第三十話 怒りと真実
「・・・・・・お父さん・・・・・・?」
志保は力無く声を発した。
「ああ、その通りだよ、志保・・・・・・」
男の声が響く。
どこかで聞いたような声だ。
掴み所のない記憶を辿って行く・・・
だが、それが明確になることはなかった。
「・・・・・・しかし、あなたは死んだことになっているのでは・・・・・・」
「確かに、表向きはそうなっている・・・・・・」
その男が言った。
「だが、裏では・・・・・・」
「・・・・・・詳細不明、実体は悪に身を染めた、犯罪組織のトップ・・・・・・」
男の声を遮り、志保の声が響いた。
「その組織のやり方は、数々の人間と接触、利用して、最後には口封じに殺すという、極悪非道な物・・・・・・」
死んだはずの父親を目の当たりにし、混乱していた思考が、回復してきたらしい。
志保は、現実を受け止めると同時に怒りが込み上げてきた。
「・・・・・・その方針の下、数々の人間を殺してきた・・・・・・」
「お、おい、宮野・・・・・・」
新一が止めに入るが無駄だった。
「挙げ句の果てには、実の娘である私のお姉ちゃんまで殺した!」
怒りと悲しみに顔を歪めながら、志保は叫んだ。
その声が木霊する。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
返す言葉がないのか、椅子に座っている男は沈黙している。
「何とか言ったらどうなのよ!死んだ振りして犯罪組織のトップになり、殺人を重ね、娘まで殺した!
どうしてそんなことしたのよ!」
ここまでを一続きで叫んだ。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「・・・分かってる・・・全てを話そう・・・・・・・・・長くなるが、聞いてくれるか?」
二人はゆっくりと頷いた。
「・・・・・・六十年前の話しだ。当時、日本の首相だった大黒蓮太郎が秘密裏に進めていた計画があった。
それはある研究所を建てること・・・・・・」
「知っています。」
新一が言った。
「・・・・・・そうか、君の仲間がデータを盗んだんだったな・・・・・・」
「ええ・・・でもなぜか、記録は一九八十年を境に途絶えていましたけど・・・・・・」
それを見たときの落胆振りを思い出す。
「そう、その年を境にこの組織は大きく変わってしまった・・・それまでは普通の研究所だったのに・・・・・・」
「何があったんです?」
「その年に、ジンが組織に入ってきた。そして、私にある研究データを渡した・・・・・・・」
「それはいったい?」
「最新の細胞研究のデータだった。その時私は喜んだよ。これでエレーナの危機を
回避できるかもしれないとね・・・・・・」
「お母さんの危機?」
「ああ、まだ言っていなかったな・・・・・・エレーナはその数年前の事故で大量の放射線を浴びていた・・・・・・
その直後は何ともなかったが安心はできない。
なぜなら放射線を浴びてから数年後に突然、放射線障害の症状が出ることがあるからだ。
広島や長崎の被爆者が、原爆投下から六十年以上経った今でも苦しんでいるのを知っているだろう?」
二人は頷いた。
「その時のためにも私は研究を重ねていたから、ジンがデータを持ってきたことは吉報に思えた・・・・・・
そのデータをどこから持ってきたか知るまでは・・・・・・・・・」
「どういうこと?」
志保が聞いた。
厚史は苦々しげに顔を歪めながらこう言った。
「そのデータはCIAから盗み出した物だった・・・・・・」
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