファベットの九番目、三番目、十六番目、十五番目

浮かび上がる文字は・・・・・・


I C P O





















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