第三話 マジックショー
「この、バ快斗ーーー!どこ行ってたのよ!心配したんだから!」
再び青子の大声が店内に響き渡る。
それに圧倒されて、快斗は小さくなっている。
いや、青子が大きく見えるだけか。
「・・・ったく、うっせなー。言わなかったか?岐阜の有名なマジシャンに会いに行くって。」
「全っっっ然、聞いてないんですけど!」
「あーそーですか。まあ、お前はアホ子だから、聞こえてなくてもしょうがねーけど。」
「なんですって!」
たちまち夫婦漫才が始まった。
(なんか、大阪の二人組みたいだな・・・)
コナンは、毎度のように夫婦漫才を繰り広げる平次と和葉を思い浮かべていた。
といっても、蘭と新一もしょっちゅう小競り合いをしていたのだが・・・
(ほんと新一にそっくりね・・・違うのは、学生服って事と髪型かな?)
けんかするほど仲が良い。
蘭の快斗に対する第一印象も、コナンの青子に対する第一印象も、似たり寄ったりだった。
「・・・まったく、マジシャンに会うために岐阜まで飛んで行って、三日間も音沙汰なしなんてバッカみたい・・・」
「悪かったって、そんなにグズるなよ。」
「この『マジックおたく』・・・」
コナンと快斗が向かい合い、蘭と青子が向かい合う形で座っている。
青子はまだ怒りがおさまらないのか、ぶつぶつ文句を言っている。
「ほら、土産やるから機嫌直せって。」
そう言って快斗は、五百円玉よりひとまわりぐらい大きい、外国の銅貨を三枚取りだした。
「・・・なんで、岐阜のお土産が銅貨なのよ。」
「いいから、両手出せって。」
青子は両手をそろえて差し出した。
「ほら!」
快斗が青子の手に銅貨を落とした途端、三枚の銅貨は直径五センチぐらいのせんべいに変わっていた。
「わぁ!」
まさにマジック。
あれだけ不機嫌だった、青子の機嫌があっという間に元に戻った。
「三枚あるから、青子とボウズと・・・えーっと、名前なんだっけ?」
快斗が蘭に、知らないふりをして聞いた。
「毛利蘭です。『快斗君』でいい?」
「かまわねーぜ。じゃあ俺も『蘭ちゃん』って呼ばせてもらってもいい?」
こうしてお互いの呼称が決まった。
「ねぇ、快斗兄ちゃんって黒羽盗一さんの親戚?」
コナンが快斗に聞いた。
「親戚もなにも、俺の親父だぜ。それにしても、よく知ってるなボウズ。」
コナンの正体を知っている快斗は、わざとらしく言った。
「そうだ!蘭ちゃん達に迷惑掛けたお詫びに、マジック見せてあげたら?」
青子が思い出したように言った。
「迷惑っていったって、お前が勝手に大騒ぎしたんじゃねーか。」
「その大騒ぎの原因はだれよ?」
「・・・しゃねーなぁ・・・」
(名探偵には一回見せたネタだけど・・・今これしか持ってねーんだよな・・・)
そう思いながらテーブルの横に立った。
「レディース アンド ジェントルマン!!!まずはこの風船をご覧あれ!」
そう言うと、風船を一つ取り出し膨らませた。
「さて、お嬢さん。この風船に針を刺すとどうなると思いますか?」
すっかりマジシャンモードになった快斗が蘭に聞いた。
「えっ!そんなの破裂するに決まってるじゃない。」
蘭は驚いて言った。
「大丈夫ですよ。ほら!」
そう言うと快斗は、右手に持った風船に次から次へと針を刺していった。
「・・・それって、風船にセロハンテープを貼ってるんでしょ?」
コナンは下らないという顔をしている。
「さすがだなボウズ。じゃあこれだとどうなると思う?」
そう言って懐からシャープペンシルを取りだした。
「・・・さあ?」
今度は複雑な表情をして言った。
「風船は破裂するんだけど・・・」
パンッ!
風船が破裂し、その場所にトランプが一組現れた。
「・・・マジシャンはいつもこうやってトランプを出すんです。」
そう言ってトランプを揃え、机に広げた。
「・・・・・・」
蘭は驚きのあまり言葉を失っている。
「・・・青子も今のマジック初めて見た・・・」
青子もかなり驚いたようだ。
片や、コナンはなんとも複雑な表情を浮かべている。
「・・・ボウズどうかしたか?」
「なんでもないよ、快斗兄ちゃん。もっと見せてよ。」
「お、おい!」
コナンは快斗の手を引いて、二階に上がっていった。
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