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奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第二十話 怪盗の休息


(・・・ここは・・・そうか、博士の家か・・・)
快斗は寝かされていたベッドから体を起こした。
「いててっ・・・」
傷口が痛み、そこを手で庇った。
そこでやっと、足下にずっといたその存在に気付いた。
(・・・青子・・・)
ベッドの足下の方に体を預け、青子は眠っていた。
「青子ちゃんに感謝しろよ・・・」
「新一・・・」
快斗が居る部屋に、欠伸を噛み締めながら新一が入ってきた。
「おめーが撃たれたって聞いて、真夜中にも関わらずに飛んできて、夜通し看病してたんだからな・・・」
「あ、ああ・・・」
新一はベッドの横の机に二人分の朝食を置き、その近くの椅子に座った。
「・・・それで、何のつもりなんだよ?」
「ん?」
パンを囓りながらの尋問が始まった。
「『ん?』じゃねーよ!怪盗キッドは引退したんじゃなかったのか、って聞いてんだよ!」
新一の大声が部屋に響いた。
「あっ、バカ、大声出すんじゃねーよ、青子が起きちまう・・・」
しかし、青子は相変わらず安らかな寝息を立てていた。
こういう所も蘭に似ているのだろうか?
「・・・んで?どういうつもりだよ・・・」
答える前に快斗は体の向きを変えて、青子に毛布を掛けてやった。
「・・・お前と平次が言ってただろ?乗り込もうにも本部の場所が分からねぇ、って」
そう言って、パンを大きく頬張った。
それを飲み込み、コーヒーを一口啜ってから後を続けた。
「だからこっちから攻めてやろうと思ったんだよ。怪盗キッドが動けば奴らも動かざるを得ない。それでその時に、
こいつをうまい具合に奴らのポケットに忍び込ませようとしたわけ。」
快斗はハンガーに掛けてある上着から一枚のカードを取りだした。
「・・・ICチップ入りのトランプか・・・抵抗する振りをしながらこれをトランプ銃で撃って、
奴らのポケットに忍ばせようとしたって訳ね・・・」
「そゆこと。」
そう言う間に快斗はトーストを一枚平らげ、「おかわり」と言った。
「食欲は旺盛だな・・・・・・」
空になった快斗の皿を見ながら新一は言った。
「まあ、銃弾を数発受けた程度だからな・・・そう言えばアルセーヌは?」
「アルセーヌ?」
新一が怪訝に聞き返した。
「俺がいつも連れてるハトの名前・・・どこにやった?」
上着のあらゆる所を探しながら快斗が聞いた。
「この子の事かしら?」
哀が部屋に入ってきた。
「すっかり私にも懐いちゃったみたいだけど・・・」
哀の肩に、ちょこんとハトが乗ってる。
「それに『その程度』ってものじゃないわよ。防弾チョッキ越しの腹部に一発、頬をかすめたのが一発、
左肩を抉るように一発、それに右肩を直撃したのが二発・・・
致命傷になり得る部分に銃弾が当たらなかったのが不思議なぐらいよ。」
そう言って快斗に薬を渡した。
「はい、鎮痛剤。毎食後に一錠ずつ飲むこと。それから夕方には包帯を換えるから、
勝手に剥がしたりしたらだめよ・・・そんなところね・・・じゃあお大事に。」
水の入ったコップとハトを置いて地下室に戻っていった。
「・・・なあ、新一、志保ちゃんは薬剤師の免許も、開業医の免許も持ってるってことか?」
「・・・そうらしいな・・・じゃあ、俺もそろそろ行くぜ。」
新一が椅子から立ち上がった。
「おっと、ちょっと、待ってくれ。」
そう言うと快斗は紙とペンを取りだし何かを書き始めた。
「・・・・・・ほら、これをアルセーヌの足に括り付けて飛ばしてくれ。」
紙を丸め、宝石が入った袋と共に差し出した。
「OK・・・じゃあごゆっくり。」
青子の方をちらっと見ながらそう言って、部屋を出ていった。


「・・・・・・あの野郎・・・・・・」
だが、悪態を付く前に青子を隣のベッドに運ばなければならない。
快斗は青子の体を抱えようとした。
「・・・ん・・・快斗?・・・」
青子が目を覚ました。
しばしの間、青子は焦点の合わない目で快斗を見ていたが、昨日の事を思い出した途端ハッとした。
「快斗!・・・大丈夫なの?」
「・・・ああ、大丈夫だぜ青子。」
そう言って、安心させるように青子を抱きしめた。
「・・・もう・・・心配したんだから・・・」
青子は目にうっすら涙を浮かべていた。
「・・・ごめんな・・・それから、ありがとな、一晩中看病してくれて
・・・今はゆっくり休めよ・・・」
「・・・・・・うん・・・・・・」
青子は安心して眠りについた。
その寝顔にを見て、『おかわり』をもらい損ねたことなど、頭から吹っ飛んでいた。














「・・・後で博士の家に来い?」
登校時間帯に、いつものように他の三人から離れ、コナンと哀は話していた。
「そりゃ、最初から快斗の見舞いに行くつもりだったけど、どうかしたのか?」
「・・・報告があるのよ・・・APTXの研究結果についてね・・・」






















さあて、次回はいよいよAPTXの秘密が明かされます。
次回もどうぞお楽しみに!











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