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奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第四十三話 任務とアクシデント


「・・・・・・目暮警部!?」
パトカーの中から出てきた小五郎と目暮警部を見て、高木刑事が頓狂な声を出した。
「どうしてここに?毛利さんと現場に行くんじゃなかったんですか?」
「ああ、そのつもりだったんだが・・・・・・」
小五郎が言った。
いつになく真剣な顔をしている。
目暮警部が話の続きを始めた。
「そこに行く途中で毛利君の携帯に電話があってな。その電話の相手はこう言っていた『今晩ここで何かが起こる』とな。」
「でも、ただのいたずらって事も・・・・・・」
「まあな。だが、電話の相手は変声機か何かで声を変えていたらしい。いたずらにしては手が込んでいると思わないかね?」
「・・・・・・なるほど・・・・・・」
「それに、その電話の相手はこう言っていたらしい・・・・・・」
その顔が一層真剣になった。
「『この件には工藤新一が関わっている』とね・・・・・・」
その話しを聞いていた警官たちの間を、沈黙が襲った。
「じゃあ、工藤君は・・・・・・」
「断定はできん。だが・・・・・・」
その言葉は途中で遮られた。
「警部!」
警官隊の隊長の声が響いた。
「入り口から誰か出てきます!」








ジンは気付かれないように懐に手を入れた。
痛みで震える手を駆使して薬品ビンの感触を確かめる。
赤井秀一の方を見た。
建物の下に集まるパトカーの方を見ている。
この時とばかりに、薬品ビンをこっそりと取り出す。
地面にビンを置き蓋を取った。
「・・・・・・甘いな・・・・・・」
不意に頭上から声が降ってきた。
同時にビンが取り上げられる。
「偶然やって来たパトカーをミスディレクションにしようとしたんだろうが、そうは問屋が卸さないぞ・・・・・・」
取り上げたビンを興味深そうに見ている。
「これが五分で効く魔法の傷薬か・・・・・・」
「なぜ、それを知っている?」
ジンは、忌々しさと驚きが混ざった顔をして聞いた。
「こっちには有力な証言者が二人もいるんでね・・・・・・」
そう言ってから、その両方が義理の父と妹になる筈だった事に思い当たった。
明美が殺されなければ確実にそうなっていただろう。
だが、明美が死んだ今はどうなのか。
考え方によって、二人とも親戚であるとも言えるし、そうでないとも言える。
いまいち断定ができない。
そもそも、それ以前に、そんなことを考える権利が今の自分にあるのだろうか?

(・・・・・・『捜査に私情は必要ない』か・・・・・・)

「酷い言葉だな・・・・・・」







「工藤君!それに蘭君!?」
入り口から出てきたのは、新一と蘭だった。
二人が近づいて来る。
「佐藤刑事・・・・・・・蘭を頼みます・・・・・・」
「分かったわ」
蘭が佐藤刑事に支えられて傷の治療のため救急隊の方に向かった。
そこまで、見届けた新一はホッとしたのかパトカーに凭れ掛かった。
穏やかでなかったのが小五郎だ。
「新一!貴様!」
「待て!毛利君!」
今にも新一に殴りかかろうとした小五郎を、目暮警部が抑える。
その刹那、新一が崩れ落ちた。
高木刑事が慌てて駆け寄る。
そして、傷口を見た途端に顔色を変えた。
「腹部を打たれてます!重傷です!」
それを聞いて、目暮警部も慌てて駆け寄った。
「なんて事だ、工藤君はこんな体で蘭君を支えていたのか・・・・・・」
「とにかく、もう一台救急車を・・・・・・」
高木刑事がそう言いかけた。
だが、言い終わる前に、誰が呼んだのか敷地内に救急車が入って来た。


「いったい、誰が通報を?」
救急隊員の一人に目暮警部が聞いた。
「名前も名乗らずに、ここに来いとしか言わなかったので、よく分かりませんでした・・・・・・刑事さんの一人じゃないんですか?」
「違います。どんな声でしたか?」
「・・・・・・これといって特徴はありませんでしたが、女の人の声でしたね」
「女ですか・・・・・・」
「ええ・・・・・・では、私はこれで・・・・・・」
新一を乗せた救急車が走り出すところだった。






「・・・・・・佐藤刑事、新一は?」
傷の手当てを受けている時、蘭が佐藤刑事に聞いた。
「救急車で運ばれたみたいよ。詳しくは分からないけど・・・・・・」
「・・・・・・わたしも病院に行きます」
蘭は今にも立とうとしたが、包帯が巻かれた足ではできるはずがなかった。
「無理しちゃダメよ、まだ痛むはずだし・・・・・・」
「・・・・・・でも、新一の方がもっと痛くて苦しい筈なんです。傍に居てあげたいんです・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
佐藤刑事は少し迷っているようだった。
一方の蘭は、机にしがみついてでも立とうとしていた。
それを見て、
「・・・・・・分かったわ・・・・・・」
佐藤刑事が折れた。






「・・・・・・FBIの赤井秀一さんですね?」
「そうです」
「これから、事情聴取をしますが、今度こそは全てを話してくれますね?」
「・・・・・・保証しかねます。まだ、解明できていない部分があるので・・・・・・」







―米花総合病院
「「蘭ちゃん!」」
青子と和葉の声がした。
手術室の前には、知らせを聞いたみんなが集まっていた。
「怪我はどうなん?」
「大丈夫、それより新一は・・・・・・」
皆の顔が暗くなる。
「・・・・・・先生が言うには、重傷で今夜が峠だって・・・・・・」
「わたしのせいだ・・・・・・」
「蘭ちゃん?」
「わたしが新一を追いかけて建物の中に入ったりしなければ・・・・・・」
「それは違うな・・・・・・」
低いテノールの声が響いた。
「・・・・・・新一のお父さん・・・・・・」
いつの間にか、優作が来ていた。
「気に病む事はないよ、蘭君。アイツは任務を実行しただけだ。君を守るという任務をね・・・・・・」
優作はそう言った。
「心配は無用だ。アイツは君を残して逝くような奴じゃないさ・・・・・・それに・・・・・・」
そこで、一旦言葉を切った。
そして、聞き取れるか聞き取れないかと言う程小さな声で、こう言った。
「今回のアクシデントは私たちの責任でもあるからな・・・・・・」
「「え?」」
「すべてはアイツが説明してくれる・・・・・・一人ほど来客があるかも知れないがね・・・・・・」
言うだけ言って、優作は帰っていった。


「・・・・・・なぁ、平次どういう意味だと思う?」
「・・・・・・さあ・・・・・・」



















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