第三十一話 古傷
「「CIAからデータを盗んだ!?」」
「ああ、その通り。諜報員も驚いただろうな・・・・・・」
厚史は言った。
「つまり、我々は犯罪に手を染めてしまった訳だ。その時からだよ、
記録の保管方法が変わったのは・・・今話している事の殆どは私がトップに立ってから知ったことだが、
それまではコンピューターに保管していた。だが犯罪に関する記録をそこに保存するわけにはいかない・・・・・・
ハッキングを受けたらお終いだ。」
厚史はここで一旦話を切った。
「そこで、記録方法をアナログに切り替えた。つまり手書きだ。」
手書き?
余りにも原始的な方法に、二人は呆気にとられた。
「そして、その紙を倉庫に保管し、部屋に鍵を掛け、見張りを付ける。
相手の盲点を突いた確実な方法だ。
致命傷にならない、薬品に関するデータはこれまで通りコンピューターに保存していたがな・・・・・・」
確かに、そんな原始的な方法を選ぶとは思わないだろう。
そんなことを考えていた新一だったが、ふと、あることに思い当たった。
「すると、CIAのデータもそこに・・・・・・」
「その通り。多分それが最初のアナログデータだろう・・・・・・」
「じゃあ、CIAの目的はひょっとして・・・・・・」
「多分君の考えている通りだ。奪われたデータの奪還・・・・・・」
「なるほど・・・・・・一階から十階をCIAが制圧すると言った理由は、それだったのか・・・・・・」
「名推理だ、初期のデータほど下の階に保管されている・・・・・・」
「こちら本堂、状況は?」
『こちらA班、データが保管されていると思われる三階までは完全に制圧。これよりB班がデータ奪還に取り掛かります』
「了解。」
『そちらに何か変化は?』
「・・・・・・たった今、構成員の一部が五階と十三階に向かいました。その階の援護に掛かるようです。」
『了解・・・・・・FBIにも伝えるようにと・・・上からの指示です』
「了解」
無線の周波数を切り替える。
「こちら水無、応答願います。」
『こちら、ジェイムズ、用件は?』
「構成員の一部が十三階に向かいました。注意するように伝えてください。」
『了解』
無線のスイッチを切った。
その直後・・・・・・
カチャリ
周りが騒がしいにも関わらず、その小さな音だけはやたらと耳に届いた。
頭に銃口が突きつけられる。
「・・・・・・やはり、お前だったかキール・・・・・・CIAの回し者は・・・・・・」
「・・・・・・エレーナが事故にあって六年後、私は組織のトップに立った。」
厚史は再び話し始めた。
「そこで初めて知ったよ、ジンが犯罪に手を染めており、例の細胞研究データが盗まれた物だと。
そこで私はジンを説得しに行った『これ以上罪を重ねるな』と・・・・・・・・・」
その時のことを思い出したのか顔を曇らせた。
「だが、無駄だった・・・・・・いや、むしろ逆効果だった。
ジンは私の意志に反して組織内に犯罪班を作り、これまで以上に罪を犯すようになった。」
「・・・・・・・・・なぜです?」
新一が聞いた。
「ジンはただの組織の構成員。それなりの立場はあったかもしれませんが、
組織のトップ意志に反抗してまでそんなことをするとは思えません・・・・・・」
的を射た質問だった。
いったいどうしてだろうか?
その問いに答えるかのように、厚史はゆっくりと体を動かした。
そして、今まで机の下にあった腕を持ち上げた。
「「!」」
二人は同時に息を飲んだ。
・・・・・・・・・その腕には手首から先が無かった。
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