第三十三話 黒い散弾
ベルモットは部屋に入ってくるなり、厚史の机のそばに歩み寄った。
「・・・・・・一旦、敵意はお預けにしましょうCool guy・・・・・・」
強張った顔をしている新一に言った。
そう言って、持っていた銃を放って寄こした。
「・・・・・・取り敢えずはな・・・・・・」
その銃を床に置いた。
取り敢えずの和解が成立し、厚史が口を開いた。
「どこまで話したかな・・・・・・」
「ベルモットが過激派を見張る内偵だという所までです。」
「そうだったな・・・・・・それから・・・・・・」
そう言いかけたとき、志保が口を開いた。
「じゃあ、こういうこと?」
そう尋ねる。
「ジン達が言っていた『あの方』っていうのは架空に近い存在だった。
その言葉を出すことで、自分の独断であるにも関わらず、
あたかも組織のリーダーから指示を受けたように振る舞いみんなを従わせた。
つまりお父さんが直接指示をだしていたわけじゃない・・・・・・」
「そうだ・・・・・・・だが責任は私にある。事情がどうであれ、私は組織の統率者だ。それに変わりはない・・・・・・」
それを聞いて、志保は肩の荷が降りたような安心感を覚えた。
自分の父親が、姉を殺したわけじゃない。
妙な言い逃れもせずに自分で罪を認めている・・・・・・
志保は少しだけ厚史に近づいた。
厚史は続きを話し始めた。
「そこからは、もう組織内は泥沼状態だった。丁度烏丸の残した資金が尽きた頃だった為に資金を入手しようと、奴らはあらゆる犯罪に手を染めた。そして、その資金入手計画の一環が有能なプログラマーやシステムエンジニアとの接触だった。」
「・・・・・・どういうこと?」
志保が聞く。
「あるプログラムを作らせた・・・・・・彼らに接触したのは決して志保が掛けたプロテクトを解くためではなかったのだよ・・・・・・」
「いったい何を作らせたんですか?」
「そのプログラムの名前はあなたの方が聞き覚えがあるはずよCool guy・・・・・・」
ベルモットがそう言った。
「・・・・・・!・・・まさか・・・・・・」
新一もようやく気付いたようだ。
「・・・そう、完全無欠のコンピューターウィルス『闇の男爵』使い方如何によっては大企業相手に大金を騙し取ることができる・・・・・・これもジンの発案だけどね・・・・・・」
この時点で、今まで抱えていた大体の謎は解けてた。
だが・・・・・・
「こちらからもいくつか質問してもいいですか?」
新一が言う。
「どうぞ、工藤君」
厚史は許可した。
「・・・・・・赤井秀一を恐れる理由は何なんですか?いくら『あの方』を騙っていたと言っても、ジン自身が恐れていたのなら、その理由が判明しているはずです。でも実際はそうではない。つまり、あなた自身が彼を恐れており、その恐れているという事だけを何かの拍子にそれをジンに漏らしたと推測できます。その為、ジンはなぜあなたが彼を恐れるのかを知らない・・・・・・」
途端に厚史の顔が曇った。
「・・・・・・それはだな、工藤君・・・・・・・・・・・・・・・」
厚史はその理由を新一に話した。
だが、その真相に息を飲んだのは新一ではなく志保だった・・・・・・
ジンは銃声のした方を向き、銃を構えている一人の男を認識した。
「・・・・・・貴様は、まさか・・・・・・」
「お察しの通り・・・・・・」
その男はそう言うとCIA諜報員の代わりに前に出た。
そして、変装を解く。
「・・・・・・赤井秀一・・・・・・」
黒い大砲の散弾と銀の弾丸・・・・・・
ダイヤモンド・カット・ダイヤモンド・・・・・・
どの言葉を用いても足りないぐらいの威圧感が、そこにはあった。
「フン、銀の弾丸は使い切ったと思っていたが、フェイクだったようだな・・・・・・」
「そいつは違うな・・・・・・我々の銀の弾丸は使用すると、心臓を射抜くまでは地面に落ちない特殊な弾なのさ・・・・・・」
そう言って赤井は銃を放った。
ジンが崩れ落ちる。
弾は両足首を貫通し、見事にアキレス腱を破損させていた。
「・・・・・・それで、まず歩けないだろう・・・・・・まあ、そこで精々捕まるのをまってるんだな・・・・・・」
そう言って、立ち去ろうとした。
「・・・・・・じゃあ、最後に一つだけ教えてくれ・・・・・・」
ジンは蹲ったまま言った。
「なぜ『あの方』はお前を恐れている?」
赤井秀一は立ち止まった。
「・・・・・・その様子だとお前は、俺の大切な人を二人も殺した事に、気付いてないみたいだな・・・・・・」
いつもの冷静さとはほど遠く、その言葉は怒りに満ちていた。
「・・・・・・二人だと!?」
しばしの沈黙
そして・・・・・・
「・・・・・・フン、俺達の目を盗んでアイツとそんなことまでしていやがったのか・・・・・・」
ジンが言った。
まずは自分たちの不備を悔いるかのように・・・・・・
そして半ば蔑むような口調で・・・・・・
「ああ、お前達の『あの方』とやらは、子供を殺された親の怒りを恐れていたのさ・・・・・・」
「・・・・・・明美は俺の子を授かっていたんだ・・・・・・」
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