奇術師の予言(42/57)縦書き表示RDF


奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第四十一話 一礼と違和感


どこに・・・・・・どこにいるの?

そんな疑問が頭を駆け巡る

『工藤新一、アイツは生きとったんや』

ドア越しに聞いた声がリフレインする

その声の意味を理解した次の瞬間、体が動いていた

まだ糸は切れていない・・・・・・


角を一つ、また一つと曲がる

その度に彼がそこにいるような気がした

そして、その度に期待は裏切られた

だが、諦めない


もう一つ角を曲がる

すると、そこは大通りだった

またしてもハズレ・・・・・・

車道沿いの歩道に立って辺りを見渡す

「・・・・・・!あれは・・・・・・」





―米花美術館
「予告五分前、配電室異常は無いか?」
『今のところ異常はありません』
「注意を怠るな!暗闇に紛れるのが、奴の常套手段だ!」
「以前の様に光に紛れる可能性もありますが、それに関しては?」
優作が聞いた。
「え?あー・・・・・・そうですね。」
中森警部は収めた無線を再び取り出した。
「C班、異常は無いか?」
『ありません』
「逃走目的ではない装置もか?例えば以前の光に紛れるような物だが」
『それも見当たりません』
「分かった、引き続き警戒を怠るな」
中森警部は無線を切った。
「どうやら、大丈夫のようですね」
優作が言う。
「ええ。とりあえず、これで灯かりが消える事も目が眩む事も無いでしょう」
中森警部が少し誇らしそうに言った。
「しかし、油断は禁物ですよ。何せ相手は怪盗キッドです。下手をすれば『優越』が『憂鬱』になりかねませんからね?」
その優作の言葉に、中森警部は再び苦い表情を作った。


「警部、予告一分前です」
「よーし、全員配置に付け!」
警官達が慌ただしく動く。
「三十秒前・・・・・・二十秒前・・・・・・五、四、三、ニ、一・・・・・・」
パリン!
ガラスが割れる様な音がしたかと思えば、次の瞬間灯かりが消えていた。
それと同時に『ガシャン!』という大きな音もした。
視界が塞がれる。
だが、月明かりのお陰で、一秒程で目が慣れた。
「そ、そんな馬鹿な!」
窓辺にキッドが立っていた。
それだけなら、何も驚かない。
注目すべきはキッドが握っている物だ。
それは、間違ようもなく・・・・・・
「ブルー・サンシャイン!?」
それは、間違いなく寸前までショーケースの中にあった。
その方を見る。
そこには蓋の開けられたショーケースがあるだけだった。
つまり、目が眩んだ一秒の間にショーケースを開け、更に窓辺まで移動したというのか?
だが、今は方法などはどうでもいい。
「待て、キッド!」
中森警部がその方に駆け出す。
すると、キッドは一礼した。
(ん?)
なぜか突然、違和感を覚えた。
だが、そんな事を詳しく考えるひまは無い。
今は目の前の標的に集中すべきだ。
しかし、その刹那、キッドはハンググライダーで飛び立った。





『怪盗キッドは現在北西に向かって飛行中。指示を』
だが、応答が無い。
「警部!」
中森警部はハッとしたようだった。
「こちら中森、全員全力でキッドを追え!」
やっと指示が出る。
それと同時に、美術館の外でサイレンが鳴り、パトカーが一斉に走り出した。
「どうかしたんですか警部?」
中森警部は何やら考えているようだった。「・・・・・・雰囲気が違ったんだ・・・・・・」
「は?」
「さっきのキッドはいつものキッドと雰囲気が違ったんだ・・・・・・お前は何も思わなかったか?」
「ええ、気のせいじゃないんですか?キッドの真似ができる人間が居るとは思えませんし」
「そうか・・・・・・そういえば工藤氏はどこだ?」
「・・・あれ?さっきまでここに居たんですけど・・・・・・」






―とあるビルの屋上
一人の男がスナイパーのスコープで米花美術館の方を見ている。


丁度、白い鳥がエサを捉えたところだ。

その顔を見る。

・・・・・・間違いない、この鳥は自分が追う標的だ

黒い鳥の爪を二度もすり抜けた若くさかしい鳥。

だが、その鳥も今は仮の姿だ・・・・・・





「・・・・・・ゲームセットだ・・・・・・」
男は引き金に指を掛けた。
だが――






「それ以上動くなジン、動いたら撃つぞ」
















ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう