奇術師の予言(20/57)縦書き表示RDF


奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第十九話 脱出王


「・・・・・・えっ、お父さんが?・・・はい・・・分かりました、すぐ行きます。」
ピッ
「おっちゃんがどうしたって?」
夕飯を食べ終わり、テレビを見ていた新一が聞いた。
電話を切った蘭は、あきれた顔をしている。
「お父さんが行きつけの居酒屋で、酔いつぶれて寝ちゃったから迎えに来てくれ、だって・・・」
(ハ、あの親父・・・)
時計を見ると午後九時半である。
上着を羽織って二人で外に出た。



「・・・風が強いわね・・・」
「ああ、そうだな・・・」
強風に煽られ、いろいろな物が路上を転がっている。
落ち葉、空き缶、弁当殻、ビニール袋・・・
やがて、新一の足下に丸めた新聞紙が転がってきた。
「・・・号外?」
新一が拾い上げた新聞を見て蘭が聞いた。
「ああ・・・そういえば昼間に配ってたな・・・」
そう言いながら何気なく新聞紙を広げた。
「・・・・・・・・・・!」
「あっ、ちょっと、新一!」
その一面を見るなり新一は、目の色を変えて元来た道を引き返し始めた。



新一が投げ捨てた新聞が風に舞った。








怪盗キッド突然の予告状!










(・・・このベッドで寝るのは何日ぶりかしら・・・)
哀は天井を眺めながらぼんやり考えていた。
実際には大した日数ではないのだが、異常に懐かしく感じる。
今の自分には大きすぎるベッドも、隣の博士が立てている大きないびきも・・・
(なんだか自分の故郷に帰った気分ね・・・)
以前から思っていた。
今居る博士の家は故郷のようだと。
真の自分の居場所であると・・・




ガチャン



夜の静寂を破るように、二階でガラスが割れる音が響いた。
哀は布団をはねのけ、二階に上がった。
そして、そこに蹲っている白い怪盗を見つけた。
「・・・ハンググライダーの操作を誤りでもしたのかしら、気障な怪盗さ・・・」
白いステージ衣装が赤い血に染まっているのを見た途端、哀は言葉を失った。
「黒羽君!大丈夫!」
哀は叫びながら駆け寄った。
「・・・すまねーな、志保ちゃん・・・退院早々お邪魔して・・・」
そう言って快斗は気を失った。
「博士!手伝って!」




















─午後九時 杯戸宝石展

「奴だ!確保しろ!」
杯戸宝石展の屋内にその声が響き渡る。
標的である白い鳥は獲物を手中にし窓の傍に立った。
「これで終わりだ、怪盗キッド!」
三方が壁に覆われている窓際にキッドを追いつめ、中森銀三が叫んだ。
「残念ですが、そうはいきませんね警部。宝石を盗み出す程の怪盗なら、脱出王ハリー・フーディーニの解説書を盗む事など簡単にできるという事に、いいかげん気づいてもいい頃ですが・・・」
「何が言いたい!」
警官隊がさらに詰め寄った。
「三方が壁に囲まれた窓際・・・四方が鉄格子で囲まれた場所からの脱出より遙かに簡単だと思いませんか?」
「減らず口はたくさんだ!奴を確保しろ!」

バン!

爆発音と共に煙幕が広がり、視界を塞がれた。

「・・・ゲホッ、ゲホッ、奴は・・・」
キッドの姿は消えていた。











「『彼を閉じこめておくにはどんなに厳重な牢獄を用意しても足りない』と謳われた男の脱出マジック・・・それに俺と親父が手を加えたんだから見抜けるわけねーよ・・・」
屋上でそう呟き白い羽を広げた。










(・・・妙だな・・・)
着地を予定していたビルの屋上に近づいた時そう思った。
(いつもなら奴らは先回りして、俺から宝石を奪おうとするはずなのに・・・)
その場所には誰もいなかった。
(期待はずれだったな・・・)
そう思い再びハンググライダーを広げたときだった。
「ぐっ!・・・」
防弾チョッキ越しに銃弾が食い込むのを感じた。
(両隣のビルか・・・)
二つの人影を確認したとき、今度は銃弾が頬をかすめた。
「・・・やけに殺気立ってるじゃねーか・・・」
平静を装い、銃弾を避けつつ、難を逃れるためハンググライダーで飛び立った。






窓ガラスを割り、阿笠邸に乗り込む。
その途端、苦痛の余り床に蹲ってしまった。
哀が寄って来て何か言っている。
しかし、他の場所にも銃弾を受け体力が限界だった。
何と言っているのか良く聞き取れない。
「・・・すまねーな、志保ちゃん・・・退院早々お邪魔して・・・」
とりあえずそれだけ言ったところで、意識が遠ざかるのを感じた・・・












(・・・青子・・・あ、お・・・)












ようやく動きました、黒の組織。
快斗は大丈夫なんでしょうか?
それは次回のお楽しみです。
・・・何か忘れてるような・・・あっ、おっちゃんが寝たままだ!
これが本当の『眠りの小五郎』(笑)

先日は更新が遅れました事を重ねてお詫び申し上げます。
以後このような事がないように気を付けます。

今後も『奇術師の予言』をよろしくお願いします。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう